株式会社石川コンピュータ・センター(ICC)は、石川県金沢市に本社を置き、公共、医療、民間企業向けの情報システム開発やデータセンターサービスを提供しています。クローズドモバイルNTPを導入した白山データセンターは、災害リスクの低い北陸地域に立地し、FISCやJEITAの安全基準を満たした高い堅牢性とセキュリティを備え、2022年の開設以来、自治体・企業・医療機関向けにハウジングや仮想基盤など多様なサービスを提供しています。

  • データセンター内での手動時刻調整により運用の負担が大きく、正確な時刻の維持が困難であった。
  • 特に障害時には正確な時刻同期が求められるため、信頼性の確保が課題であった。
  • クローズドモバイルNTPにより、GPSアンテナを設置しなくても高精度な時刻同期が可能となった。
  • 物理的な工事も最小限に抑えられたうえ、運用負担が軽減され、信頼性が大幅に向上した。

1.【導入背景】手動による時刻調整は運用の負荷が高く、信頼性にも課題を感じていました。

- 時刻同期環境の導入検討を行った背景をお聞かせください。

当社のデータセンターでは、長年にわたり閉域網でシステムを運用してきました。この環境ではインターネット経由での時刻同期が行えないめ、運用チームが手動で時刻調整を行う必要がありました。しかし、特に障害発生時には正確な時刻が求められるため、この手動運用が大きな課題となっていました。
さらに、手動調整ではわずかな時刻ずれが生じるため、証跡としての信頼性確保にも限界がありました。タイムサーバーを導入するためにはGPSアンテナの設置が必要で、これにはファシリティの運営を担当するグループ会社への依頼が必要でした。そのため、検討から実行に移すまでに時間を要し、導入には消極的な状況が続いていました。また、白山システムセンターは雷の多い地域に位置しているため、避雷対策にかかるコストも導入の障壁となっていました。しかし、建物の改修開始を契機に、再度時刻同期環境の再検討に踏み切ることになりました。

2.【経緯】時刻同期サービスの存在を知り、時刻同期環境の整備の再検討を開始しました。

― クローズドモバイルNTPを検討されたきっかけについてお聞かせください。

時刻同期ソリューションの提案は長年受けていましたが、前出の理由で導入に踏み切れずにいました。建物の改修を機に改めて検討を進める中で、Interop Tokyo 2023において、セイコーが同サービスを提供していることを知りました。従来のアプライアンスサーバー導入に比べ、機器を自社で所有する必要がなく、GPSアンテナの設置も不要であるなど、いくつかのメリットがあることが分かり、導入を検討し始めました。

― クローズドモバイルNTPの導入までの経緯をお聞かせください。

2024年4月には電波調査を実施し、問題がないと判断されました。6月には翌年度の予算計上時にクローズドモバイルNTPの予算を確保し、10月に契約を締結しました。11月中旬に機器が納品され、12月から運用を開始しました。機器到着からサービス利用開始までは非常にスムーズで、事前に初期設定されたタイムサーバーとルーターを電波調査済みのデータセンター内に設置し、接続後に電源を入れセイコーの監視サービス開始の連絡を行うだけで、すぐに運用を開始できる点も印象的でした。

3.【決め手】アプライアンスサーバの導入と比較して、設備投資や運用の負荷が軽減されました。

― クローズドモバイルNTPが優れていた点をお聞かせください。

まず、時刻同期サービスとしてハードウェアがレンタルで提供されるため、自社資産として保有する必要がなく、設備投資の負担が軽減されます。また、物理的な工事を最小化でき、建屋や配管への大がかりな工事が不要である点も、大きな導入メリットのひとつでした。さらに、導入コストがリーズナブルで、年間費用の見通しが立てやすく、費用対効果が高いと感じました。加えて、ハードウェアのファームウェアのアップデートはセイコー側で対応してくれるほか、機器の交換も適宜行われるため、更新作業の負担も削減される点が魅力でした。

4.【導入効果】定期的なレポートで問題なく運用できていることが 確認できて安心です。

― 導入後、どのようなメリットがあったかお聞かせください。

申し込みから1か月で導入が完了し、スムーズに時刻同期環境を整備することができました。おかげさまでシステムの証跡が正確に管理され、運用の信頼性が向上しました。これまでの2か月間で2回のレポートを受け取っており、順調に運用が進んでいます。セイコー側でも監視が行われ、SLAが継続的に満たされていることを定期レポートで確認できており、安心感につながっています。またオンプレミスとしての導入ではないので10年ごとのケーブル工事や設備更新が不要となり、長期的にもコスト面でのメリットを期待できると考えています。

5.【今後の期待】高精度な時刻同期環境を整備できたことを踏まえ、今後のサービス拡充にも力を入れていく予定です。

― 今後の期待をお聞かせください。

今回の設定情報をセイコー側で管理し、ハードウェアの入れ替え時に自動で適用できるコンフィグバックアップサービスがあれば、より長期的に便利に運用できると期待しています。また、時刻同期環境を整備できたことで、白山データセンターのお客様に対しても時刻同期サービスを展開できるか検討を始めています。お客様ごとにハードウェアを分けることは現実的ではないため、必要最小限のサーバーでサービスが展開できるようマルチテナント対応のサービスと多ポート搭載のハードウェアがセイコーより提供されればサービス化の検討もさらに一層具体化すると思っています。

また、弊社では今回の時刻同期サービスのほかにも、セイコーの製品としてコンソールサーバーSmartCSを長年にわたり活用しています。当初は、ネットワーク機器の運用管理の一環としてデータセンター内のネットワーク機器のコンソールポートを集約する目的で導入したのですが、最近では新型コロナウイルスの影響により、データセンター内への立ち入りが制限され、オンサイト作業を最小限に抑える必要があった際に、その有効性が改めて実証されました。
出社可能な日にセンター内のネットワーク集約部分や、通信事業者・ISPとの相互接続点(POI)にSmartCSを設置し、リモート拠点からのコンソールアクセス環境を整備しました。これにより現地に赴かずとも、機器のキッティングや提供中サービスの動作確認、構築したVMの検証などを行えたため、非常時においてもデータセンターの安定運用を維持することができました。
今回はクローズドモバイルNTPの導入を通じて、時刻同期の課題が解決され、さらなるサービス拡張の可能性が見えてきました。今後もセイコーとの連携を強化し、最適な時刻同期環境や運用体制のもと、様々なサービスを展開できるようシステム環境の構築を進めていきます。

※ 社名および記載されている内容は、取材当時のものです。現在の情報とは異なる可能性がありますのでご了承ください。
※ 記載されている社名、製品名等は各社の商標または登録商標です。

お客様プロフィール

株式会社石川コンピューター・センター
URL https://www.icc.co.jp/

※ 取材日 2025年3月