車両管理台帳の作り方と運用のコツ。目的や必要な項目、管理ポイントを解説

車両を保有する企業では、日々の点検や整備・事故履歴を正しく記録するために「車両管理台帳」が必要です。
しかし、どのように作成すればよいのか、何を記載すべきか分からず、紙やExcelでの管理が煩雑になっているケースも少なくありません。
この記事では、車両管理台帳の目的や必要な項目をわかりやすく整理し、効率的に作成・運用するためのコツと管理のポイントを解説します。
車両管理台帳とは?
車両管理台帳とは、企業が保有または使用する車両の情報(基本情報・使用状況・点検・整備・保険・事故記録など)を一元的に記録・管理する帳簿のことです。作成する目的は、車両の安全管理、法令遵守、整備・保険・コストの適正化、事故防止です。
車両管理台帳が重要な理由
車両管理台帳が重要な理由について解説します。
事故防止と安全管理強化の必要性
運送業や、営業車両を持つ企業では、飲酒運転・過労運転・整備不良による事故が社会問題化しています。
このような背景から、国土交通省や警察庁が安全運転管理体制を強化し、事業所単位での車両管理責任を明確化できるよう取り組んでおり、車両に関する点検や整備履歴を管理しなくては、事故発生時に「管理不備」として企業責任が問われることとなります。
また、近年はコンプライアンス・CSRの観点からも、車両安全管理が取引先選定や企業評価に影響するようになっている点も挙げられるでしょう。
法令での義務化
車両管理台帳の作成は、法令で義務化されています。
運送事業者(緑ナンバー)
緑ナンバーの車両を所有する運送事業者は、道路運送法・貨物自動車運送事業輸送安全規則により、車両ごとに管理記録簿を作成して1年以上保存する義務があります。点検整備、事故記録、運行履歴の記録が求められ、監査や巡回指導で提出が必要となります。
参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則 | e-Gov 法令検索
自家用車を複数保有する事業所(白ナンバー)
白ナンバーの自動車5台以上または乗車定員11人以上の車両1台以上を使用する事業所は、安全運転管理者の選任が義務となっています。
安全運転管理者が運転者や車両の使用状況を把握するために、車両管理台帳の整備が事実上必須です。
実際に行政指導や処分に至った事例
安全運転管理体制が整備されていなかったため、重い行政処分が下された事例も存在します。
2025年6月24日、国道交通省 中部運輸局は貨物自動車運送事業者10社に対して、法令違反による行政処分を発表。その中には、「車両停止130日車」という重い処分が下され、長期間にわたり事業に大きな影響が出た事業者も含まれていました。
ある運送事業者の事例
| 処分内容 | 車両停止 130日車、文書警告 |
|---|---|
| 背景 | 安全運転管理体制が整備されておらず、帳票管理や点検整備が適切に行われていないことが監査で発覚 |
| 違反項目 |
|
参考:中部運輸局、最長130日車など10社に行政処分 | LOGISTICS TODAY
車両管理台帳と運転日報の違い
ここからは、車両管理台帳と運転日報の違いについて詳しく解説します。
| 項目 | 車両管理台帳 | 運転日報 |
|---|---|---|
| 目的 | 車両の基本情報・整備履歴・保険・事故記録などを長期的に管理 | 1日の運行状況を日ごとに記録し、運転実績を把握 |
| 記載内容 | 車両番号、車種、型式、所有者、車検期限、保険契約、整備・点検履歴、事故履歴など | 運転者名、運行日、走行距離、出発・到着地、積載状況、勤務時間、燃料使用量など |
| 更新頻度 | 車両の購入・廃車、整備・点検、保険更新、事故発生時など | 車両使用時に毎日作成 |
| 保存期間 | 1年以上(運送業では法令で義務化) | 1年以上(労務管理や監査対応で必要) |
| 活用シーン | 車両の状態や履歴を把握し、整備や更新時期を管理 | 日々の業務・運転記録を残し、勤怠管理やコスト分析に活用 |
車両管理台帳の大きな役割をわかりやすく言うと「車両のライフサイクル管理」で、一方の運転日報は「日々の運行管理」です。
両者を連携させることで、車両の使用状況と整備記録を統合でき、監査対応や安全管理がスムーズになります。
車両管理台帳の作り方|5つのステップ
ここからは、車両管理台帳の作り方について5つのステップに沿って解説します。
ステップ1:管理目的を明確にする
まずは、車両管理台帳を作成する理由を整理しましょう。例えば、法令対応、監査準備、社内安全管理、コスト削減といった目的が挙げられます。
運送業の場合は、貨物自動車運送事業輸送安全規則に基いて、点検・整備記録を台帳に残す義務があります。
また、一般企業でも安全運転管理者制度で車両や運転者の管理責任があるため、台帳を整備することで監査対応時のリスクを軽減できるでしょう。
ステップ2:記載すべき項目を洗い出す
次に、車両管理台帳に記載すべき項目の洗い出しをしましょう。具体的には以下のような項目が考えられます。これらの項目を一覧化し、抜け漏れなく台帳に組み込みます。
| 車両基本情報 |
|
|---|---|
| 所有・使用情報 |
|
| 法定情報 |
|
| 整備・点検記録 |
|
| 事故・トラブル履歴 |
|
| その他管理情報 |
|
ステップ3:テンプレートを作成・選定する
記入する項目を決めたら、ExcelやGoogleスプレッドシートを使って台帳のフォーマットを作成しましょう。
市販や無料公開されている「車両管理台帳テンプレート」を参考に、自社用にカスタマイズする方法が推奨されます。
また、入力ミスを防ぐために、ExcelやGoogleスプレッドシートのドロップダウンメニューや入力必須セル、日付自動計算式を設定しておきましょう。点検や保険更新が近づいた際にわかるよう条件付き書式で「期限切れアラート」を設定するのもおすすめです。
ステップ4:更新と管理のルールを整備する
台帳更新と管理のルールも整備しておきましょう。
更新担当者を決定し、責任者(安全運転管理者や総務部)を明確にします。あわせて、更新が必要なタイミングも定義しておきましょう。具体的には「整備・点検終了時」「事故発生時」「保険更新時」などが考えられます。
月次または四半期ごとに定期チェックを行い、最新データに保つよう努めることが大切です。社内マニュアルを作成し、担当者交代時でも運用が途切れない仕組みを作っておきましょう。
また、監査・行政調査を想定し、印刷・データ出力の方法もあらかじめ明確に決めておく必要があります。
ステップ5:デジタル化・システム化を検討する
車両台数が多いまたは複数拠点がある場合には、クラウド型の車両管理システムを導入することで管理が効率的になります。
システム選定の際には、運転日報、点検記録、アルコールチェック、整備履歴を一元管理できる製品を選ぶのがおすすめです。
また、スマートフォンやタブレットで現場から直接記録ができ、手書き・Excelの二重入力をなくせるかどうかも選定時に着目してみましょう。
台帳をデジタル化することで、車検や保険の期限通知、事故や整備履歴の分析が容易になり、安全管理レベルが向上すると期待できます。
車両管理台帳の記入サンプルと注意点
ここでは、車両管理台帳の記入サンプルを具体的にご紹介します。
車両管理台帳の記入サンプル
一般社団法人 神奈川県トラック協会 神奈川県貨物自動車運送適正化事業実施機関のWebサイトで、車両管理台帳のテンプレートが公開されています。このテンプレートを使用することで、以下のような台帳を作成することが可能です。

参考:車両台帳 | 神奈川県貨物自動車運送適正化事業実施機関
記入の注意点
テンプレートへの記入時には、以下のような点に注意してください。
- 必須項目の記入漏れを防ぐ
- 日付・数値は正確に記入する
- 最新情報に更新する
- 複数担当者での重複・不整合を防ぐ
- 監査提出用フォーマット(監査で提出を求められたらそのまま速やかに提出できるよう)を整える
車両管理台帳の管理方法
続いて、車両管理台帳の管理方法について紹介します。
管理方法①:紙ベースでの管理
まず考えられるのは、紙ベースでの管理です。手書きまたは印刷した台帳をファイリングし、部署ごとに保管します。小規模な事業所では導入コストがかからず手軽に始められるでしょう。ただし、記入漏れ・検索性の低さ・紛失リスクがあるため運用には注意が必要です。
管理方法②:Excelなどの表計算ソフト
次に、台帳に記入する項目をExcelなどにまとめて、ファイルで社内共有する方法も考えられます。修正・複製がしやすく、管理コストも低減できるでしょう。しかし、複数人で同時編集すると、二重更新やデータ破損の恐れも考えられます。
管理方法③:クラウドストレージで共有
Google DriveやOneDriveなどのクラウドストレージでExcelファイルを共有し、リアルタイムで編集管理する運用方法も考えられるでしょう。変更履歴が自動保存され、担当者間での連携がスムーズになるメリットがあります。
ただし、ファイル共有権限の設定ミスや、操作ミスによるデータ誤削除などへの対策も必要です。
管理方法④:車両管理システムを活用
クラウド型の車両管理システムを導入することで、台帳だけでなく点検記録・整備履歴・保険情報なども一元管理できるようになります。
点検や保険更新が近づいた際のアラート通知や更新履歴、担当者の操作ログも記録され、法令対応や監査にも強い点が大きなメリットです。
複数車両や複数拠点を管理する企業には、導入効果が特に高い方法だといえます。
車両管理システムなら「Mobility+」
紙やExcelでの台帳管理に限界を感じたら、クラウド型システム「Mobility+」の導入が効果的です。以下のような機能で、車両管理業務の効率化に貢献します。
- アルコールチェック結果と連携:検査結果が自動で記録・保存。紙の管理が不要に。
- デジタルキー機能:スマホで車両の解錠・施錠が可能。鍵の受け渡しや紛失リスクを解消。
- 運転傾向の可視化:ドライバーごとの稼働状況・走行距離・安全運転傾向を分析。
- コンプライアンス対応:記録の検索・出力が簡単。監査・調査への対応がスムーズ。
車両管理台帳を効率的に運用し、安全と法令遵守を実現しよう
本記事では、車両管理台帳作成の重要性と、作り方の具体的な手順やポイントを解説しました。
車両管理台帳は、法令対応と安全運転管理の土台となるものです。記載漏れや情報の更新漏れは、監査時のリスクにつながります。まずはExcelやテンプレートでの運用から始め、管理負荷に応じてクラウド化も検討してみましょう。
なお、セイコーソリューションズの車両管理システム「Mobility+」は、飲んだらエンジンが始動しない「アルコールインターロック」という機能のほか、鍵の受け渡しを無くし事業所間の車両共有利用をスムーズにする「デジタルキー」機能、運転日報の自動作成機能など、お客様の声から生まれたさまざまな特長を備え車両管理業務の効率化と監査時のリスク低減に貢献します。

