調達DXコラム− 経営に貢献する調達に向けて −


コラム第四回
改革の両輪 - 調達業務の高度化と購買業務の効率化
これまでのコラムの中で触れたとおり、調達改革は購買業務の効率化と調達業務の高度化の両輪を回すことによって推進されるのだが、特に調達の高度化は経営に大きな戦略的付加価値を与えるものであり、経営アジェンダとして取り組む意義は大きい。一方、調達改革に取り組まれている企業は多いものの、大きな果実を手に入れた企業は少ないように見受けられるのはなぜだろうか。
1. 調達改革を進めるために必要な要素
調達改革に取り組んだものの、効率化だけに留まり、高度化にまでたどり着けずに息切れしてしまう企業は少なくない。これは効率化と高度化の特徴の違いによるところが大きい。まず、効率化は、いま目の前にある業務を対象とした取り組みで、フィギュアスケートで例えると「規定演技」に当たる。一方、高度化は、いま目に見えていない業務を通じて価値を創出する取り組みであり、「自由演技」が求められる。つまり、何をすべきかを見定めることができないとうまくいかないのである。そこで、包括的な枠組みを拠り所として、なすべき業務を洗い出すことが必要となる。
上に示す3層の調達改革フレームワークのうち、業務のレイヤーに着目頂きたい。ここでは、6つの調達購買業務を挙げている。これらの業務には2つの要素が含まれる。1つは「必ずしも必須ではないが、取り組めば大きな付加価値が期待できるもの」つまり高度化に寄与する業務で、フレームワークの①から④がこれに該当する。もう1つは「日常業務として必須だが、付加価値創出を目的としていないもの」つまり効率化に寄与する業務で、フレームワークの⑤と⑥がこれに該当する。多くの企業の場合、「日常業務」に忙殺されて「付加価値業務」に取り組めていない。調達による付加価値創出のためには、「付加価値業務」を通じた外部流出コスト削減や、安定調達などを見据えた取引の見直しなどに取り組むことが有効である。
2. 効果を出しきれない主な要因と対策
調達改革において改善に取り組むべき対象業務が明らかになったが、それだけで調達高度化を上手く進めることができるわけではない。調達改革の歩みを妨げる陥りがちな罠として主に5点が挙げられる。
陥りがちな罠
- 1
- 組みし易い効率化、見えない高度化
- 2
- 高度化業務に関する理解と知見の欠如
- 3
- 不透明な成果
- 4
- 限定的な活動範囲と社内連携
- 5
- 高付加価値を創出するスキルの欠如
個々の要因と対策についての説明は紙面の都合上割愛するが、例えば上に示す5つの「陥りがちな罠」のうち「2.高度化業務に関する理解と知見の欠如」について触れると、調達高度化にむけては、思い付きで施策を乱発しては、効果創出を見込めない。調達高度化の取り組みに関する包括的な枠組みを活用しつつ、改革の目的や状況に応じて、カテゴリー戦略やストラテジックソーシング、サプライヤーマネジメントなど、手を打つべき施策を網羅的に洗い出し、効果の見極めと取り組みの優先順位付けを行った上で具体的なアクションプランへ落とし込んでいくことが必要である。
本コラムでは、調達改革の構成要素を概観したうえで、効率化や高度化を目指す際の留意点や陥りがちな罠について説明した。紙面の都合で6つの調達購買業務の内容や要点、5つの陥りがちな罠の要因や対策については触れることができなかったが、興味を持たれた方はPwCコンサルティングの調達高度化チームが執筆した書籍『経営のための「調達」~見落とされてきた活用戦略』(中央経済社刊)を参照いただければ幸いである。
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