第12回 INTER BEE IP PAVILION レポート
『INTER BEE IP PAVILION』でのIPライブ伝送デモをレポート
前回のコラムでは2018年11月に千葉・幕張メッセで開催された展示会「Inter BEE 2018」でのセイコーソリューションズブースのPTPデモ環境と構築の様子をご紹介しました。
第12回は、筆者が企画立案から携わりましたイベント「INTER BEE IP PAVILION」についてご紹介します。このイベントは、2018年11月14日~16日に千葉・幕張メッセで開催された「Inter BEE 2018」の特別企画として、次世代のライブ映像制作と配信を実現するIPライブ伝送のIP実機接続デモ、IP関連製品を解説する展示、各社のリレーセミナーの実施という、盛りだくさんな内容でした。
特に、IPライブ伝送のIP実機接続デモは、Inter BEEで初めての試みということで、4つのテーマが設定され、各コーナーでデモンストレーションが行われました。
IPライブ伝送のIP実機接続デモ「4テーマ」
- SMPTE ST2110インターオペラビリティ
- SMPTE ST2022-6インターオペラビリティ
- ARIB STD B73インターオペラビリティ
- 画質比較(JPEG-XS・TICO・LLVC・J2K)
今回は、当社が参加した「SMPTE ST2110インターオペラビリティ」のデモについて、ご紹介します。
デモ構成
本デモンストレーションは、主に以下のポリシーに沿って構成されています。
- 映像・音声のやり取りは、ALL IP(SMPTE ST 2110, AES67)で伝送する
- できる限り、装置間の同期を、IP(SMPTE ST 2059-2 PTP)で行う
- IPシステムにおける運用監視技術(AMWA NMOS)も積極的に見せる
映像・音声のやり取りをALL IP(SMPTE ST 2110, AES67)で伝送
一つ目のポリシーである映像・音声のやり取りをALL IPで伝送する手法は、SMPTEで標準化されたVideo over IP技術(ST 2110)をサポートするカメラなどの映像系の装置、AESで標準化されたAudio over IP技術(AES67)をサポートするインカムシステムなどの音声系の装置、その中継装置として、100 Gigabit Ethernetインタフェースまでサポートするネットワーク装置を採用し、各社ブースとIP PAVILIONブースを接続した構成で実現しました。
(最上段のネットワーク装置からEVS社装置までが、本デモンストレーションの装置)
(上から2台目と3台目がTS-2950-20)
できる限り装置間の同期をIP(SMPTE ST 2059-2 PTP)で行う
二つ目のポリシーの装置間の同期も、PTPサポート装置において、正常にPTP同期した状態でシステム構築されました。
当社は、SMPTE ST 2110で構築するIPライブ伝送システムに不可欠な、PTPグランドマスタークロック(以下、PTP GM)を実際の運用形態を想定し冗長構成で構築しました。PTPプロトコル(STMPTE ST 2059-2)には、ベストマスタークロックアルゴリズム(以降、BMCA)という冗長機能が標準化されており、このデモ環境においてもBMCA機能を有効にしてデモンストレーションを行いました。
PTP GMの時刻源は、NAB ShowやIBCのIP Showcaseと同様に、グローバルナビゲーションサテライトシステム(以降、GNSS)を想定した環境とするため、当社から市販のGNSSシミュレーターを持ち込み、TS-2950の時刻源としました。(念のため、Black Burst信号(以降、BB)を位相源にできるモデル TS-2950-20を持ち込みました)
また、SMPTE ST 2022-6デモなど隣接した3テーマの装置の同期源として、BB信号を入力する必要がありましたが、TS-2950のBB出力用オプションボードのリリースタイミングがマッチせず、今回はPTP GMに特化した利用としていただきました。
(参考:PTPグランドマスタークロックTS-2950にBlack Burst信号出力機能を追加)
IPシステムにおける運用監視技術(AMWA NMOS)も積極的にアピール
三つ目のポリシーであるIPシステムにおける運用監視技術(AMWA NMOS)についても、準備時間が限られた中、IS-04の動態展示まで行われていました。(IS-05は参加社のブースで動態展示)
所感
今回のイベントは、企画段階から参加させていただいたこともあり、会期中のほとんどの時間、IP PAVILIONブースでアテンドをしていました。Inter BEEで初めての企画ということもあり、どれくらいの方にIP PAVILIONブースにお立ち寄りいただけるのか未知数でしたが、会期初日でその懸念は杞憂に終わったと感じました。なぜなら、日本全国の多数の放送局の方にお越しいただき、今とこれからのIP技術について様々なお話をさせていただくことができたからです。そして、多くの方々が、次世代のライブ映像制作と配信を実現するIPライブ技術に興味をお持ちであることを肌で感じることができました。
今回のイベントの成功は、ご協力いただいた皆さまのご支援があってのことと、心より感謝申し上げます。
※今回のコラムは、Inter BEE運営事務局/一般社団法人 日本エレクトロニクスショー協会の協力の元、掲載しております。
次回は、IPリモートプロダクション技術検証会のレポートをお送りします
さて、次回は、「IPリモートプロダクション技術検証会の参加レポート」についてご紹介します。また、本コラムではPTPにかかわらず映像分野におけるIPでの同期技術や、セイコーソリューションズの取り組みについてご紹介予定ですので、ご期待ください。
著者プロフィール
長谷川 幹人
セイコーソリューションズ株式会社
製品企画部門で、マーケティング・プロジェクトマネージメントを担当
■経歴
2002年 入社
2002年~ 2011年6月までプリセールスSEを主に担当
2011年~ 製品企画部門へ異動
近年は、Ethernet OAM/TWAMPなどを利用したネットワーク状態監視製品やNTP/PTPなどの時刻同期関連製品などの製品企画に従事。現在に至る。
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4K、8K時代のメディアトランスポート方式として国際標準化されたのが、IPをベースにした伝送技術「MMT」です。MMTでの同期において不可欠な高精度な時刻ソリューションをセイコーソリューションズのタイムサーバーが提供いたします。
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