北日本銀行は岩手県、宮城県を中心に北は青森から南は東京まで81店舗を展開しています。東日本大震災の復興支援に注力する一方、住宅ローンを中心とした個人向けローンを積極的に推進していくなかで個人信用情報照会システム「L-CRIP」を導入。 その経緯と効果について、株式会社北日本銀行 営業統括部 調査役 阿部貴行氏に伺いました。

真のニーズに応えるため商品開発にも先進性を追及する「きたぎん」

ー 北日本銀行について教えてください。

 

北日本銀行本店(盛岡市)
北日本銀行本店(盛岡市)

北日本銀行は中小商工者のための金融機関として創業し、人と人との繋がり、親密さ、行動力を企業伝統とし、お客さまの真のニーズに応えられるよう商品開発においても先進性を追及してきました。 当行は「地域密着」「健全経営」「人間尊重」を経営理念に掲げ、岩手県、宮城県を中心に北は青森から南は東京まで81店舗を展開しています。

お客さまとはFace to Faceで向き合い、復興へ向かう前向きな気持ちを共有しながら、個人の分野に関しては住宅ローンを中心とした個人向けローンに、法人の分野では医療や東日本大震災の復興関連に力を入れています。
「事業復興・成長支援」と「生活再建・向上支援」で地域とお客さまの復興・発展に貢献することが地域金融機関の使命であると考えています。

個人向けローン新商品「ASUMO」の審査業務にL-CRIPを活用

— 北日本銀行では「個人信用情報照会システム L-CRIP」をどのようにお使いですか。

「システムの更改と審査モデルの構築が必要でした」と阿部氏
「システムの更改と審査モデルの構築が必要でした」と阿部氏

北日本銀行では、2012年10月にセイコーソリューションズの「個人信用情報照会システム L-CRIP」を導入し、2013年2月に大幅にリニューアルした個人向けローン商品「ASUMO(アスモ)」の初期与信時の審査業務や住宅ローンの審査業務に活用しています。

「ASUMO」は、以前別々に展開していた個人向けローン商品「カードローン」「フリーローン」「マイカーローン」「教育ローン」「リフォームローン」を、くらし応援ローン「ASUMO」として1つにまとめ、よりわかりやすく、よりお客さまのニーズにお応えできるローン商品として生まれ変わらせたものです。

また、「ASUMO」では外部の保証会社への保証依頼を削減し、当行グループ会社のきたぎんユーシー株式会社に保証依頼を一元化することで、グループ内での収益性も向上させています。

「ASUMO」発売に合わせ、信用保証業務の大半をきたぎんユーシー株式会社が行うようになりましたので、きたぎんユーシーの審査担当がL-CRIPを活用し審査業務を行っています。 また、当行営業店ならびに本部では主に住宅ローンの審査業務にL-CRIPを活用しています。

— L-CRIP導入前の状況について教えてください。

従来の個人信用情報照会システムは、約10年間使用しており老朽化が進んでいました。 また、バージョンアップでは個人信用情報機関の制度変更に対応できないことも分かっていましたので、システムそのものを見直す必要に迫られていました。
その頃、先にお話したASUMOの企画が立ち上っていましたので、その発売に向けて銀行としての審査モデルの構築、審査システムの導入を検討しており、そのためには個人信用情報照会システムの更改は不可欠でした。

— 銀行として審査モデルの構築、審査システムの導入を検討されるのは、プロジェクトとしては大きなものですね。

銀行としての取り組みというよりも、北日本銀行グループとしての取り組みといってもいいかもしれません。 それまでは保証会社としてグループ会社のきたぎんユーシーも利用していましたが、審査キャパシティやリスク管理に限界があり、個人向けローンの多くは外部の信用保証会社を利用していました。
今回の個人信用情報照会システムの更改、そして審査システムの導入にあたり、グループ内に信用保証業務を取り込む、つまり、きたぎんユーシーで個人向けローンの信用保証業務とリスク管理が可能となる体制の構築を進めていました。 審査業務を当行ときたぎんユーシーで確実に行える体制作りと、その体制を支える個人信用情報照会システムの導入が必要だったのです。

「ASUMO」商品化には個人信用情報システムの更改が必須

— L-CRIPはどのようにして知ったのでしょうか。

個人向けローン新商品「ASUMO」のキャラクターとパンフレットなど
個人向けローン新商品「ASUMO」のキャラクターとパンフレットなど

従来システムのベンダーなどと更改に向けての打ち合せをしている時期に、セイコーソリューションズの河野さんから連絡をいただきました。そして資料を送っていただき、「80社以上の導入実績」(※2013年6月現在93社)があることを知り、それならとプレゼンテーションを受け、初めてL-CRIPを知りました。 実際のところ、それまではセイコーソリューションズがこうしたシステムを扱っていることは知りませんでしたね。
当行システム部が以前からセイコーソリューションズのマルチプロトコルコンバータ USTなどを使用しており、おつきあいがあったことは後から知りました。

— 個人信用情報照会システムの導入にあたっての要件を教えてください。

大きくは下記の3つの要件で検討しました。

1. システムの共用が可能であること。
導入するシステムは、主にグループとして取り組む信用保証業務を支える審査体制構築のためのものですから、当行ときたぎんユーシーが共用できるライセンス形態であることが必要でした。 それまでは、当行ときたぎんユーシーは別々のシステムを導入しており、連携がうまくいかないことに加え、コストも2システム分必要でした。
グループ内で統一した審査体制を構築するとともに、コストダウンにもつながることから、システムを共有できることは不可欠な要素です。

2. ベテランでも新人でも使いやすいシステムであること。
私も営業店で審査業務に携わった経験がありますので、個人信用情報を使用する行員の立場で使いやすいシステムであることを重視しました。 審査において銀行が2機関、きたぎんユーシーが3機関の個人信用情報を使用しますが、その量は膨大なものです。 営業店においては、経験が浅い行員が担当することもありますので、誰が見てもすぐに分かり、判断しやすいアウトプットであることが必要でした。

3. 審査システムとの連携がきちんと取れること。
同時に審査システムの導入を検討していましたので、大幅にカスタマイズしなくともきちんとしたシステム連携が取れることも重要な要素でした。

この要件をもとにセイコーソリューションズを含む3社からご提案をいただき、当行ときたぎんユーシーで検討を重ね、L-CRIPの導入を決めました。

L-CRIP独自の審査ロジックによるわかりやすいコメント表示が決め手

— L-CRIPの導入の決め手を教えてください。

「これからも意見を交換していきましょう」阿部氏と弊社・河野
「これからも意見を交換していきましょう」阿部氏と弊社・河野

従来のシステムの場合、審査担当は膨大な個人信用情報の中から与信判断に使える情報はどれなのかを見極めることが必要でした。 ベテラン行員なら信用情報機関から必要な情報だけを読み取り、今までの経験をもとに判断できますが、当行営業店には若手行員も多く、経験が浅いとうまく読み取れない恐れがありました。

L-CRIPは、各機関の情報から本人判定、ポジネガ判定、重複判定を行い、年間返済額、借入比率などを審査機能で自動的に算出してアウトプットしてくれます。 さらに各機関からの情報をもとに、独自の審査ロジックによるコメントが表示されます。
ですから当行の審査担当は自動算出された集計情報やコメントを見るだけで、お客様の個人信用情報の概略を把握することができるのです。 この機能が導入の決め手となりました。

他社システムに数字だけを集計(合算)してくれるものはありましたが、 ここまでの機能は知りませんでした。 最初にL-CRIPを紹介されたとき直感的に「これは使えそうだ」と感じましたね。 この機能を活用すれば、ベテラン、若手のどちらが担当してもバラつきのない、審査精度の平準化ができると考えたのです。

— コスト面についてはいかがでしょうか。

3社からご提案を受け、コスト面で一番不利だったのがL-CRIPです。 しかし、それを補って余りある機能なので、たとえ初期投資は大きくとも導入した方がよいと判断しました。 当行としては今後、住宅ローンさらに個人向けローンを積極的に推進していこうというなかで、個人信用情報照会システムは審査の精度を保つという意味でも重要ですので、先の審査機能は外せないと考えたのです。
セイコーソリューションズとのお取り引きが当部門は初めてということから、不安視する声がゼロではありませんでしたが、最終的には機能面の優位性が、コストも不安の声をも上回ったのです。

— L-CRIP導入作業はスムーズでしたか。

2012年4月に契約をし、ゴールデンウィーク明けにキックオフミーティングを行い、そこから要件定義と開発を進めました。 こちらからの細かなリクエストにもご対応いただきましたし、審査システムとの連携についても、ベンダーとの打ち合せに対応してもらいました。
そして2012年10月、無事カットオーバーを迎えることができました。 以後、大きなトラブルもなく、行員や保証会社からは使いやすいと評判です。

審査スピードが向上し、審査精度の平準化を達成

— L-CRIPの導入効果について教えてください。

1. 審査のスピードアップ・審査精度の平準化。
L-CRIPの審査機能を使うことで、コメントが表示されたアウトプットを見ることができます。 審査スピートが向上するとともに、個人の経験によるものではなく、L-CRIP独自の審査ロジックに基づいた情報を参考に審査精度の平準化ができました。 先にお話したように、審査担当はベテランばかりではありませんので、若手行員が担当しても、変わらぬ結果が出るようになったことは大きな効果だと思います。

2. 業務が削減され・より多くの審査ができる。
以前のシステムの場合、信用情報機関からの膨大な情報を、審査担当が自らの目と手を使って集計し、情報の重複などを整理していました。 その集計したものをもとにポジネガ判断などを行っていたのです。
L-CRIPでは最初から複数の信用情報機関の情報が集計(合算)されており、そこにコメントが表示されていますので、従来のシステムでは人手で行っていた集計作業がなくなり、より多くの審査を行うことができるようになりました。

これは銀行本部の審査担当、きたぎんユーシーの審査担当にとっては大きな業務改善につながっています。 特にきたぎんユーシーでは1件当りの審査時間がおおいに短縮され、より多くの審査を行うことができるようになりました。

銀行導入実績を更に増やし、より精度の高い審査ロジックに期待

 

— L-CRIPの評価を教えてください。

当グループ内で信用保証業務までを行う新しい個人向けローン商品「ASUMO」を2013年2月から発売することができ、お陰様で好調に推移しています。 これもL-CRIP導入による成果だと思います。

信用情報機関からの情報の集計(合算)とコメント表示による審査のスピードアップと審査精度の平準化、それにともなう審査スピードの向上とより多くの件数の審査を行えるようになったことを大変評価しています。

— L-CRIP並びにセイコーソリューションズへのリクエストがありましたらお聞かせください。

当行が導入する以前に既に80社以上の導入実績がありましたが、まだ銀行の導入件数が少なめでした。 今後、銀行の導入実績が更に増えることで、より精度の高い審査ロジックがバージョンアップとしてL-CRIPに反映されることに期待しています。

 

本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

お客様プロフィール

株式会社北日本銀行
URL http://www.kitagin.co.jp/

※ 取材日時 2013年6月