1.【導入背景】高精度な時刻同期は、インフラの全体像を支える「見えない土台」
- 貴社の通信サービスでは、なぜ高精度な時刻同期が重要なのですか。
当社は九州地域を中心に、官公庁、金融、医療、教育、放送など幅広い産業分野のお客さまに対して、様々な通信サービスを提供しています。これらのサービスを安定して稼働させるには、トラフィック制御や障害監視およびセキュリティ監視などが、同期された時刻に基づいて行われる必要があります。
たとえばトラフィックのスループットの測定や、複数の通信ルートを比較分析する場合、基準となるのは「いつ起きたか」を示す時刻情報です。この情報にズレが生じると、すべてのログや監視データが信用できなくなってしまいます。
また、伝送系やテレビなどのメディア分野では、わずかな時刻のズレでも音声や映像の同期が崩れてしまいます。そこで当社では、センター局の2拠点における時刻同期システムにおいて人工衛星から時刻ソースを取得するGNSSと、ひかり電話経由で高精度時刻を受信できる光テレホンJJYで冗長化しています。
時刻同期は当社の全事業を支える「見えない土台」であり、それがなければサービス品質そのものが維持できません。
2.【経緯】「どこかが落ちても止まらない」設計思想
- 構成上、冗長性をかなり重視されていると伺いました。
当社のシステムは、センター局を頂点とする階層構造で設計されており、特にセンター局には全システムの中枢として高い信頼性が求められます。
そこに配置される時刻同期装置にも冗長性が必須であり、先述のようにGNSSと光テレホンJJYという異なる時刻ソースを受信する合計3台のストラタム1(ST1)機器を2拠点に分散配置してシステムを構成しています。
仮に1つのソースやロケーションに障害が発生しても、サービスを継続できるようにしており、これはシステム全体に共通したDR(Disaster Recovery)思想です。
さらに、サービスごとにST2機器(ST1と時刻同期するセカンダリーサーバータイプ)を配置しています。物理的・論理的の両面から影響範囲を分けることで、仮に一部のサービスで障害が発生しても、その影響が全体へ波及することを防いでいます。
こうした「障害影響の極小化」こそが、サービス提供に必要となる時刻同期システムを設計する上での基本姿勢となっています。

サービスプラットフォーム工事グループ長 兼 DX推進室 松尾 博章 様
サービスプラットフォーム工事グループ 川原 佑菜 様、久保田 康平 様

3.【決め手】「安定性」と「扱いやすさ」
— セイコー製品を長年ご利用いただいていますが、導入の決め手は何でしたか。
時刻同期システムには、その重要性と製品への信頼からセイコーのタイムサーバーTSシリーズを採用しています。TS-2540の導入以来、稼働は極めて安定しており障害も発生していません。仮に障害が発生しても、内部時計による「自走」機能により、一定の期間クライアントへの時刻配信が可能で、高い耐障害性を備えています。アプライアンス型であるため設定が容易であり、使いやすいGUIやCLIによる複数台への一括設定投入など、優れた操作性も評価しています。これにより、作業工数の削減に貢献しています。TS-2540からTS-2550、TS-2560への移行も円滑で、内部構成や操作における継承性の高さも評価しています。加えて、必要機能に特化したアプライアンス型であることから汎用サーバーと比べて安心して運用できる点も決め手となりました。
4.【導入効果】サービスの独立性を保ちつつ効率的な運用を実現
— 実際の運用現場では、どのような工夫をされていますか。
当社では、提供するサービスに応じて、タイムサーバーの構成を柔軟に設計しています。原則として、各サービスが隣接サービスの影響を受けず自律的に動作するよう設計しています。これにより、サービス拡張の際にも他の構成を気にすることなく、独立したサービスとして設計・運用できる利点があります。近年では、ポート数の増加により1台で複数サービスを収容可能となったことから、タイムサーバー集約の検討も始めています。サーバーの小型化・集約化に対応する柔軟性は、コスト面でも非常に重要だと感じています。
5.【今後の期待】リアルタイム社会の基盤としての“時刻”
— 今後、どのような展望を描かれているのでしょうか。
今後の社会では、AI、ローカル5G、IoT、クラウド連携などリアルタイム性が求められるサービスが急増すると予想されます。こうした環境では、通信タイミングのわずかなズレが品質やセキュリティ、ユーザー体験に直結するため、時刻同期の信頼性はこれまで以上に重要になると考えられます。当社でも将来的に、PTP(Precision Time Protocol)といったナノ秒精度の技術への対応を視野に入れ、次世代光伝送インフラ整備の検討を始めています。
セイコー製品にも、こうした高度な時刻同期技術への発展性を期待しています。
時刻同期の重要性は日々高まり、今やイノベーション創出の土台となりつつあります。
今後も信頼できる時刻同期システムを支えに、新たなサービスと価値を社会へ届けていきたいです。
※ 社名および記載されている内容は、取材当時のものです。現在の情報とは異なる可能性がありますのでご了承ください。
※ 記載されている社名、製品名等は各社の商標または登録商標です。


