障害管理のプロが語る―AIレビューによるシステム運用の最前線とは Seiko Futureworksで暗黙知を組織のナレッジに変える

生成AIの活用が広がる一方、一問一答的な回答では重要な判断や背景は抜け落ちやすいという課題がある。既存の生成AIツールは業務効率化の効果こそ認められているものの、企業独自の知見を再現性のある判断基準へ落とし込める範囲は限定的だ。組織の競争力を高めるためには、FAQ対応にとどまらず専門的なレビューや知見継承まで担えるかどうかが問われている。
Seiko FutureworksはAIナレッジプラットフォームとして、社内に散在する高度なナレッジを抽出・構造化し、組織が活用できる形に整備することで、こうした課題の解決を後押ししている。
具体的な機能は主に2つあり、要件定義書や製品資料などのドキュメントを複数の専門家AIがレビューし、壁打ちや修正方法の回答がもらえる「AIレビュー」と、ベテランの暗黙知を形式知化する「AIインタビュアー」が搭載されている。
専門家AIにインプットするための高度な知見は、AIインタビュアーが社内のベテランへ継続的に質問を実施し構築する。重要な論点を積み重ね、単発のヒアリングではなく、知見を確立するための継続的なインタビューを続けることで暗黙知を形式知に転換する仕組みだ。
セイコーソリューションズのグループ会社である株式会社アイ・アイ・エムは、Seiko Futureworksを活用し顧客の社内ナレッジ継承や技術支援の高度化を進めている。
今回は、現場と伴走しながらシステム運用・障害管理の最前線に立つ技術者2名に、多くの顧客が抱える課題に対してSeiko Futureworksがどのように貢献し得るのかを聞いた。
住友 邦男(株式会社アイ・アイ・エム シニアフェロー/CTO・AIビジネス統括部 統括部長)
大手銀行・商社・SIerにてメインフレーム/オープン系/セキュリティのSEを歴任後、1996年株式会社アイ・アイ・エムへ入社。IT運用の効率化とシステム障害の撲滅をテーマに、業界横断で障害分析支援や予防保全体制の構築を推進。現在はAIビジネス統括部長としてデジタル・AIの社会実装を推進している。
熊本 真子(株式会社アイ・アイ・エム /AIビジネス統括部)
約20年間にわたり企業向けコンピュータの性能評価に従事。ITベンダーや大手ユーザ企業でIT運用のコンサルティングを経てAIによる業務変革の支援を行っている。
モデレーター:半田 達哉(セイコーソリューションズ株式会社/AI事業統括部)
新規事業領域での経験を経て、現在はAIナレッジプラットフォーム「Seiko Futureworks」を中心とした営業を担当し提案活動を展開している。
株式会社アイ・アイ・エムご紹介:1988年設立以来、ITシステムの性能管理に特化した独自のノウハウを蓄積し、パフォーマンス管理やキャパシティ管理を通じて企業のIT運用高度化を支えてきた。NISTフレームワークに基づくセキュリティ対策や、AI型予兆管理ソリューション「LUiNa」による障害の早期発見と判断の迅速化なども提供している。
1. 変化が迫られるIT運用現場とAI活用の現在点
半田「今回の取り組み背景についてまず伺いますが、実際に現場で、暗黙知が残らないという危機感はあるのでしょうか」
熊本「IT担当者の不足が進む中で、システム環境はさらに複雑化しています。少人数で運用を維持するには、経験者が持つ専門的なナレッジを共有し、属人化を解消することが欠かせません。しかし実際には、ベンダーに依存するケースが多く、自社にノウハウが蓄積されにくいという課題があります。Seiko Futureworksの活用で、この課題が解決されるのではないかと考えています」
住友「一般的な生成AIでも回答はしてくれますが、そのままだと理解しづらく、肝心な課題が見えにくいことがあります。めったに起きない事象に関する知識は、経験者の頭の中には残っていてもドキュメント化されません。有識者の知見を反映したAI人格ならマニュアルにない行間の部分も埋めた答えを返してくれます」
熊本「現場では、常に有識者が近くにいるわけではありません。AI人格なら何かあったときに壁打ちができ、スピード感を持って応えられます。レポートが蓄積されればナレッジとなり、将来的な障害予防にもつながります。単なる作業支援ではなく、判断の背景を組織に残すことも可能です」
住友「人の知識は経験しないと忘れていきます。暗黙知の観点が求められる作業は、該当する事象が起きないと検索もできない。Seiko Futureworksは知見を整理して格納できる点に可能性を感じています」

2. 暗黙知をナレッジ化する新たなアプローチ
住友「Seiko Futureworksは知識ベース型AIとして体系化された専門家の知識を活用し、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公開しているITストラテジストシラバスの知見を持つAI人格をデフォルトで搭載しつつ、不足部分は暗黙知で補いながら回答を導きます。AIインタビュアーは、CIT(クリティカルインシデントテクニック)に基づき過去の成功・失敗の経験に焦点を当てたインタビューを行い、感情面まで含めて引き出すことで、経験を単純なFAQではない深いナレッジとして整理します。感情的に高ぶったタイミングに着目することで、暗黙知を引き出すことができるのだと思います。15分程度のインタビューで得た内容を知識ベース化しレビューに反映できるため、実際のレビュアーの第一関門として活用可能だと考えています」
※CIT(クリティカルインシデントテクニック):重要な事象を時系列別に整理し、行動や判断に基づき収集する手法

1回15分程度。15分/30分/60分から選択できる

インタビュー結果がまとめられている

トピックスを選んで深掘りする流れを繰り返して得た深い知見がAI人格の情報元になる
熊本「SEのノウハウ差に対してすぐ指摘してくれるAIがあれば心強い!と、お客さまの期待感は強いです。Seiko Futureworks で住友さんがAIインタビュアーを用いて質問すると、分析ノウハウだけでなく、教育の視点や判断の勘所に結びつけて深掘りができるのには驚きます。教育ツールの一環としても活用できるのではないかと思います」

「システム性能分析のインタビューでも、お客さまとパートナーとの連携の観点で深掘りできる。お客さまからも“ここだけでも売ってほしい”という反応があるくらいです」
3. レビュー業務の実践事例
半田「具体的にどのような場面で利用しているか伺ってよろしいですか」
住友「システム障害報告書のレビュー業務です。先ほどのインタビューを反映した知識ベースを用いて、AI人格がレビューをするところから開始しました」

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4. AIレビューでベテランのノウハウを若手が継承しやすく
半田「人に聞かれるのとAIに聞かれるのでは、やはり違いはあるものですか」

住友「AIは感情がないため、回答する側が構えずに済む点が大きいです。予防的な提案は顧客から反発されやすいですが、月次評価などでSeiko Futureworksが客観的に指摘すれば受け入れられやすい。直接聞きづらいことも、AIを介することでスムーズな運用につながります」
住友「お客さまの現場では、AIだから聞きやすいという声があります。若手は上位者にレビューを依頼する際に心理的負担を感じやすいですが、AIレビューが相手であれば納得するまで質問できます」
障害報告書のレビューのように、FAQでは表現できない暗黙知を判断プロセスとして整理し、段階的に深掘りする過程は必要不可欠である。有識者のナレッジを反映したAIの支援により、若手が1人で対応しながら成長する機会が生まれ、生産性向上のみでは終わらず組織全体の持続的な成長を支える存在となりつつある。

