慶應義塾大学病院は31の診療科、約950の病床数を有し、先進医療を提供する特定機能病院です。1日の平均外来患者さん数は約3000人、入院患者さん数は約800人を数えます。
今回は時計の設置を取りまとめいただいた管財課のほか、実際にNTPクロックを設置した医事統括室、医用工学室、スタッフステーションおよび腫瘍・免疫統括医療センターの担当者にそれぞれお話をお聞きしました。

  • 医療行為を行う現場では時刻情報の統一が必須だが院内には基準時刻の参照ができない場所が多く、部門ごとに臨機応変な対応を強いられていた
  • 院内の各所に視認性に優れた自動補正時計を導入することで、医療機器の時刻合わせや患者さんへの投薬処置などの業務負荷が軽減され、病院の機能評価を行う外部審査にも円滑に対応

1.【導入背景】高品質な医療の提供には正確な時刻情報が欠かせません。

- 病院内で時刻を参照するシーンを教えてください。

病院では外来に訪れた方たちが待ち時間の確認を行うだけでなく、医療現場でも絶えず正確な時刻が求められています。例えば、入院患者さんが使用するベッドサイドモニター等の医療機器は正確な記録を保つためにメンテナンス時に時刻補正を行う必要があります。各病棟に設置されているスタッフステーションでは看護師をはじめとするスタッフが就業時間やミーティングの開始時など、業務中に時計を確認します。さらに、手術や検査、投薬などあらゆる医療現場でも患者さんへの処置やその記録に正確な時計が必要とされています。

2.【経緯】院内の絶対時刻である電子カルテと同じ時刻を表示するNTPクロックを現場のヒアリングをもとに各所に設置しました。

— 今回のNTPクロックはどのような場所に設置されたのでしょうか。

病院では電子カルテの時刻を絶対時刻として運営を行っていますが、院内には時刻系が自動的に統一されない箇所があります。電波時計は電波が入らない場所では時刻がずれてしまい、同じ室内に設置している時計でも異なる時刻を表示することがあります。また、医療機器も端末ごとに時計を内蔵しており定期的な補正が必要です。電子カルテと同じ時刻を示す自動補正機能のあるNTPクロックは医療現場における業務負荷を軽減すると考え、病院事務局、看護部で患者さんの利便性と医療の質の向上を目指し、設置計画を立てました。第一段階として外来、共用エリアのほか病棟にも合計180台を設置しています。(病院事務局)

3.【各部門の声】電子カルテと同期した正確な時刻を、施設内のどの部屋でも高い視認性で確認できるようになりました

医学部開設100年を記念して建設された新病院棟(1号館)受付に設置されたNTPクロック

— 医事統括室にNTPクロックを導入した感想をお聞かせください。

1階総合案内は玄関の正面に位置し、患者さんの目に触れやすい場所にもかかわらず時計の設置がなく、時刻を気にされる患者さんはわざわざ総合案内に時刻を聞きに来ていましたが、NTPクロックを設置したことで、それまで数多くあった時刻の問い合わせが解消されました。
また、入院が必要な患者さんには現在新型コロナウイルスPCR検査を受けていただく必要があり、その臨時検査場にも簡単に設置できるNTPクロックを置くことにより、効率的に検査を実施できるようになりました。
(医事統括室 課長 荒川和美氏)

— スタッフステーションにNTPクロックを導入した感想をお聞かせください。

院内の病棟ごとに設置されているスタッフステーションにNTPクロックが1台ずつ導入されました。ここには患者さん生体情報モニターが設置されており入院患者さんの様子を確認できるようになっています。またスタッフステーションは看護師がベッドサイド以外での記録などの業務を行うほか、医師や他の専門職スタッフも集まり連携して入院患者さんのケアを行っています。
スタッフステーションは常に稼働しており、毎日のミーティングや記録を通して効率的にかつ正確できめ細やかな医療を提供するために見やすい時計は非常に大切です。
(看護部 河原賢治氏、磯崎光子氏)

— 腫瘍・免疫統括医療センターにNTPクロックを導入した感想をお聞かせください。

腫瘍・免疫統括医療センターは、通院による抗がん剤などの点滴治療等を実施する場所で、毎日約100人の外来患者さんが来室し、治療ブースがほぼ埋まります。投薬時間の管理には正確な時刻が必要なのですが、治療エリアに設置している複数の電波時計がずれ、時によっては10分程度の差が生じていることもありました。電子カルテでも時刻を確認できますが、投薬中の患者さんを巡回する際には見やすさの点から壁掛けの時計が重宝します。さらにここでは、多い日には10件近い治験も行われます。治験によっては、規定時間から5分以内の猶予の中での投与が必要な場合もあり、より正確な時刻管理が求められます。複数のNTPクロックが設置され、どこでも正確な時刻が分かるようになり業務が以前より円滑に行えるようになりました。(看護部 北村悦子氏)

— 今回の導入について病院情報システム部の感想をお聞かせください。

病院ではもともと、看護師が使用する電子カルテ端末のためにWi-Fi環境を整備していたのですが、患者さん向けにも一部を提供するなど、急増する需要に応える形で増強を進めていました。今回はそのWi-Fi環境が院内に整った段階でNTPクロックの設置ができ、タイミングとしても良かったです。キッティング済の時計を納品してもらう際にMACアドレスのリストをいただきWi-Fiの設定も速やかに行うことができました。NTPクロックは電子カルテと同じタイムサーバーから時刻情報を受信する設計となっています。(そのタイムサーバーも今回、冗長化することができました。)電子カルテとNTPクロックの時刻が一致していることで、患者様にも病院スタッフにも、安心感を持ってもらえると思います。
(病院情報システム部 事務員(主務) 佐野卓哉氏)

医用工学室でNTPクロックを参照しながら医療機器をメンテナンスする様子

— 今後の予定についてはどのようにお考えでしょうか。

視認性に優れてどこでも正確な時刻を確認でき、補正の必要がない時計が思っていた以上に日常の業務の負担を軽減してくれることを実感しました。また、当院は日本医療機能評価機構による外部審査を受けていますが、現場調査時に各所で時刻系について確認されるため、安全で安心な医療を提供するための施策としてNTPクロックを導入していると説明できることには非常に安心感があります。第一段階として、納入いただいた200台のうち20台は予備機として交換や要望に応じた追加設置に対応できるようにしているほか、今後も前回と同様の規模でNTPクロックを納品いただき、診察室や各検査室などにも設置を進める予定です。

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お客様プロフィール

慶應義塾大学病院
URL https://www.hosp.keio.ac.jp/

※ 取材日:2022年12月