調達DXコラム− 経営に貢献する調達に向けて −


コラム第六回
高度化に向けたスキル継承
これまでのコラムでは、調達業務・組織の高度化についてご紹介した。最適な業務・組織を設計したうえで、その中身を埋めるのはヒトであり、スキル強化は、経営にとって必須アジェンダと言える。一方、多くの日本企業では、ベテラン人材の定年時期が10数年後に差し迫っており、貴重なスキルが失われる危機に直面している。
本コラムでは、まずは足元のスキル喪失の危機の乗り越え方を解説し、そのうえで、高度化に向けた論点を紹介する。
日本の調達現場が抱える世代交代問題
日本では、「団塊ジュニア世代」と呼ばれる世代が、2025年に51歳から54歳を迎える。つまり、企業の管理職として重要なポジションを担う層が、今後10数年内に定年を迎えることを意味する。
調達部門においても、ベテラン人材が主戦力として組織を支えている企業は多い。一方、調達業務は属人化しやすく、スキルが若手へと継承されていないケースがしばしば見受けられる。

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スキル継承の進め方
スキル継承は、以下の4ステップで進める。各ステップの実行上のポイントと併せてご紹介する。
① ベテラン人材の現状スキルの棚卸し
ベテラン人材の頭の中に眠る非構造情報を、効率良く漏れなく引き出すこと。
② 将来的に必要となるスキルの定義
現状を単に維持するのではなく、未来志向で、事業戦略上求められるスキルを定義すること。
③ スキルの型化
スキルを「アイデア・情報」「テンプレート」「手順」の3つの要素に分解して、それらを三位一体で体系化すること。
④ システム化による定着化
システム実装により、①~③で整理したものを確実に遂行できる環境を整え、組織内に定着させること。

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なお、いきなり全ての調達業務・拠点を対象とすると、対象範囲が広すぎて最後のステップまで辿り着かないことも起こり得る。特に重要度の高い業務領域・組織から、まずはトライアル的に取組みを始めることも有効であろう。
高度化に向けた論点
ここまで、日本企業が目下直面しているスキル喪失の問題をどのように乗り切るかについて見てきた。まずは現有スキルを継承することで、マイナスの状態をゼロにすることを目指したうえで、高度化に向けた論点として2つ紹介したい。
(1)中長期的な事業展開を見据えたリソースプランニング
中長期のマーケット変化・自社事業展開を見据えて、重要となるエリア・拠点に適切な人材を配置することが重要である。中期事業戦略をもとに、将来的に各エリア・拠点で調達実行する品目カテゴリ、実施業務内容・業務量を整理し、求められる人材の量・質を算定する。そのうえで、各個人のスキル管理に基づいて、全体最適視点でリソース配置を検討することがポイントである。
(2)優秀な人材の獲得・維持
現有スキルを継承したうえで、更にその先を目指すには、優秀な人材を引きつけ、未来を担う調達リーダーを育成することが必須である。そのためには、①必要な人材のスキル要件を明確にしたうえで採用・配置し、②OJT・Off-JTの双方で育成し、③結果に対して適切に評価・報酬を与え、④各個人のスキルを適切に管理すること、を検討いただきたい。
まとめ
多くの日本企業において、ベテラン人材の引退は10数年後に差し迫ってきており、今から取り掛からなければ、ベテラン人材が長年積み上げてきた貴重なスキルが半永久的に失われることになり、事業に大きなダメージを与えかねない。
どれほど入念に戦略を練り、未来に向けて業務を設計し、組織の枠組みを整え、最新のシステムを導入しようとも、それを実行するのは「ヒト」であり、「人材・スキル強化」は企業経営において最重要課題と言える。
迫りくるスキル継承問題への対応を検討しておられる企業トップ・リーダー・担当者の方々にとって、本コラムで紹介した内容が少しでもお役に立てば幸いである。
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