戸田建設株式会社は、ロードバランサーをセイコープレシジョンのSX-3640 LBHにリプレースされました。その理由と効果について、情報システム部長 海保幸正氏(写真中央)、同部 経理・人事・総務システムチーム チームリーダー 戸円顕和氏(写真左)、同チーム 主管 大島修氏(写真右)に詳しくお聞きしました。

戸田建設について

— 戸田建設の業態を教えてください。

j_toda_01戸田建設は1881年に創業したゼネコンです。技術開発に熱心に取り組み、施工中の騒音を低減したり、工期を短縮したりする技術を開発してきました。また、CO2 排出量の削減や自然エネルギーの活用など、環境問題にも積極的に取り組んでいます。連結売上高4527億円、従業員数4110人(ともに2011年3月31日現在)です。

1000カ所からのアクセスの負荷分散のためにロードバランサーを利用

— ロードバランサーをどのようにお使いですか。

j_toda_02経理系の伝票入力システムのサーバ負荷を分散し、障害発生を回避するために使っています。

伝票入力システムとは、取引先から来た請求書を処理するための伝票作成のシステムです。伝票入力システムは、本社や各支店の約500の部門や約900ある建設現場の作業所で、合計約2000ユーザが利用しています。ひと月に7〜8万枚の伝票発行の要求があり、その多くが月初から中旬にかけてのものです。

伝票入力システムが止まると取引先への支払が止まります。それは建設現場の動きが止まることを意味し、100年以上かけて培ってきた信用を台なしにしてしまうことになります。そのため、2003年に構築して以来、止まることがないよう細心の注意を払ってきました。ロードバランサーの導入もその一環です。2003年当時は、最大手の米国A社のロードバランサーを導入しました。

— A社製品を導入したのは、どのような理由でしたか。

伝票入力システムは、国内I社製のWebアプリケーションプラットフォームを利用して構築していたため、安定性を重視し、そのプラットフォームとの相性問題が発生しない製品を選びたいと考えていました。A社製品はI社との相性保証があったので、A社製品を導入することにしました。

A社製品は当時から高機能でしたが、戸田建設がロードバランサーに期待していたのは、負荷分散とサーバの稼働状況を把握することだけでしたので、最下位グレードで十分でした。戸田建設としては、シンプルな機能のものでよかったのですが、当時はロードバランサーがあまり市場に出回っておらず、選択の余地はほとんどなかったのが実情です。

A社製品からSX-3640 LBHに乗り換えた理由

— SX-3640 LBHを導入したのはいつ頃ですか。

伝票入力システムに使っていたサーバに、物理的な問題が原因で障害が発生するようになり、またロードバランサーの保守期間も近々切れるため、それを機にハードウェア類一式をリプレースすることにしました。2011年2月にSX-3640 LBHを2台導入し、冗長化しました。

— なぜ、A社製品から乗り換えたのですか。何かトラブルなどあったのですか。

特に運用に支障を来すような不具合はありませんでしたが、リプレースに際しては、安定性を高めるため冗長化したいと考えていました。A社製品は導入時・保守時ともにコストがかかり、2台分となると予算の範囲を超えてしまっていました。

コスト圧縮は、全社的な要請で、特にITコストは目に見えないため、リプレースにあたっては、見える化して削減するようにと指示を受けていました。そこで冗長化と低コストを両立させるため、導入・運用についてもコストが抑えられる製品の導入を検討しました。

— 安定性を求めるなら、若干コスト高になっても、安定稼働していた従来の製品の方がよかったのではないですか。

安定性には2つの意味があります。1つはロードバランサーの安定性。もう1つはシステムの安定性です。A社製品は安定していましたが、1台構成だったため、システムの安定性という意味では不安が残りました。高機能で高価なロードバランサー1台よりも、シンプルで安価なロードバランサーが2台あった方が、システムの安定性は増します。用途からするとシンプルな製品で十分でしたので、シンプルで安価なロードバランサーで冗長化し、システムの安定性を高めることを目指しました。

ロードバランサーの安定性に関係してくるプラットフォームとの相性については、サポートがしっかりしている会社の製品を選ぶことでカバーできるだろうと考えました。
そこで、まずはカタログベースで合計7社の製品を比較検討しました。

導入の4つの要件

— どのような条件で比較検討されましたか。

j_toda_03以下の4つの条件を満たすことが必要でした。

  1. A社製ロードバランサーと同等の機能を有すること
    これまでと同等の負荷分散性能、およびヘルスチェック機能を有することを要件としました。リプレース前のロードバランサーではデータベースサーバをチェックし、障害が発生したときは、データベースサーバにアクセスできないようにしていました。
  2. サポートがよいこと
    プラットフォームとの相性問題も気にかかっていましたので、設定の分からないことをすぐ電話で解決したり、障害発生時にも迅速に訪問してもらえることを条件としました。

    A社製品を使っていた頃、テストサーバを撤去後、エラー表示がでるようになりました。表示の消し方が分からなかったので、問い合わせましたが回答に時間がかかり、結局リプレースするまで放置していました。運用に支障はなかったのですが、このようなことは避けたいと考えていました。

  3. 信頼のおける製品であること
    会社の信用に関わるシステムに使うので、安定して動く、信頼性の高い製品であることは必須でした。導入実績も重視しました。
  4. コストがリーズナブルであること
    予算の範囲内で2台導入でき、なおかつ運用コストも下げられる、導入・運用コストがリーズナブルな製品を選びたいと考えていました。

これらの条件で比較検討した結果、最終的にセイコープレシジョンのSX-3640 LBHを2台導入することにしました。

導入効果 〜冗長化で安定性が増し、保守費用は約1/10に

— 導入効果について教えてください。 

j_toda_04予算内で2台導入でき、安定性は高まりました。冗長構成にすることで、万が一、障害が発生しても余裕を持って対応できるようになり、情報システム部門としても、安心感が増しました。
冗長化することで、保守内容もオンサイトにする必要がなくなり、保守費用は以前に比べ年間で約1/10になりました。

— SX-3640 LBHを導入して相性問題などは発生しませんでしたか。

プラットフォームとの相性含め、相性問題は発生していません。負荷チェックを含めたテストを綿密に行いましたが、何の問題もありませんでした。現在、トラブルもなく順調に稼働しています。

SX-3640 LBHへの評価

— SX-3640 LBHへの評価について教えてください。

ロードバランサーとしての機能が基本的なものに絞られており、リーズナブルな価格である点が評価できます。高機能な製品は細かく設定できますが、設定が難しく、結局は使いこなせません。実際に使う機能は限られているので、シンプルな製品がお薦めです。

また、SX-3640 LBHは管理画面がHTML形式で使いやすく、日本語なので分かりやすい点がいいですね。使いやすさという意味ではピカイチだと思います。海外製品だと英語表示の上、コマンドラインのため、設定を変える場合でも自分たちでは対応できませんでした。

A社の場合は、販売代理店へ問い合わせを行い、その代理店から実際に対応できる別の会社へ問い合わせて回答を得るため、対応までに時間がかかりました。その点、セイコープレシジョンはすぐに回答をもらえ、フットワークよく対応してもらえます。

セイコープレシジョンのロードバランサーはA社に比べると知名度も低いようですが、精密機械を扱うセイコーグループの製品だけあって、安定しており、優れていると思います。

今後の期待

— 今後の期待について教えてください。

情報システム部門以外の人にとってはロードバランサーは、よく分からない存在です。そのため、なぜロードバランサーにコストをかけるのか説明が難しいところがあります。その意味で、セイコープレシジョンには、今後もうまくコストバランスをとってもらえることを期待しています。

今後は、戸田建設内でもクラウド化・仮想化が進んでいくと予想できます。セイコープレシジョンにはそれらに対応したよい製品を提供してもらいたいですね。今後ともよろしくお願いいたします。

お客様プロフィール

戸田建設株式会社
http://www.toda.co.jp/

※ 取材日時 2011年7月