NTTファシリティーズでは、新築ビルのファシリティマネジメントにおいて、IPv6で構築された中央監視システムとIPv4の設備機器の通信を行うために、IPv6/IPv4トランスレータ Netwiser iX-3740を導入しました。その経緯と効果について、NTTファシリティーズ ファシリティマネジメント事業本部 ファシリティソリューション部 部長 横山克己氏、同部の藤本隼人氏、そして協力会社としてエンジニアリングを担当した裕幸計装 エンジニアリング二部次長 冨田 玄氏、加賀田由美氏にお話を伺いました。

1. パートナーの裕幸計装とともに、ワンストップでファシリティサービスを提供

NTTファシリティーズ、そして協力会社である裕幸計装についてお教えください。

NTTファシリティーズのホームページ

NTTファシリティーズは、NTTの「通信を止めない」という使命のもとで培われてきた建築と電力の技術を融合し、1992年に誕生しました。 通信のインフラを支え、さまざまなお客様のファシリティ環境をより良いものにするというミッションのもと、ビルや建物の「企画・設計・施工」から「保守・運用・維持管理」までワンストップでサービスを提供しています。
現在では、日本の通信を長きにわたって支えてきたICT・エネルギー・建築の技術を最大限に融合・活用し、環境に負荷の少ない建物の構築や新エネルギーの創出に取り組んでいます。

裕幸計装は、1963年創業の計測・制御・監視の専門企業として、ビルなどの自動制御中央監視システムの試験・調整・保守並びにネットワーク構築などを行うエンジニアリング会社です。

NTTファシリティーズと裕幸計装は、20年以上にわたりパートナーとして、ファシリティマネジメントに携わっています。

2. 中央監視システムのIPv6/IPv4変換にNetwiser iX-3740を採用

— 現在、中央監視システムに IPv6/IPv4トランスレータ Netwiser iX-3740をどのようにお使いですか?

現在販売されているIPv6/IPv4トランス レータはセイコーしかありませんでした」 とNTTファシリティーズ・横山克己氏
現在販売されているIPv6/IPv4トランス
レータはセイコーしかありませんでした」
とNTTファシリティーズ・横山克己氏

当社がファシリティマネジメントを担当した新築ビルにおいて、中央監視システムをIPv6で構築していましたが、IPv4プロトコルにしか対応していない設備機器を導入する必要があり、その通信におけるIPv6/IPv4変換にNetwiser iX-3740を使用しています。
その新築ビルは2014年春より稼働開始し、まもなく1年になります。その間、設備機器が本格的に動いて主要なトラフィックがすべて流れるようになりましたが、現在までトラブルはありません。

— セイコーソリューションズの IPv6/IPv4トランスレータを採用した背景を教えてください。

IPv6の中央監視システムとIPv4の設備機器では相互通信ができませんので、IPv6/IPv4トランスレータが必要でした。
過去には IPv6/IPv4トランスレータを使用した実績もありましたが、調べてみるとその製品はすでに廃番となっており、メーカーサポートも終息していました。

そこで現在販売されている IPv6/IPv4トランスレータを探したところ、セイコーソリューションズのNetwiser iX-3740が販売されていることがわかりました。

— セイコーソリューションズがネットワーク機器を提供していることはご存じでしたか。

ネットワーク機器を取り扱っていることは知っていました。今までも裕幸計装と一緒に構築してきた中央監視システムで時刻同期が必要となった時、セイコーソリューションズのタイムサーバーを納めることが多かったです。ただ、ロードバランサーやトランスレータを扱っていることは、今回初めて知りました。

「評価機の貸し出しですぐにテストを行い、導入を決めました」とNTTファシリティーズ・藤本隼人氏
「評価機の貸し出しですぐにテストを
行い、導入を決めました」と
NTTファシリティーズ・藤本隼人氏

 

— どのような方法で探されたのですか?

インターネットの検索エンジンに「IPv6/IPv4 トランスレータ」と入力して検索したところ、セイコーソリューションズの製品がヒットしました。 このとき、Interop(インターロップ)※1でIPv6/IPv4共存技術の検証としてネットワークを構築し、IPv6/IPv4トランスレータでパケットの変換を行ったという資料を確認することもできました。
Webサイトのお客様窓口に問い合せをしたところ、折り返し連絡をいただき、短期間のうちに打ち合せから評価機の貸し出しまで柔軟に対応していただきました。工期がタイトであったため、実際に使えるかどうかのテストを購入してから行うのでは時間がかかるのと、リスクも高いので、評価機の無償貸し出し対応は助かりました。

※1 セイコーソリューションズはInterop Tokyo独自の世界最大級のデモンストレーションネットワーク「ShowNet」に参加しています。

3. 3社の連携により短期間での検証を実現

— IPv6/IPv4トランスレータは問題なく導入できましたか?

「ファームウエアを改良して対応してくれました」 と裕幸計装・冨田 玄氏
「ファームウエアを改良して対応してくれました」
と裕幸計装・冨田 玄氏

セイコーソリューションズのIPv6/IPv4トランスレータは、Interopでのパケットの変換の実績がありましたので、性能面では問題はないと思っていました。
しかし、打ち合わせを通じて、Netwiser iX-3740はグローバルアドレスのパケット変換がメインであることがわかりました。中央監視システムでは、グローバルアドレスを使って外向きに通信を行うのではなく、建物内などのローカルアドレスを使っての通信が中心となります。また、設備機器で警報が出された時には一斉送信が必要となり、その際に必要となるリンクローカルアドレスでのマルチキャストには対応していないことがわかりました。※2

— すると要件を満たしていなかったということでしょうか?

セイコーソリューションズはすぐにファームウェアを改良し、短時間でリンクローカルアドレスでのマルチキャストへの対応を実現してくれました。 そして裕幸計装が用意した現場を想定した検証環境の中で、IPv6/IPv4トランスレータを使って通信がうまくできるかどうか、試験項目を共用して繰り返し検証し、ファームウェア改良を行いました。
現場では設備機器の通信に関する仕様決定が遅れていたことや動作検証時の課題がある状態の中で先行してトランスレータ購入に動くわけにもいかず、課題がある状況で納期が目前に迫っていました。NTTファシリティーズと裕幸計装、セイコーソリューションズの3社が密な連携を取って検証、課題解決を行うことができたからこそ、無事にNetwiser iX-3740を現場に納めることができたと思っています。

※2 現在販売されている IPv6/IPv4トランスレータ Netwiser iX-3740は、リンクローカルアドレスを含め、さらに幅広いブロードキャスト、マルチキャスト変換に標準で対応しています。

4. ファームウエア改良など迅速な対応が導入の決め手

— Netwiser iX-3740を導入するにあたり、苦労したことはありましたか?

一つは、リンクローカルアドレスでのマルチキャストに対応していなかったことですが、それはセイコーソリューションズが迅速な対応でファームウェア改良をしてくれましたので、問題になりませんでした。 InteropにおけるIPv6/IPv4変換の実績が今回の導入を後押ししましたが、中央監視システムでの利用実績はなかったため、検証結果が出るまでは安心できませんでした。

現場ではIPv6/IPv4トランスレータの機器サイズが課題となりました。中央監視システムでは設計段階でデバイスの仕様や台数、盤サイズが決まるのでデバイスの設置場所はその時点でほぼ決まります。今回は中央監視システムの盤にすでに主なデバイスを設置したあとの導入となったため、IPv6/IPv4トランスレータを設置する場所については、どうやって固定を行うべきか悩みました。中央監視システムの制御盤スペースは、サーバルームのラックと比較すると奥行が半分くらいしかないこともあり、限られた空きスペースに取り付ける工夫が必要でした。

5. 中央監視システムにおける確かな実績

— Netwiser iX-3740を導入した後の感想はいかがでしょうか?

①高い信頼性
竣工後1年間、トラブルなく稼働しています。Interropでの実績などから、膨大なパケットの変換にも対応できる点など、導入前から信頼性は申し分ありませんでした。そして評価機の無償貸出やファームウエアの改造にすぐに対応してくれたことなど、メーカーとしての信頼、対応も評価に値するものと考えています。

②コマンド入力とGUI、両方から設定が可能
ネットワーク機器の設定に際しては、コマンド入力のものが多いのですが、Netwiser iX-3740にはコマンド入力とGUIの両方があり、今回は時間的な制約からコマンド入力ではなく、GUIからの設定を行いました。GUIがあったおかげで、設定の時間の短縮にもつながりました。

— 今後も、IPv6/IPv4トランスレータを中央監視システムへ導入する可能性はありますか?

IPv6とIPv4の機器が混在し、IPv6/IPv4トランスレータが必要となった場合に、今回の確かな実績がありますので、安心して提案できると思います。
また、新築ビルだけでなく設備機器リニューアルなどの際に一時的にIPv6とIPv4の機器が混在することが考えられますので、必要に応じて提案していきたいと考えています。

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6. 今後の期待

— セイコーソリューションズ、IPv6/IPv4トランスレータへのリクエスト、期待などありましたらお教えください。

先にお話したように、IPv6/IPv4トランスレータのサイズがもう少しコンパクトになればいいと思います。ネットワーク機器としてサーバルームで使用するだけでなく、中央監視システムなどでも設備として使用することを想定し、コンパクトかつ必要なスペックに絞り、コストを下げてもらえると、リニューアルや小規模な建物での提案の幅を拡げられるため、ご検討ください。

ファームウエアの改良など、迅速な対応をしてくださったセイコーソリューションズには感謝しています。
これからもともに新たな建物に対しての提案をしていきたいと考えています。

左より、 弊社 奥ノ坊 彰、裕幸計装 徳山 祥太朗氏、冨田 玄次長、加賀田 由美氏
NTTファシリティーズ 横山 克己部長、藤本 隼人氏

NTTファシリティーズ様、裕幸計装様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

お客様プロフィール

株式会社NTTファシリティーズ
URL http://www.ntt-f.co.jp

裕幸計装株式会社
URL http://www.yukokeiso.com/

※ 取材日時 2015年2月