調達DXコラム− 経営に貢献する調達に向けて −

コラム第二回

経営者が知っておくべき調達の機能と陥りがちな状況

1. 複雑化する調達への要求、経営から見えない成果

調達の現場は、経営貢献の重要な基地であるにもかかわらず影が薄い。それは、仮に価値ある仕事をしていても、その成果が見えていないからである。
一般的に経営から調達への期待は、①コストの適正化、②安定調達、③業務効率化、そして ④調達ガバナンス強化 に集約される。しかしながら、こうした調達機能の成果、言い換えれば経営へのインパクトは、意外と見えていないというのが多くの企業の現状である。そもそも、調達の成果を正しく認識できていないということが、経営による調達課題改善に向けた意思決定を不全なものにし、それが結果として、調達の経営貢献を限定的にしてしまうのである。
もし経営が、調達に対し漠然とした不満を持ち、調達の現場にメスを入れるのならば、何よりもまず、現状の活動とその成果、ならびに期待とのギャップを、正しく可視化することが前提となる。

2. 調達と購買。両者の違いは?より付加価値が高いのはどちらか

調達と購買は、かつては同義語であったが、昨今は、明確に違う意味で用いられている。前者は、「どこから、いくらで、どう有利に買うか」を熟考するプロセスを指し、後者は、「決められた通りに、発注、受入れ、代金を支払う」ことを指している。しかしながら、日本では両者の区別は今でも曖昧なままであり、これが改革の論点をぼやかす原因となっている。なので、まずはここで、調達と購買は、前工程(=企業価値を創造する付加価値業務)と後工程(=定型オペレーション業務)の関係であり、両者は前後関係にあるものの、機能的にも、意義的にも、別物であることを押さえたい。
そのうえで、実際の調達活動の現場を見てみると、やはり多くの企業で、後工程に多くのリソースを割いている。しかしながら、本来経営が調達に期待すべきは、前工程のほうである。もし、調達活動に不全が生じている企業があれば、後工程への偏向を疑い、前工程へのリソースシフト(=パワーシフト)を検討するべきであろう。その結果見えてくる論点は、このシフトを前提とした、調達活動(=Sourcing)の高度化と、購買活動(=Purchasing)の効率化ということになる。

(図表1)調達購買機能のリソース配分の考えかた
調達購買機能のリソース配分の考えかた

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(図表1)調達購買機能のリソース配分の考えかた

調達
活動

ソーシング

  • 調達戦略
  • 見積
  • 価格交渉

パーチェシング

  • 発注
  • 支払

管理活動

  • モニタリング
調達購買機能のリソース配分の考えかた

高付加価値化

パーチェシング施策に劣後
調達改革の本丸であるべきだが、絵に描いた餅に…

最優先

効率化

多くの企業で取組み中
効果を出すまでに時間を要し、改革疲れも…

3. 集中・集約化だけが正解でない

基本的に、中央の組織が全社横断的に調達活動を統制することは、調達活動による経営貢献をコントロールする上で有効である。だからと言って、一連のプロセスのすべてを一か所に集中・集約化することは、必ずしも正解ではなく、また現実的でない。基本的に、調達における三大機能は、ソーシング、パーチェシング、モニタリングである。それぞれを、企業のどの部門が担うのかは、調達する物品やサービスはもちろんのこと、企業規模や組織体系、組織間の力関係を含む企業文化などにより異なる。よって、調達機能を再編するには、それらを検証しながら、慎重に設計していく必要がある。とはいえ、理想形について極論するならば、自社の調達ポリシーや実行ルールなどの管理・けん制を掌握できる体制とそれを支える仕組みが、中央に構築できていれば、各種機能が分散していてもかまわない。むしろ分散させたほうが、コスト面およびデリバリー面で有効な場合もある。

4. 顧客接点と同様に重要なサプライヤ接点

多くの会社の営業部門では、キーとなる顧客との取引をいかに拡大するかの戦略を定期的に練る。それを支援する基本概念がCRM(Customer Relationship Management)であり、そのDB上に特定の顧客との接点と取引状況がしっかりと管理されている。一方、調達先、つまりサプライヤを取り巻く各種情報が蓄積され、調達戦略そのものを支援する概念が、SRM(Supplier Relationship Management)である。
例えば、自社の基幹システムを見直す際、ベンダー選定は、技術的なケーパビリティだけでなく、その企業の社会信用度や成長可能性などについても正しく評価する必要がある。ここで問題のあるサプライヤと長期取引することになれば、のちに計画が行き詰まり、無駄な投資が発生するだけでなく、自社存続の危機にもつながりかねない。つまり、取引の事前事後に、サプライヤとの関係性やそれを取り巻く状況を正確に把握できていないと、経営を脅かすような致命的な事態につながることもある。一般的に、SRMは調達組織主導で進めることが多いかもしれない。だが、このSRMこそ、経営主導で進めるべきであって、CRMと同等に、企業内で一元管理され、経営、事業、調達で共有活用されるべき経営資源と言えるのである。

(図表2)SRMの位置づけ
SRMの位置づけ

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(図表2)SRMの位置づけ
SRMの位置づけ

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