調達DXコラム− 経営に貢献する調達に向けて −


コラム第10回
サプライヤーとのパートナーシップ構築戦略
近年の環境変化を受け、企業とサプライヤーとの関係は、単なる調達条件の交渉を行い、買い手が一方的に相手を評価する関係から一転し、価値共創を目指したビジネスパートナーシップが求められている。
このような背景には、新型コロナウイルスや地政学リスクなど外部環境の激変がある。こうした状況の中、優良なサプライヤーは世界中で取り合いとなっている。安定した供給網を確立するためには、サプライヤーとの相互理解と関係の深化が欠かせない。こういった調達戦略検討に利用するのがSRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)である。
SRMは、自社のビジネス戦略に合わせてサプライヤーを評価・管理し、パフォーマンスやイノベーションを向上させるための体系的手法であり、サプライヤーとの関係を構築・管理し、その価値を最大化するアプローチを指す。
SRMは、関係性の相互認識の理解、戦略的方向性、維持・向上のためのプレイブックの3つのStepに分かれている。

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Step1では、まず下図左側の「サプライヤーセグメンテーション」を用い、各サプライヤーの位置づけを把握するべく、「価値の共創」「取引の安定化」「利益の追求」「取引の効率化」の4象限に分類する。例えば「価値の共創」に分類されるサプライヤーは、高付加価値を持ち、事業上不可欠の位置づけである。
次に下図右側の「クライアントセグメンテーション」にて、サプライヤー側から見た自社の立ち位置を評価する。これは、「最重要」「関係構築」「利益の源」「厄介者」の4象限に分類される。例えば「最重要」のカテゴリに自社が入った際は、サプライヤーにとって不可欠なパートナーとされ、優先的に扱われる可能性が高い。

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次に、各軸に点数を振り分け、それぞれの象限の重要度・注目度合いを定量化する。

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この点数を買い手と売り手の認識を軸に置き換えた表に落とし込むと、双方のGapの有無が明確となる。互いに高得点のエリアは価値の共創エリア、買い手の“片思い”のエリアは要対応エリアと整理できる。

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Step2では、相互認識を変える短期的な施策を立案・実行する。価値の共創エリアにおいては、関係の維持・深化のための施策、要対応サプライヤーエリアでは、ギャップの解消に向けた施策を行う。
Step3では、中長期的な戦略を検討し、関係性の維持・向上を目指す。戦略の成功には、長期的視野の確保、コミットメントの文書化、社内外のステークホルダーとの協力、継続的なマネジメントサイクルの実施が欠かせない。
最後にSRMの成功には、経営層のサポートも不可欠である。
経営層は調達部門が情報基盤を整えるための環境を整え、組織の位置づけを改善することで、真のサプライヤーリレーションシップマネジメントが実現可能である。
尚、フレームワークや施策の詳細については紙面の関係で割愛させていただいた。興味を持たれた方はPwCコンサルティングの調達高度化チーム執筆の書籍『経営のための「調達」見落とされてきた活用戦略』(中央経済社刊)を参照いただければ幸いである。
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