石川県を本拠とする北國銀行では、ファームバンキングシステムのオープンシステムへの移行を、セイコープレシジョンに委託した。その経緯とセイコープレシジョンの仕事品質への評価についてシステム部 清水尚志氏に詳しく聞いた。

北國銀行について

— 北國銀行について教えてください。

j_hokkokubank_01北國銀行は、石川県金沢市を拠点とする銀行です。店舗数は石川県を中心に123店。総資産は三兆一千億円。S&P基準の格付けはA-(※1)。自己資本比率も、地方銀行上位クラスの13.72%(2009年度9月期単体)です(※2)。2007年には、地方銀行で初めて、ATMの手数料を完全無料化するなど、お客様本位の経営に努めています。

※1:いずれも2009年12月現在のデータです。
※2:自己資本比率は、海外に営業拠点を持たない銀行の場合、国内基準で4%以上を維持することが求められます。

今回、依頼したプロジェクトの内容

— 北國銀行が今回、セイコープレシジョンに委託したプロジェクトの内容についてお聞かせください。

北國銀行では、2009年に、ファームバンキング・システムを、従来の汎用機ベースから、オープンシステムへと全面移行しました。セイコープレシジョンには、そのプロジェクトを全てお任せしました。プロジェクトの詳細は次のとおりです。

項目 内容 備考
システム名 Z-HUBシステム -
システム用途 北國銀行の顧客5000社向けのファームバンキング・システム ファームバンキングの用途は、振込、給与振込、口座振替、入出金明細、残高照会、企業間通信など
システム負荷の目安 多いときで一日あたり約30万件 ※ コール換算の場合:

- インバウンド :1400~1500コール
- アウトバウンド :400~500コール

※ 25日など給与振り込みの日は、システム負荷が特に高くなる。

開発期間 2008年4月プロジェクト開始
2009年3月カットオーバー
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依頼内容 プロジェクト遂行に関する全ての作業 仕様設計、システム設計
ハードウエア選定・調達・設置
ソフトウエア選定・調達・導入
ソフトウエア開発
ネットワークインフラ敷設・構築
※ ハードウエア保守のみ別会社に委託
システムのベースとなったセイコープレシジョン製品

* ソフトウェア

ROS3 
(ロス・キュービック) 

* ハードウェア

UST 

※セイコープレシジョン注

- ROS3: 全銀、HULFT、FTP、SFTPなどの通信手順をサポートするEDIパッケージ

- UST: BSCなどのレガシープロトコルをIP手順に変換するプロトコルコンバータ

大手A社、大手B社、大手C社とセイコープレシジョンを比較検討

— プロジェクト発注先の選定において、何社を比較検討しましたか。

大手A社、大手B社、大手C社そしてセイコープレシジョンの四社です。

— 今回、大手三社以外に、セイコープレシジョンを候補に加えた理由は何ですか。

第一に、セイコープレシジョンには、北國銀行内の別のSI案件で、すでに実績がありました。この時は、プライムではなく二次発注でした。それまでセイコープレシジョンに「SI会社」のイメージはありませんでしたが、実際に、一緒に仕事をしたところ、仕事の質は非常に高く、印象的でした。

第二に、セイコープレシジョンがUSTプロトコルコンバータの開発・製造元であることも大きな理由となりました。USTは多くの金融系システムで導入実績があります。今回のファームバンキングシステムにもUSTは必須でした。そのUSTメーカーであるセイコープレシジョンにSI部分もワンストップで任せられるなら、その方が、費用および開発品質の面でプラスが期待できました。

第三に、セイコープレシジョンのSEからは、通信のノウハウと、そして情熱を感じました。「絶対につなげます」という決意に満ちた発言もあり、信頼できました。

率直に云って、大手三社に比べ、セイコープレシジョンは会社の規模として一段小さいのですが、それを補ってあまりあるメリットを感じたので、今回、候補会社として選定し、提案を求めました。

セイコープレシジョンの提案が優れていた点

— セイコープレシジョンの提案は具体的にどの点が良かったのですか。

「ホストとの運用の完全分離」という、当行のニーズを本当に理解し、それに適した提案をしてきたのは、セイコープレシジョンだけでした。またセイコープレシジョンは、先にも述べたとおり、USTのメーカーであり、北國銀行での業務実績もあります。そして見積もりも非常に納得のいくものでした。

以上の理由に基づき、今回のファームバンキングプロジェクトは、セイコープレシジョンに委託するのが最適であるという結論に達した次第です。

その後、2008年4月より開発を始め、当初の予定通り2009年3月に無事カットオーバーしました。以後、システムは期待通りの品質で稼働しています。また通信速度が、かつてに比べ速くなったことは予想外の成果です。

通信速度の向上 →ユーザー満足度の向上

— 通信速度がかつてに比べ速くなったとは具体的には。

例えば、かつてのホストベースのシステムは、「プロトコルコンバータを通しての全銀TCPプロトコルでの接続」を行っていましたが、今回は「ルーター経由の通信」となり、これによりネイティブでの64 KBPS通信が可能になりました。

通信速度が上がれば、一件当たりの処理時間(接続時間)が短くなり、それに伴い「一日あたり処理可能件数」が増えます。処理可能件数が増えることは、お客様側から見て、「つながらない」というトラブルの減少を意味します。また接続時間が短縮されることは、通信コストの削減にもつながります。

通信速度の向上により、北國銀行のお客様の満足度が上がったといえます。

セイコープレシジョンへの評価

— 今回のプロジェクトにおける「SI企業としてのセイコープレシジョン」への評価をお聞かせください。

j_hokkokubank_02セイコープレシジョンは、次の7点が高く評価できます。

ユーザー本位の姿勢
大手SI会社の場合、自社都合の仕様設計、自社都合のプロジェクト進行を行う会社もあります。しかし、セイコープレシジョンは、いかなる場合も自社都合を押しつけることなく、あくまで北國銀行本位の(ひいては北國銀行のお客様本位の)進行をしてくれました。

既存システムの設定変更を最小限にするための、細かい作りこみ
「HULFTを利用した業務アプリケーション実行エミュレータ(ホストジョブから見て、ROS3が旧ホスト通信制御システムのように見えるためのプログラム)の開発」をはじめとして、基幹システム(ホスト)側の設定変更を最小限にするためのさまざまな工夫を実施してくれました。

仕様の精密さ
セイコープレシジョンの技術者は、精密な仕様を作る印象があります。これはセイコーという精密機器メーカーの遺伝子がよい意味で影響しているのだと推測します。

作業品質の高さ(凡ミスの少なさ)
今回プロジェクトに関わっていただいたSEや技術者の皆さんには、クラフトマンシップを感じました。技術者のレベルは、大手SI会社に比べても遜色のない印象がありました。

レガシープロトコルの知識とノウハウが豊富
セイコープレシジョンは、USTの開発元だけあって全銀協をはじめとする古いプロトコルに関する知識、ノウハウが豊富です。何か問題が起きても必ず対処できる担保があり信頼できます。

「北國銀行の顧客」のことを良く考えてくれている
プロジェクトの最中に、ある特定のお客様のところで、接続が上手く行かないことがありました。その時、セイコープレシジョンは、私たちといっしょにお客様のところに出向いて、問題を解決してくれました。北國銀行の顧客のことを尊重する姿勢には好感が持てます。

金融関係の通信システムの実績が豊富である セイコープレシジョンでは、金融システムの通信における知識、経験、ノウハウが、社内に豊富に蓄積されているようです。今回のプロジェクトでも、そうした社内ノウハウが良い意味で「転用」されていました。こうした「過去ノウハウの転用」が、納得できる見積もりを出せる理由の一つであるようです。

ROS3への評価

— 今回活用されたEDI製品ROS3への評価をお聞かせください。

ROS3には、金融システムでも多くの実績があり、安定度の高い製品であるという印象があります。ファームバンキングの場合、25日など給料振込日前には、数十万件もの通信がいっせいに生じます。ROS3は、それら通信を確実に処理してくれます。良い製品です。

セイコープレシジョンを使いこなすコツ

— 実際にやってみて分かった「セイコープレシジョンと協同してプロジェクトを成功させるためのコツ」をお聞かせください。

真剣に接すること、これにつきます。みなさん真摯な技術者なので、真剣に話せば、真剣な答が返ってきます。ガチンコで話せばよいのです。

今後の期待

— セイコープレシジョンへの今後の期待をお聞かせください。

今回、委託したファームバンキングシステムは期待以上の品質で完成し、北國銀行のお客様へのサービスレベルも向上しました。セイコープレシジョンには、精密な設計力や技術者としての真摯な姿勢など、今ある良さにさらに磨きをかけていただき、北國銀行の各種取り組みを支援していただくことを希望します。今後ともよろしくお願いいたします。

 

株式会社北國銀行様、本日はお忙しい中、ありがとうございました。

お客様プロフィール

北國銀行
http://www.hokkokubank.co.jp/

※ 取材日時 2009年12月