山口赤十字病院は日本赤十字社山口支部病院として発足し、改称を経て2020年に創立100周年を迎えました。現在、広範な急性期医療を提供する基幹病院として、救急医療を含む年間1万件以上のケースに対応するほか、地域周産期母子医療センターや小児救急医療拠点病院として周産期医療・小児医療や緩和ケアを含めたがん診療に力を入れています。2022年10月には新しい北病棟での診療を開始し、地域社会における重要な医療機関として、その使命を果たし続けています。

  • 設備の老朽化に伴い毎日の時刻補正が大きな負担に。電子カルテと院内の時計の時刻のずれを指摘する声が現場からもあがり、設備として見直す必要性が高まった。
  • NTPクロックの採用により電子カルテとの時刻同期が実現。院内のほぼ全域で利用可能なWi-Fi環境を活かし、現場で常に正確な時刻情報を共有することで、より安心で質の高い医療を提供できるように。

1.【導入背景】毎日の時刻補正が大きな負担となっていました

- NTPで同期する時計を導入した背景をお聞かせください。

もともと導入していた設備時計ではアナログテレビ回線で受信できるFMラジオの時刻情報を使って中央監視室の親時計の時刻を補正し院内に配信していたのですが、地デジ化に伴いFMの電波を受信する環境を新たに用意する必要が生じました。当院の中央監視室は地下にあり電波が入りにくかったためFMアンテナを外に設置したのですが、それでも電波状況によって補正ができないこともありました。また設備時計の設置から20年以上経ち、頻繁に時刻ズレが発生するようになりました。最終的には1日に数分ずれるようになり、毎朝10~20分かけて時刻補正を行うため地味ながらも大きな課題となっていました。

2.【経緯】電子カルテの時刻と同期する時計の導入検討をはじめました

— セイコーのNTPクロックを検討されたきっかけについてお聞かせください。

親時計の補正が毎日必要な状況となっていたため、設備時計のメンテナンスを検討しましたが時計の交換部品がないほか、設備全体の更新費が非常に高額になることが分かりました。また院内の絶対時刻である電子カルテの時刻とのずれについても医療現場から指摘の声がありました。このような課題について管財課から相談があった際に、電子カルテと同様に時刻情報をNTPから取得する時計があるのではないかと医療情報課では直感的に思い、早速調査したところセイコーソリューションズのNTPクロックの存在を知りました。

3.【決め手】導入の容易性や費用対効果の面でもNTPクロックに軍配があがりました

— 無線LANタイプのNTPクロックの導入を決定した経緯をお聞かせください。

まさに求めていた製品だと思い、管財課に費用面や設置環境など具体的な導入に向けて検討をしてもらいました。ほとんどの場所では一般的な電波時計を設置すればよいと思っていましたが、病院の構造やその機能および性質上、電波が入らない場所が存在することも分かっていました。電波時計にエミュレータを組み合わせることも検討しましたが、院内各所に配備することを考慮するとNTPクロックの方が費用対効果が高い試算結果がでました。また手術室の時刻は電子カルテと同期する必要もあったので、NTPクロックの導入を最終的に決定しました。Wi-Fiを利用して時刻同期ができることも導入の決定を後押ししました。

手術室に設置されたNTPクロック

— 無線LANタイプのNTPクロックが優れていた点をお聞かせください。

総務省がWi-Fiは医療機器に悪影響を与えないと発信しており、当院ではWi-Fi環境の整備については全国的にも早い時期から積極的に取り組んでいたため、脳波室など電波シールドが必要なエリアを除き、院内ほぼ全域でWi-Fiが使用できます。この環境を利用し、院内の必要な場所ならどこでも時計を設置することができる点が非常に優れていると感じました。また時計の設置場所には電源がないケースも多いので電池式であることも当院のニーズにマッチしていました。病院では無菌室等、周囲の汚染から室内を守る必要のあるエリアは陽圧に、逆に空気感染する可能性のある細菌が外部に流出しないようにする室内を陰圧にできる環境が必要で、建物内の気圧の管理が非常に重要です。そのため室内の壁に穴をあける回線工事はできるだけ回避することが望ましく、初期設定をすれば壁に掛けるだけでよい点は助かりました。

4.【効果】手術室などの現場からも視認性や正確性を評価する声があがっています

— どのような場所に設置されていますか。

13台を手術室、分娩室、NICUに設置しています。実際に設置した後に現場にヒアリングを行ったところ、かなり好評でした。例えば手術室だと誰もがPCのディスプレイを見て電子カルテの時刻を確認できるわけではありません。医師が手術中に見ている壁の時計と看護師が記録を行っている電子カルテの時刻がずれていると処置を行った時刻や患者の急変時などの記録に矛盾が生じる可能性があります。NTPクロックを導入したことでカルテへの入力時に記録される時刻や医師から看護師にオーダー(口頭指示)を出した際に参照する時計の時刻系が統一されるため、記録に齟齬が出なくなりました。同じ時刻情報をその場の全員で共有できることが安心と高品質な医療の提供につながっていることを実感しています。

5.【今後の期待】高精度な時刻を維持できているため、新病棟含めさらなる導入の検討していきたい

左から山口赤十字病院 事務部 医療情報課長 末永利一郎氏、 管財課 西村竜夫氏

— 今後の期待をお聞かせください。

電子カルテは公的な文書であり、証跡を適切に残すことが義務付けられています。NTPクロックを導入することで電子カルテの時刻情報と壁に設置された時計を同期することができるようになり非常に満足しています。院内には電波時計も設置されていますが、電子カルテやNTPクロックと同様に日本の標準時に同期しており、院内全体で高い時刻精度が維持できるようになっています。今回導入した場所以外にもNTPクロックの設置を求める部門があるほか、新たに完成した北病棟でも去年10月より診療を開始しているので同様のニーズがないかヒアリングを行った上でさらなる導入を検討していきたいと考えています。その台数規模については現時点ではまだ予測ができませんが、前回導入時には隙間時間をみつけながら1台ずつ初期設定を行うのに1週間程度かかったので一度に複数台の設定ができるしくみがあればありがたいと思います。

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※ 取材日:2023年10月