インターネットを介して情報の拡散や商取引ができる時代となるのに伴い、そのデジタルデータが本物であることを証明する方法(デジタルエビデンス)がビジネスの場で求められています。
本コラムでは、2000年の事業立ち上げから長年タイムビジネス事業に関わってきた、セイコーのサイバータイムビジネス責任者の柴田が、タイムスタンプや電子署名、e-文書法対応をはじめ、デジタル情報の真正性証明の最前線を解説いたします。

証拠を共有するための技術・文明の発達

デジタル情報の「本当」をいかに担保するか

インターネットやスマートフォンなどの社会環境の発展に伴い、デジタル情報が簡単に生成され、グローバルに流通される時代になりました。アナログでの情報流通が中心の時代に花形だった400字詰め原稿用紙や、メカ屋の象徴ドラフター、フィルム写真などは、とんと見かけることがなくなりましたね。

アナログからデジタルの時代となり、情報をコピーして一気にグローバルに拡散できるという利便性を手に入れることができました。
しかし一方、これには大変なリスクも伴います。もし、不完全な情報や間違った情報だったり、なりすましによる情報発信や、情報の改変・ねつ造などが行われたら……。そしてそのことが確認・証明できなかったら……。

このコラムでは、情報セキュリティの3要素CIA(Confidential:機密性、Integrity:完全性、Availability:可用性)のうち、特に、「I」の完全性=「本当」をいかに担保するか、についてわかりやすく解説していこうと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

第1回は「証拠」と「記録」について

とある情報が「本当」だということを他人にわかってもらうためには、本当であることを「証明」しなくてはなりません。
辞書によると、「証明」とは、

・ある物事や判断の真偽を、証拠をあげてことがらをあきらかにすること(小学館「デジタル大辞泉」)

と、また「証拠」とは、

・証明の根拠。事実認定のよりどころ。あかし。証左(岩波書店「広辞苑」)
・事実を明らかにする根拠となるもの(小学館「デジタル大辞泉」)
・物事を証明するしるし。あかし。証左(旺文社「旺文社国語辞典」)
・事実であることを明らかにするよりどころとなる事や物。(三省堂「大辞林」)
・ある命題(真偽不明の主張や存否不明の事実)の真偽や存否を判断する根拠となるものをいう。(ウィキペディア)

と記載されています。

証明したい内容=「事象」は、いつ(When)、誰が(Who)、何を(What)、どこで(Where)、何故に(Why)、どうやって(How)の5W1H全てや組み合わせになります。
証明したい・伝えたい「事象」をきちんと残すことが「証拠」といえます。

 

「証拠」を共有するための技術・文明の発達

「事象」を残し、伝えること、これは大昔から人間のコミュニケーションには欠かせないものでした。
というのも、「事象」は、そのとき、その場所にいないと共有できない情報であり、その場にいない人や、後の時代の人に正確に伝えることが難しかったからです。

そのため、いろんな「記す・配る・残す」ための技術・文明が発達してきました。
ロゼッタ・ストーン(BC196年)、木簡(BC100~)、蔡倫の製紙法の発明(105年)、グーテンベルクの活版印刷の発明(1445年)、写真の発明(1825年)、エジソンの蓄音機(1877年)……。
まさに、必要は発明の母であり、ニーズを実現するために多くの物理的な発明が生まれました。

 

「記録」の正確性を担保する『記録管理』

さらに、ただ記録するだけではのちのち不明確になことがあるため、長期にわたって誤解なく記録が残せるようにいろいろな工夫がなされ、『記録管理』という文化が発達してきました。
署名、印鑑、花押、封書、割符、新聞、稟議、契約書……これらは、世間のルールであり、技術のみならず運用と併用される生活習慣=文化ですね。

第1回 証拠と記録の発達01

証拠と記録というキーワードで、面白い実話がありますので、紹介します。

 

ガリレオの証拠の残し方

◆ガリレオ、土星の環を発見!

“SMAISMRMILMEPOETALEUMIBUNENUGTTAUIRAS”

上の英文章は何をあらわしているのでしょうか?これは、アナグラムという文字の並べ替えで別の内容とする暗号文字列です。
解読すると “Altissimum planetam tergeminum observavi”となります。
英文では、"I have observed the most distant planet to have a triple form"です。

1610年6月にガリレオが、土星が3つの星からできているのを望遠鏡で発見しましたが、確証を得ることができませんでした。このとき、トスカーナ大公国首相のベリザリオ・ヴィンタにだけ平文で知らせ、友人やライバルのケプラーに送付した手紙には、このアナグラム文を記載したのです。
自分が新発見をしたことの証拠を残すために、手紙と郵便を活用した、実に巧妙な公証です。
この手紙を受け取ったライバルのケプラーは、まんまと解読することに精を出したそうです。

このように、人間は文明の発達と共に、趣向を凝らして「伝える」、「証明する」方法を進化させてきました。
情報を伝える方法は本当にいろいろありますね。私もこの仕事に携わって十数年ですが、その間にもどんどん進化を遂げています。

次回は、『記録管理』のリスクと、その対応方法について書きたいと思います。
 

※本コラムは、大塚商会様で2016年1月に掲載されたものに加筆・修正し、掲載させていただいています。

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著者プロフィール

柴田 孝一

セイコーソリューションズ株式会社
戦略事業開発部 部長

1982年 電気通信大学通信工学科を卒業し、株式会社第二精工舎(現セイコーインスツル株式会社)に入社。
2000年にタイムビジネス事業(クロノトラスト)を立ち上げ、2013年にはセイコーソリューションズ株式会社の設立と共に移籍。セイコーグループのサイバータイムビジネス責任者として現在に至る。
専門分野は、タイムビジネス(TrustedTime) 論理回路設計・PKI・情報セキュリティ。

■タイムビジネス協議会 (2006年発足時より委員、2011年より企画運営部会長)
■タイムビジネス信頼・安心認定制度 認定基準作成委員
■UTCトレーサビリティJIS原案作成委員会(JISX5094)委員
■総務省WRC15宇宙分科会構成員
■『概説e-文書法 / タイムビジネス推進協議会編著』(NTT出版)共著
■『帳簿保存・スキャナ保存』完全ガイド(税務研究会出版)監修

講習実績

  • 「もらった領収書をスマホ撮影!?規制緩和の内容や最新動向をご紹介します」
    2年連続で規制緩和となった電子帳簿保存法のスキャナー保存について、要件を満たした運用手順や、実際の電子化手法などを中心に紹介
    https://www.seiko-cybertime.jp/solution/document/
  • ITU/BIPM WorkShop“Future of International Time Scale“(2013年9月)
  • TSP Compliance Info-Day(2015年12月)