セイコープレシジョンは、神戸製鋼所の主要生産拠点の一つ、長府製造所のネットワーク運営、システム開発・運用を、(株)コベルコシステムのご協力を得て25年にわたり担ってきた。25年を通じての評価を、神戸製鋼所アルミ・銅カンパニー企画管理部の佐竹剛氏(写真右)とコベルコシステムサービス事業部 長府システム室 清水二三雄氏(写真左)に聞いた。

製造所が海水に沈んだ

— 製造所という場所で一緒に仕事をするSI会社には、どんな姿勢を求めますか。

われわれと同じ価値観を持ってくれること。同じ目線で仕事をしてくれることを求めます。セイコープレシジョンはそういう会社であり、だからこそ25年の長きにわたり、取引が続いています。

 

— この25年の中で、セイコープレシジョンが神戸製鋼所と「同じ価値観を持ち、同じ目線で仕事をしていること」を表す、エピソードなどあるでしょうか。

 j_kobelco_01実は、長府製造所は、かつて高潮被害で製造所全体が水没したことがあります。その時の復旧作業における、セイコープレシジョンの働きぶりは印象的でした。

7年前の1999年9月24日早朝、台風19号が下関にやってきました。長府製造所が面する関門海峡が暴風域にさしかかったとき、運悪く満潮でした。台風で気圧が低くなっているところに満ち潮が重なり、しかもここは狭い海峡。さまざまな悪条件が重なり、海面水位がみるみる上昇する、いわゆる「高潮」が発生しました。水位はついに、堤防の高さを超え、その結果、大量の海水が流れ込み、長府製造所全体が水没しました。

 

— その水没により、製造所にどのような被害が出ましたか。

操業停止という、製造所にとっての最悪の被害です。

製造設備の一部が海水に浸され、壊れました。またネットワーク回線を含む、地下の配管、配線も海水に漬かりました。いったん製造所全体をストップせざるをえなくなり、操業再開までには、相当の日数がかかると見られていました。

長府製造所では、銅板条およびアルミ押出品を製造しています。その材料の供給に乱れが起きないかどうか、ユーザー各社から問い合わせが殺到しました。復旧が遅れればユーザー工場の生産にも深刻な影響を及ぼしかねません。無理を承知で、何としても早期の復旧を果たさねばなりませんでした。

 

— 早期復旧のためにどのような活動を行ったのでしょうか。

長府製造所の力だけでは足りないことは明らかだったので、神戸製鋼所とグループ企業から応援部隊が駆けつけてくれました。具体的には、真岡・秦野・大安・神戸・加古川などの各生産拠点から500人を超える設備担当者が集結し、夜に日をついで作業にあたりました。この時は下関のあるビジネスホテルを一棟丸ごと借り切ったような記憶があります。こうして全社が一丸となって復旧に取り組み、また有り難いことに同業他社の協力もあったおかげで、わずか1カ月で生産・出荷を再開できました。ユーザー工場への迷惑を最小限に抑えられました。

この復旧作業の時に、ネットワークまわりの作業を引き受けていただいたのが、セイコープレシジョンです。

その時、セイコープレシジョンは何をしたか

— セイコープレシジョンは具体的にはどのような作業を

 j_kobelco_02この時の水没水位は、1メートルぐらいだったので、机の上のパソコンは無事でした。しかし、地下のケーブル類は全て海水に浸りました。

復旧作業においては、それらネットワークケーブルや電気系統など配線類がひとまとめにはいっている配管部分を重点的にチェックしました。

水がたまっている配管からは、まず水を抜き、内部をキレイにし、配線の様子を見て、使える物は使う、使えない物は廃棄するというように順々に作業します。

このように言葉で言うと簡単そうですが、実際の作業は、製造所内のどこに、どんな配管が、どのように通っているか、図面がなくても頭の中にイメージが浮かべられるぐらいでないと、作業が効率的に進みません。普通のSI会社をにわかで連れてきても、他の作業部隊のじゃま、足手まといになっていたことでしょう。

幸いセイコープレシジョンには、25年の付き合いの中で、長府製造所のネットワークの隅から隅までを知り尽くした「生き字引」のような人が何人もいました。おかげで復旧作業はスムーズに進みました。頭の下がる思いでした。

良いSI会社だから25年続いたのか。25年続いたから良いSI会社になったのか。

— 「セイコープレシジョンは台風の時に長府製造所のお役に立てた。それは約25年の取引を通じ長府製造所のネットワークを隅々まで知っていたから」とのお話しでした。25年という時間が話のポイントになります。

j_kobelco_03ここでお聞きしたいのが、セイコープレシジョンは、良いSI会社だったから25年間取引が続いたのか。それとも25年間、取引が続いたから良いSI会社になれたのか。どちらなのかという質問です。単純な話、どんな会社でも25年も通っていれば、内部事情に熟知するのは当然ではないかと…。

[佐竹氏]: 鶏が先か、卵が先かのような難しい質問です。しかし前者の方「セイコープレシジョンが良い会社だったから25年間取引が続いた」が正しいと思いますよ。なぜならセイコープレシジョンが良くない会社であったとすれば最初の1〜2年で、我々としても見切りをつけていたはずですから。いったん取引が始まっても、途中交代になるSI会社はいくらでもありますから。

[清水氏]: 私はセイコープレシジョンのことは25年前から知っていますが、最初の頃からSTネットワークなど技術にも見るべきものがあり、良い会社だと思っていました。

セイコープレシジョンと長府製造所の関わり

— セイコープレシジョンは、25年の間、長府製造所にどのようなサービスを提供してきたのでしょうか。

あえて列挙すれば以下のようになります。

  1. 製造所ネットワークインフラの構築、配線工事
  2. 各種サーバインフラの構築、生産管理端末・プリンタの導入設置
  3. 製造ラインの操業データ自動収集、作業実績収集システムの開発
  4. 生産指示書(指示図)、梱包ラベルなど各種帳票発行システムの開発
  5. 材料試験・分析データの自動収集、品質保証DB構築など品質保証システムの開発
  6. マルチベンダー保守サービス

上記は、要するに「長府製造所内のネットワークに関する、主たるものはセイコープレシジョンさんに依頼している」ということです。九州営業所の方にはほぼ毎日、製造所に来ていただいています。日常業務においては、ほとんど内部組織的な位置づけの意識です。

 

— 長府製造所の情報システム部門の価値観、言いかえれば「いちばん最優先のこと」は何ですか。

24時間の安定したシステムサービスを製造所全体に提供すること」を常に最優先に考えます。製造所では、安全を確保し、操業率を上げ、設備投資を早期に回収することが重要です。製造設備は基本的に24時間365日ノンストップ操業。情報システムもそれに合わせ、24時間あたりまえのように稼働し続けなねばなりません。

この『安定稼働の継続』という価値観を、いちいち言って聞かせなくても、仕事の大前提として認識してくれる会社。それが製造所でのSIパートナー足りうる会社です。

先の台風の話でもおわかりいただけるとおり、セイコープレシジョンは、有事の際にも、われわれと同じ目線、価値観で動いてくれる会社でした。

ホストマシン入れ替えの時の働きぶり

— 台風19号の際の復旧活動の他に、セイコープレシジョンのSIとしての付加価値を感じさせたできごとはありますか。

ホストコンピュータのリプレースの時のはたらきぶりも印象的でした。長府製造所では2001年にホスト・コンピュータの入れ替えを行いました。その際に、ネットワークに関する事前テストをセイコープレシジョンに依頼しましたが、これも長府製造所の内部を熟知していないとできない難しい作業でした。

 

— 単なるテストであっても、それほど難易度が高いのですか。

実はテストというのは案外にむずかしいのです。テストそれ自体よりも、テスト項目を作ることの方がむずかしい。順々に説明してみます。

  1. ホストマシンの機器とりかえは、いわば頭脳を取り替えるようなもの。頭脳が変われば神経系のつながり(=ネットワーク)にも影響が出る。悪影響が出ないようテストが必要になります。

  2. しかし、頭脳を変えた時、つながりのどのあたりに影響が出るのか、それをあらかじめ知らないと、テスト項目は作れません。テスト項目が作れなければ、テストもできません。当然ながら。
  3. 製造所は24時間ノンストップ稼働が基本です。現場環境を止めてテストする時間は最小限にとどめたい。だから現場環境を使わず、疑似環境を使ってのテスト項目をなるべく多くしたい。ここでもテスト項目設定のセンスが問われます。
  4. どんなテスト項目を、どんな順番で、どのぐらいやるのか。これを決めるには、長府製造所の内情を熟知している必要があります。

セイコープレシジョンには、このような要求に応えられる熟練スタッフが多数いました。このような重要なテストをお願いできた所以です。

今後の期待

— 今後のセイコープレシジョンに期待することがあればお知らせください。

これまでと同じく、長府製造所のネットワークの運営につき、御支援いただければ幸いです。形の上では、発注元・受託企業の関係ですが、しかし内部的にはセイコープレシジョンをそのようにはとらえておりません。あくまでも並列の関係。重要な役割を担っていただいている会社と考えています。私たちだけのマンパワー、ノウハウだけでは達成できないことも多々あります。製造所のネットワーク運営は、メーカーやSIの皆様の支援が必要です。現在の共同関係、すなわち「パートナー関係」を、今後も継続していただけるよう、宜しくお願いいたします。

 

今日は貴重なお話を有り難うございました。

お客様プロフィール

株式会社神戸製鋼所
http://www.kobelco.co.jp/

※ 取材日時 2006年8月