調達DXコラム− 経営に貢献する調達に向けて −

コラム第三回

経営アジェンダとしての「調達の高度化」

これまでのコラムにより、調達は重要な機能を担っていて、うまく活用すれば大きな可能性があることをお分かりいただけたと思う。しかしながら、調達を戦略的に活用するためには、陥りがちな罠も随所に存在していて、「調達の高度化」は一筋縄ではうまくいかないのも事実である。

このため、「調達の高度化」を経営レベルのアジェンダとして位置づけ、取り組むべきと考える。理由は以下の二つである。

  • 「調達の高度化」によりコスト、利益、売上成長など大きなインパクトが期待できる。
  • 調達の力を十分に活用するためには部門を跨ぐ組織的な構造改革が必要となる。
    例えば、調達による事業の統制を高めるなど、トップダウンでの意思決定も求められる。

経営が調達と事業をリードしながら、「調達の高度化」を推進していく建付けが望ましい。さて、「調達の高度化」を経営レベルのアジェンダに位置付けたとして、何からどのように始めればよいのだろうか。3つの段階がある。

① 全体像を捉える
外部からの調達コストの総額とその内訳を構造的に捉えることが第一歩である。必要なデータは企業内の経理や購買システムのどこかに存在しているはずだが、構造的に整理され、分析可能な状況かどうかは、確認が必要だろう。
② 調達のパフォーマンスを把握する
調達コストを部門、品目、サプライヤーなどに分解したうえで、現行の調達活動の量と質、結果としてのパフォーマンスを把握する。この点については、部分的にパフォーマンスを把握できている企業は多いが、網羅的に把握している企業となると極めて限定的ではないだろうか。
③ ボトルネックを把握し、改善目標を設定する
調達のパフォーマンスを網羅的に把握できれば、どこにボトルネックがあるのか特定可能となる。そして、ボトルネックの改善目標が定まれば、全体としての期待効果も試算可能となる。

この3つの段階を、後ろ盾となる経営との密なコミュニケーションを取りながら進める必要がある。そのためのツールとして有効な「調達ROI」、「調達ヒートマップ」を紹介する。

調達ROIとは

図-1を参照いただきたい。調達ROIは調達に対する投下費用に対してリターンとしてのコスト削減額の比率を示したものである。経営に対して調達の貢献を示すための分かりやすい指標である。また、調達ROIの分母・分子は8つのドライバーに分解できるので、調達ROIを高めるためにはどのドライバーに対してどのように働きかければよいのか、具体的なアクションにつなげることが可能である。

図-1 調達ROIとは
調達のパフォーマンス指標。ドライバーへ分解することでボトルネックを特定可能
調達ROIの定義と調達ROIを構成するドライバー。

(クリックで拡大)

調達ヒートマップとは

図-2を参照いただきたい。調達ROIの分子を部門別に分解したものである。部門別、ドライバー別にパフォーマンスを色分けしている。赤色の部分がパフォーマンス向上のためのボトルネックである。パフォーマンス向上のために取り組むべき対象が視覚的に見える化されるのである。そして、ボトルネックとなるドライバーに改善目標を設定することにより、調達ROIがどの程度向上するのか、試算もできる。

図-2 調達ヒートマップとは
部門別や品目別の調達ROIをドライバーレベルで分解して、横比較することで、
取り組むべき取り組むべきボトルネックが明確になる
ドライバーに分解しパフォーマンス向上のボトルネックを特定。

(クリックで拡大)

まとめ

「調達の高度化」はインパクトが大きい反面、実現のために乗り越えるべき壁も相応に高い。このため、経営レベルのアジェンダと位置付けて、経営を巻き込むことが必須である。そして、経営の関心を継続的に維持し、改革を推進していくためには分かりやすいモノサシが求められる。「調達ROI」や「調達ヒートマップ」は、問題の所在、取るべきアクション、想定効果などを直感的に提示することができるため、経営とのコミュニケーションのためのツールとして有効である。 尚、調達ROIの8つのドライバーや調達ヒートマップの活用方法の詳細については紙面の関係で割愛させていただいた。興味を持たれた方はPwCコンサルティングの調達高度化チームが執筆した書籍『経営のための「調達」見落とされてきた活用戦略』(中央経済社刊)を参照いただければ幸いである。

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