[第5号]
インターネットに関連する様々なセキュリティーニュースとコラムを、定期的(ほぼ週刊)にお届けします。
今週は、セキュリティー関連事件の記事はお休みして、仮想通貨 ビットコイン(以降、Bitcoinと表記)の続きをお送りしたいと思います。実際には、Bitcoinを調べれば調べるほどいろいろな疑問が出てきて、自問自答を繰り返してしまいました。
1)Bitcoinは、この先どのように展開していくのだろうか?
前号において、Bitcoinがどのようなものであるかを解説しました。今回は、私が感じた疑問点について調べた結果と将来予想を、QA形式で記述したいと思います。
① 本当にメインとなる管理者はいないのか?
―> 理論的には、管理者は必要ない仕組みになっています。実際には、誰も管理していないのではなく、Bitcoin 利用者すべてが
コンピュータを使って管理者として参加する合議制(相互監視)の仕組みなのです。
② メイン管理者がいなくて、口座番号はどのようにして決まるのか?重複のないことが保証されているのか?
―> 口座番号の重複がないことは保証されていません。Bitcoinでは、ランダムに生成する77桁の秘密鍵から生成する128桁の
公開鍵が、口座番号の役目をします。ランダムに作成した77桁の数字に重複する可能性を考える必要がないという考え方です
(すべて10進数換算の桁数。実際は、桁数を少なくするためにアルファベットを加えた58進数で表現しています)。
③ 信用できるのか?
―> すべて利用者の自己責任です。保証する仕組みも組織もありません。Bitcoinのまま持っているのが不安であれば、毎回
交換所で両替をするしかありません。
④ 利用されている規模はどのくらいなのか?
―> それそれの取引所が公表している数字はありますが、全体としてはわかりません。現在までに採掘された総ビットコイン数は、
約1300万ですから、10月5日の相場は、1BTCが235 USドルなので、現時点の総Bitcoinの価値は、約3600億円となります。
⑤ 偽Bitcoinは作れるのか?
―> 前号でも触れたように、Bitcoinという貨幣が定義されているわけではありません。Bitcoinとは、あくまで取引の決済システムで
利用する単位です。インターネット上には、金貨のようなBitcoinの画像が表示されていますが、このような形で流通している
わけではありません。具体的なBitcoin硬貨を作ることもできなければ、自分の口座にBitcoinを勝手に増やす操作をしても、
履歴とつじつまが合わなくなり、拒否されます。
⑥ 取引が増えて取引履歴の量が膨大になっても大丈夫なのか?
―> 正規の形で取引履歴を取り込むと、現在数十ギガバイトのサイズになっています。減ることはありませんので、ディスクとネット
ワークへの圧迫は避けられません。一応、簡易的な履歴形式もサポートしています(それでも数十メガバイトです)。今のままで
は、データ量は減ることはありませんので、コンピューターパワーのある取引所、交換所の存在は欠かせません。
⑦ オープンソースだと誰でもまねができるのでは?
―> 2013年に、Mona という単位を使用する日本初のMonacoinという仮想通貨が生まれています。今や世界中では、数百もの仮想
通貨が生まれているといわれています。この仮想通貨は、初期の採掘処理がもっともcoinを稼げる仕組みになっているので、
新たなものを作っておいしい汁を吸おうという輩が生まれています。
⑧ 採掘量に上限があり、採掘(認証処理)で稼げるBitcoinが減ってくれば、誰も採掘処理をやりたがらなくなるのでは?。
―> 現時点でも、かなりのCPUパワーを持っている組織でないと、採掘ができなくなっています。そうするとBitcoinの相場が高騰
しないと、コンピュータを稼働させた電気代も出ないということになってしまう可能性もありえます。
⑨ 1BTCの価値はどうなっているのか?
―> 10月5日現在1BTC、約235ドルです。2013年11月には1200ドルを超える時期もあり、各国のBitcoin対応のニュースがあると
大きく変動しています。
⑩ P2P(1対1)で取引をしているのに、なぜMt.GOXが破たんして、BTCが失われたのか?
―> 基本的な手順では、BTCは自分の口座に保存(記録)されます。交換所が介在した場合に、取引ごとに交換所の口座から自分
の口座に移す際の手数料を惜しんで、交換所を銀行のように考えて預けたままにしていたため、Mt.GOXの管理者に引き出され
てしまったのです。
⑪ Bitcoinは、将来どうなっていくのか?
―> あくまで私の予想になりますが、仮想通貨としての暗号技術に重大な欠陥が見つからない前提で、1つの決済手段として生き
残り、かつ、株式や金などと同様に、リスクヘッジ手段の1つとしては生き続けるのではないでしょうか。
⑫ 秘密鍵をなくすとどうなるの。
―> ここが、仮想通貨としてのデジタル通貨の最大の問題点です。口座作成も利用者が自由にできる(一人で何個作ってもかまわ
ない)ので、口座の情報がディスク障害などで消えてしまった場合、復活する手段はありません。金融機関のように身分証明書
や印鑑を使って、復活することはできません。
2)その他
アメリカ政府が行っていた諜報活動行為を暴露したことで有名なエドワード・スノーデン氏が、ツイッターを開始したとニュースに流れました。まだ重大な内容はつぶやいていない様ですが、フォロワーが1日もたたないうちに100万人に達したと報道されています。また、自らフォローしたのは、暴露をしたNSA(アメリカ国家安全保障局)のみで、そこで最初につぶやいた言葉が、‘Can you hear me now?’(聞こえてる?)は非常に思わせぶりです。 しばらく、目を離せませんね。