セイコーのエネルギー監視・制御ソリューション「GreenTALK」の導入効果について、日本発条株式会社 DDS事業本部 駒ヶ根工場 総務課 森本桂一氏、生産技術課 春日昇氏に詳しく聞きました。

日本発条(ニッパツ)について

j_nhkspg_06ばねの世界的メーカー。売上高 4,561億円。従業員数 18,877名(2011年度、連結)。

DDS事業本部 駒ヶ根工場について

ニッパツのDDS事業本部(*)は、ハードディスクドライブ内の重要部品であるサスペンションを製造。直近の世界シェアは40%以上とトップ。そのサスペンションを製造する主力工場が、中央アルプスの麓の長野県駒ヶ根市にある駒ヶ根工場です。

*DDSはDisk Drive Suspension

ニッパツ駒ヶ根工場の敷地内には、「DDS事業本部」「産機事業本部」の2つの事業本部の工場があります。この事例で「駒ヶ根工場」と表記した場合、原則として「DDS事業本部 駒ヶ根工場」を指します。

省エネ改善の効果測定ツールとしてGreenTALKを活用

— 駒ヶ根工場では、現在GreenTALKをどのように活用していますか。

駒ヶ根工場では、GreenTALKを、主に「電力集計システム」および「省エネ改善の効果測定ツール」として活用しています。また、電力会社の「電気予報」と同様に、工場での電力の使用実績、需要予測、逼迫度合いなどをリアルタイムにグラフで確認できるので、デマンド管理にも活用しています。

GreenTALKの現在の使用概況は次のとおりです。

駒ヶ根工場の電力使用状況
項目 内容 備考
工場数/従業員 3棟、648人 第1種エネルギー管理指定工場
電力使用概況
(目安)
- 動力・生産 : 60%
- 空調(含むクリーンルーム) : 30%
- 照明 : 10%
 
GreenTALK活用概況
項目 内容 備考
使用開始時期 2011年6月〜 発注:2011年3月
構築:2011年4月〜5月(1.5カ月)
GreenTALKで分かること 向こう30分間の電力需要予測
過去の電力使用実績の把握
逼迫度の把握
(管理基準に対する使用量の割合)
 
電力計測
ポイント数
約130箇所 電力計は、工場内の変電施設(8箇所)の内部に設置
※ 電力計は、2003年(GreenTALK 導入前)に既に導入済み
電力把握の分類 工場全体
工場別(第一工場、第二工場…)
変電施設別(第一施設、第二施設…)
機能別(空調、エアコンプレッサ…)
 
GreenTALK閲覧者 デマンドグラフ:一般従業員
電力使用実績詳細:管理担当者
 

 

— さまざまな切り口での把握が可能

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— GreenTALKの動作のしくみ

変電所内に設置された電力計に収集された情報を、無線を使って工場内のLAN環境と接続された受信機まで送り、それら情報をGreenTALK内部で集計する。

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かつては月に一度、変電施設を巡回してデータ収集していた

— GreenTALKを導入する前は、電力使用量は、どうやって把握していたのですか。

以前は、毎月一回、担当者が1~2時間かけて変電設備8箇所を巡回して、データを収集していました。「電力メーターを検針している」イメージです。

GreenTALKの導入効果 ~ 省エネ活動の成熟度と難易度は比例する

— GreenTALKの導入効果を教えてください。

j_nhkspg_03GreenTALKを導入したことにより、「月度エネルギー使用実績の分析の迅速化」、「省エネ改善の効果の短時間での確認」などの効果が得られました。更に一般の従業員もデマンドグラフを日頃から確認できる環境を作ることで省エネ意識の向上に繋がると期待しています。

省エネ活動は、その取り組みの度合いにもよりますが、本格的に着手してから数年の間は、世間一般の改善事例を参考にすることにより、「運用改善型」と「設備投資型」の、どちらのタイプでも比較的容易に成果を得ることができます。

例えば、「設備の無駄な稼動を省く」「設定値を下げる」などの運用改善、あるいは「最新の高効率空調機への更新」などの設備投資は、わかりやすく実行しやすい省エネです。こうした施策は「省エネ効果が明白」なので、効果測定は、先に述べた「月に一度の検針」を通じて、月ごとの電力消費量の推移を見るだけでも十分です。

駒ヶ根工場では、CO2削減活動を2008年から本格的に開始しましたが、その際はまず、これら「取り組みやすい省エネ」から着手しました。しかし、省エネ改善では、継続的な実施が必要です。省エネ活動の成熟度が進み、改善のレベルが上がれば、それにともない、改善の「難易度」もまた上がります。「わかりにくい、手がつけにくい項目」の改善を通じて、省エネを積み重ねていく必要が生じます。

難易度の高い改善を遂行するには、ピンポイント測定が必要

— 「難易度の高い省エネ」とは?

j_nhkspg_04省エネ改善を進化させるにつれ、エネルギー使用実績を細かく分析し、無駄をひとつひとつなくしていくことが必要になります。場合によっては、「やってみないとわからない」、「効果がまったくない」こともありえます。いずれにせよ、これら施策が本当に有効かどうかを見極めるには、「試しにやってみる」ほかありません。

実験の成否を知るには、「実験の前後の電力消費量の推移(ビフォー・アフター)」を知る必要があります。しかし、従来の「変電設備を巡回してのデータ集計」という方法では非効率です。

ここで、電力量を細かくリアルタイム把握できるGreenTALKが効果を発揮します。「ある施設の周辺だけ、試しに1時間だけやってみる」という実験を行う場合でも、ピンポント測定を通じて、電力量の推移を速やかに確認することが可能になりました。
※ GreenTALKのグラフには、30分ごとの積算電力量が表示されます。

GreenTALKの導入により、省エネ改善のPDCAサイクルを効率良く回すことが可能となり、駒ヶ根工場省エネ改善の体制は大きく進化しました。

 

— 「従業員の省エネ意識向上」とは?

GreenTALKの電力デマンドグラフは、駒ヶ根工場の従業員なら誰でも見られます。夏場に、クーラーの設定温度を少し下げたいなあと思うときでも、GreenTALKのデマンドグラフを見て電力状況が逼迫しているのがわかれば、今はちょっとガマンした方がよいかなと、自然に従業員の意識も変わります。

電力監視システムを比較した際の要件

— 駒ヶ根工場が、電力監視システムとしてGreenTALKを選択することになった経緯を教えてください。

j_nhkspg_05ニッパツでは2008年に全社的にCO2削減目標を掲げ、駒ヶ根工場でも本格的な省エネ改善に着手しました。当初は、月一度の「検針方式」でも改善活動が成立しましたが、2〜3年が経過するにつれ、十分な成果を上げることが困難になりました。

さらなる改善には、状況をリアルタイムに把握するための「電力の見える化」が必須であるという認識に至り、その後、2010年10月頃から候補製品のリストアップを開始し、結果としてセイコープレシジョンを含む3社の製品を比較検討することになりました。

— 3社の製品を比較検討した際の要件を教えてください。

電力監視システム3製品を比較した際の要件は、次のとおりです。

要件1:すでに設置済みの電力計がそのまま使えること

電力計は、すでに130個を設置済みでした。その電力計を引き続き使いたいと考えたので、電力監視システムには、「現有の電力計が接続可能であること」を必須要件として求めました。

要件2:将来の拡張性が高いこと

今回のシステムは、当面は「電力使用量の分析、把握」という用途に使いますが、将来的には電力に限らず、灯油、ガスなど他のエネルギー、あるいは温度、湿度、エミッションなどの分析、把握にも使途を広げたいと考えています。そのような将来性、拡張性、柔軟性を持った製品を求めました。

要件3:セキュリティーが十分に確保されていること

無線によるLAN接続を行うので、セキュリティーを十分に確保する必要があります。不正接続やウイルスなどに対し充分な防御対策がとられていることを求めました。

要件4:費用対効果が高いこと

以上、要件1〜3を満たした上で、かつ価格がリーズナブルであることを求めました。

以上の基準で3製品を比較した結果、GreenTALKが求める要件を最もよく満たしていたので、採用を決めました。2011年3月のことです。

その後、5月半ばまでの1カ月半の間に、システムの導入、構築を行ってもらいました。構築作業は2011年5月半ばに遅滞なく完了。そして6月より活用を開始。その後、先ほど述べたとおりの導入効果を確認することができました。

参考情報:今回のシステム構築の概要、手順
1.現地調査

駒ヶ根工場を訪問し、「変電施設8カ所の発信器から、別の建屋の受信機へ、無線によるデータ通信が適切に行えるかどうか」などの、現況調査を実施。

2.既存電力計の仕様の把握

設置済みの電力計(130個)の仕様情報を把握。

3.各種設定の打ち合わせ

使いやすさ、見やすさを確保するための設定情報の協議。130個の電力計は、どのようにグループ分けし、各グループにどんな名称をつけるか、グラフの見え方はどうするかなどを打ち合わせ。

4.設定の反映

手順2,3で決まった設定情報を、GreenTALKに反映。

5.現地での構築

駒ヶ根工場現地で、GreenTALKのソフトウエアおよびハードウエアを設置し、動作を検証。

今後の仕様拡張への期待

— 「GreenTALKは、電力監視だけでなく、将来的には、その他のエネルギー状況、工場環境の監視にも活用していきたい」とのお話がありましたが、具体的には?

GreenTALKのシステム構造は「分散配置されている計器から情報を集めて、それを集計・表示するシステム」です。ということは、測定器を取り替えれば、電力に限らず、灯油、ガスなど他のエネルギーや、温度、湿度、エミッションなど幅広く管理することが可能です。
そうして工場全体のエネルギー状況、環境情報をリアルタイム把握できれば、よりきめ細かな制御が可能になり、さらなるコスト削減や環境負荷低減が実現できます。

 

— 最後に一言お願いいたします。

今回、GreenTALKの導入により「電力の見える化」が可能になりました。これによりニッパツ駒ヶ根工場の省エネ活動の基盤は大幅に強化されました。貴社からは、今後、GreenTALKをさらに進化させる計画があるとうかがっており、期待しております。今後ともご支援をお願いします。

 

ありがとうございました。

お客様プロフィール

日本発条株式会社のホームページ
http://www.nhkspg.co.jp/
※ 取材日時 2011年8月
※ 文中の数値、データはいずれも取材時点のものです。