調達DXコラム− 経営に貢献する調達に向けて −


コラム第八回
グローバルデジタル調達実態調査に見る日本企業の課題
調達部門が取り扱うべきテーマは従来のコスト削減や安定調達の実現のみならず、サプライヤーのリスク管理やサステナブル調達など多様化している。それに伴い、経営層から調達部門への期待値は年々拡大していると言える。
一方でリソースには限りがあるため、複数のテーマに取り組みながら最大限の成果を出すためには、デジタルツールを効率的に活用することが不可欠である。しかし、デジタルツールを上手く活用できている日本企業ははたしてどれだけあるだろうか?
PwCではグローバルでデジタル調達の実態を定期的に調査している。調査対象者は多様な地域の調達プロフェッショナルとしており、2024年発表の第5版では世界58カ国1,000人以上を対象に調査した。
なかでも「デジタル調達ソリューション導入の重要な成功要因」に関する回答(図)では、グローバル企業と日本企業、それぞれが考えるデジタル調達改革の成功要因から、4つの日本企業に特徴的な傾向が見えてきた。
- ①経営層の関与が薄く現場任せになっている
- ②チェンジマネジメントを軽視している
- ③ツールドリブンで導入の目的を見失う
- ④オペレーティングモデルの最適化への意識が低い

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出典:PwC グローバルデジタル調達実態調査 第5版(2024年実施)結果
➀経営層の関与が薄く現場任せになっている
デジタル調達改革を現場が推進することは問題ないが、経営層の関与が薄くなっていないだろうか。改革を円滑に進めていくには、当然だがリソースもお金もかかる。経営へのインパクトを見据えて、経営層はリソースを配分すべきである。本質的にはデジタル調達改革はツールの導入だけではなく、組織や業務の構造改革の側面も持ち合わせている。必要に応じて組織の権限配置や役割分担案に対し、経営層も意思を持って、判断していくことが必要であろう。
②チェンジマネジメントを軽視している
改革には必ず抵抗が伴うものである。改革を成功に導くためにはそのような抵抗勢力を味方につけることが不可欠である。現場層のみでチェンジマネジメントを推進した場合、抵抗に対してはどうしても“お願い”ベースになってしまい、完全に協力してもらえる状態を実現することは困難である。全員を味方につけ、チェンジマネジメントを効果的に実行するためには、経営層のお墨付きをもらっているということを、改革を推進するメンバーに大義名分として与えることが重要である。
③ツールドリブンで導入の目的を見失う
ツールを導入することそのものが目的化してしまい、達成しようとしていた目的を見失っていないだろうか。ツール導入をベンダーへ過度に依存してしまい、自分事として自分たちの頭で考えることを怠っていないだろうか。ベンダーの提案通りにカスタマイズなどを加えてしまうと、ツールが悪い意味で大規模化してしまい、使いこなせないだけではなく、ランニングコストも膨らんでしまうことが考えられる。ベンチマークとして他社事例を参考にするのも良いが、あくまでツールを使うのは自分たちということを忘れずに、主体的に取り組んでいくべきである。
④オペレーティングモデルの最適化への意識が低い
デジタルツールを導入できれば改革は成功、という意識を持っていないだろうか。改革はツールだけではなくオペレーティングモデルの全体を最適化することが必要であるため、組織構造や権限も見直す必要がある。部分最適ではなく全体最適で考えていくことが重要である。
まとめ
デジタルツールを活用した調達改革で確実に効果を出すためには、日本企業に上記のような特徴があることを自覚して、戒めていく必要があるだろう。デジタル調達改革により達成したい目標を見定めて、腰を据えて改革に取り組み、積極的に経営層が関与することが求められる。さらには、全体最適の観点での組織再設計や、全社の意識改革にも乗り出し、小手先だけではない改革を進めていくことが成功の鍵ではないだろうか。
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