冷涼な札幌の気候を活用しているというH-IXデータセンター。お話を聞きに伺った当日は雪で、あっという間に人間雪だるまができるほどでした。
そんな天気の中、マネージドロードバランサーサービスとしてお客さまに提供するロードバランサー(LB)装置にNetwiser SX-3640を採用いただいている、ほくでん情報テクノロジー株式会社データセンター事業部のみなさんと、H-IXデータセンターの利用ユーザであり、Netwiser販売パートナーでもある株式会社アジェンダの谷口氏に、Netwiser SX-3640採用の経緯とセイコーソリューションズとの関係についてお話を伺いました。

ほくでん情報テクノロジーについて

ー まずは、御社の概要をお聞かせください。

弊社の設立は平成3年。 もともと北海道電力の情報システム部門から独立する形でできた会社で、北海道電力のシステム構築、保守運用などを主な業務としております。 現在の社員数は433名、平成23年度の売上高は93億円です。 データセンター事業は、それまで培ったノウハウを活かし、平成13年に開始いたしました。

札幌の地でセキュリティーとファシリティを極める、H-IXデータセンター

— H-IXデータセンターのサービスについてお聞かせください。

H-IXデータセンターのサービスの柱は、お客さまのサーバやネットワーク機器をラックにお預かりするハウジングサービスです。 附帯サービスとして、回線やネットワーク機器などのマネージドサービス、各種運用支援サービスを提供しています。 最近は、クラウドサービスにも力を入れており、仮想マシンや仮想ストレージを提供しています。

— H-IXデータセンターの立地について教えてください。

H-IXデータセンターは、日本の中でも特に自然災害のリスクが低い札幌に位置しています。 札幌は、過去30年間に発生した震度3以上の有感地震は、東京都の約160回に比べ約10回と少なく、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率は0.5%といわれています。 また、津波や洪水のリスクも低く、台風の影響も非常に少ないので、データセンターを置く場所として最適な立地環境といえます。

— H-IXデータセンターのセキュリティー面はいかがですか?

データセンター専用の建物ですので、オフィスビルを利用したデータセンターとは異なり、不特定多数の人が出入りすることはありませんし、できません。 お客様のサーバを預かっているサーバ室までのルートには、複数の認証ゲートを設けています。 生体認証や暗証番号、ICカード、有人のチェックを組み合わせて、必ず5ヶ所のゲートを通らないとサーバ室には入ることができません。 サーバ室に入った後の行動についても、監視カメラを死角の無いように設置し、監視を行っています。

— H-IXデータセンターにはどのような特徴がありますか?

特に力を入れているのは、空調と電源ですね。 サーバやネットワーク機器を保管しているラック単位で、温度や電流値を常時リアルタイムで監視し、不測の事故を未然に防いでいます。 温度が高くなってしまう部分があれば、空調機器の稼働台数を増やしたり、風向きを調整するなどの運用を行っています。

— 外気を利用した冷房システムを採用しているとお聞きしました。

札幌は年間平均気温が約9度と低いので、外気を取り込んでサーバを冷やす仕組みが有効に活用できるのです。 外気を直接取り込むと、塩害や粉塵などが問題になりますので、屋内外の熱交換器の間で冷媒を自然循環させ、外気を間接的に取り入れています。 このシステムにより、電力の消費を抑え、環境負荷の低減を図っています。

— そのほかH-IXデータセンターならではの仕組みはありますか?

お客様のシステムをお預かりしているデータセンターは、電気を安定的に供給し、継続的に動かし続けることが非常に重要です。 H-IXデータセンターでは、電気を異なる変電所から2系統取り込んでいます。 配電線の系統が異なっても変電所が同じだと変電所の障害で供給がストップしますが、この様な不測の事態にも耐えうる構造です。 もちろん、UPS、非常用発電機を備えていますし、万が一非常用発電機を使うことになった場合、「動かない!」 なんてことでは困りますので、毎年1回は非常用発電機に切り替えて、センターを稼動させています。

独自のフェイルスルー機能を備えたNetwiser SX-3640の採用

— Netwiser SX-3640をマネージドサービスに採用された経緯についてお聞かせください。

「1台でも障害対策ができるフェイルスルー機能。お客様の選択肢も広がりますよね」富永氏
「1台でも障害対策ができるフェイルスルー機能。お客様の選択肢も広がりますよね」富永氏

Netwiserを採用する前は、ロードバランサーを必要とされるお客様には、海外メーカーの製品を使用していました。 しかし、販売の終了時期が近づいたことと、ロードバランサーのマネージドサービスを本格的にスタートさせたいということもあり、同メーカーの後継機も含め、改めて採用機種の選定を行うことにしました。 選定の際には 「我々H-IXデータセンターのスタッフが自分たちできちんと運用できること」 や 「お客様により良いサービスとして提供できること」 を前提にして、ベストな選択は何かを考え、比較検討を始めました。

— 比較検討では、どのような点を重視されましたか?

弊社のサービスとしてお客様に提供しますので、我々が設定、運用をきちんと行えなければいけません。 これにはメーカーの厚いサポートが必要です。 また、機器コストがサービス費用になってきますのでコスト面も重要でした。セイコーソリューションズのNetwiser SX-3640も、選定条件をクリアし残ったわけです。

— 他社のロードバランサーと比較して、SX-3640が優れていた点は何ですか?

SX-3640を知ったのは、東京での展示会だったと思います。 機器選定中でしたので複数の会社のブースを見て回っていましたが、セイコーソリューションズの製品に興味を持ち、評価のために機械を貸してもらいました。 セイコーのグループ会社でロードバランサーを作っているとは思いませんでしたが、特に興味を引いたのはフェイルスルー機能。 他社にはない独自のものでした。

— フェイルスルー機能に興味をもたれた理由は?

「機能的にも、コスト的にも、SX-3640に優位性を感じました」佐川氏
「機能的にも、コスト的にも、SX-3640に優位性を感じました」佐川氏

「ロードバランサー1台の構成でもサービスを止めません。」 というものでしたが正直良くわかりませんでした。(笑) 通常、ロードバランサー障害への備えは、機器2台を使用した冗長化構成という方法がありますが、機器は2台必要ですし、構成も少し複雑になり、お客様に提供するコストも上がってしまいます。 SX-3640のフェイルスルー機能は、機器自体に障害が起こった場合にバランシングはできませんが、サーバへのサービスの停止を回避できるというものでした。 フェイルスルー機能があれば、サービスの縮退にはなっても停止にはなりません。 シングル構成にも関わらず機器障害時の通信を確保できるのはとてもユニークなアイデアで、その機能を持っているのは唯一セイコーソリューションズのロードバランサーだったのです。

現在、マネージドロードバランサーサービスを検討されるお客様へのご提案の中でもフェイルスルー機能を説明しています。

— そのほか、運用面でのメリットはありますか?

先ほども少し触れましたが、ロードバランサーを冗長構成にするということは、経路に関係する機器(スイッチングHUB)など台数が増え、ケーブルの接続(構成)が煩雑になってしまいます。 フェイルスルーの構成はシンプルですので、運用面でも助かっています。 障害が発生した場合などにも効果を発揮すると思います。 ラックのスペースもとりませんので、その分、お客様のサービス費用にも反映できています。

国内メーカーならではの手厚いサポート体制

— 採用にあたり、セイコーソリューションズのサポートはいかがでしたか?

「プロダクトには、しっかりした技術提供と厚いサポートが必要ですね」島田氏
「プロダクトには、しっかりした技術提供と厚いサポートが必要ですね」島田氏

マネージドサービスへの採用から3年ほど経ちますが、採用時にサポートをしてもらった以外は、まったくサポートが必要ないくらいSX-3640は安定して稼動しています。 我々としては、メーカーと直接話しができるというのは非常に心強いですね。 セイコーソリューションズのサポートについては、我々H-IXのユーザーで、後にNetwsierの販売代理店になったアジェンダさんに聞いてみると良いと思いますよ。

— アジェンダさんは、H-IXのユーザーということですが、セイコーソリューションズのサポートについて何かご経験されたのですか?

(アジェンダ) はい、少し長くなりますが・・・(笑)。 はじめにH-IXを利用した経緯ですが、東京のデータセンターにサーバを置く弊社のお客様が、コストダウンとシステム開発を担当する弊社が札幌の会社ということもあり、札幌のデータセンターへの新システム構築の検討をされたので、弊社から札幌のデータセンター数社に相談したところ、トータルのパッケージで最適のご提案をしていただいたのがH-IXだったのです。

— 新システムの構築にセイコーソリューションズのサポートが?

(アジェンダ) いえ、システム構築という訳ではありませんが、間接的にはそうなりますかね(笑)。 このお客様は他社のロードバランサーを使用してシステム構築をしていたのですが、2ヶ月に1回程の頻度でロードバランサーの障害が発生しシステムに影響を与えるトラブルが起こっていましたので、新システムではロードバランサーも変更することにしました。 新システムを置くH-IXに何か良い製品は無いか? と相談したところ、マネージドサービスに採用されていたセイコーソリューションズのロードバランサー(SX-3640)をご紹介されました。 しかし、弊社のお客様が必要とするスペックがSX-3640では満たせなかったのです。 そこへH-IXから、セイコーソリューションズの新製品SX-3750なら求めていたスペックを満たせられると聞き、導入の検討を進めました。

— SX-3750のサポートが良かったということですか?

「北海道にNetwiserを広げます」アジェンダ谷口氏
「北海道にNetwiserを広げます」アジェンダ谷口氏

(アジェンダ) SX-3750は新製品でしたので、まったく問題なく動作する・・・ ということは想定していませんでした。 SX-3750のリリースがH-IX環境での本番間際ということもあり、システムのテストはSX-3640を借りて行いました。 SX-3750でのテストは1ヶ月程度、負荷試験がメインでしたね。 貸出の対応やSX-3750の問題対応などセイコーソリューションズは丁寧に対応してくれましたよ。

— その時のサポートが良かったのですね。

(アジェンダ) いえ、ここからが本番でして・・・。 本番移行の2010年12月31日の昼に切替を行い、「無事動いて、よかったね」 と安心していたところ、30分程するとお客様サイトの画面が出なくなったのです。 原因はロードバランサーが上手く動作していないということがわかり、すぐにセイコーソリューションズに連絡をしました。 大晦日でしたのでどうなることかと思いましたが、障害が起こったのは13時頃、しかし18時頃には東京から代替機を担いで札幌に来ていました。 アジェンダのシステムが本番稼動日ということで開発陣が会社で待機していてくれたそうです。 すぐにH-IXのデータセンターに入って調査開始、31日から正月3日までずっと見ていただきました。

— このようなサポートは通常ないのでしょうか?

(アジェンダ) 普通は無いんじゃないですかね?(笑) 実はH-IXから、セイコーソリューションズはサポートをきちんとしてくれるというお話を聞いていたんですよ。 以前の機器は海外製品で、トラブルが起きた場合の対応などはあまり良くありませんでした。 販売している企業が作っているわけではありませんから仕方ないですけどね。 作っているメーカーが国内にある、これは大きな強みです。 サポートが良いということもあり選定したのですが・・・ 奇しくも本番稼動初日にサポートの良さが証明されたわけです(笑)。

— 年末・年始に大変でしたね。

(アジェンダ) そうですね(笑)。 ただ、他にもいくつか問題が発生しまして、年末年始では終わりませんでした。 システム切替のタイミングは月末のみでしたので、セイコーソリューションズには月末月初には札幌に来て対応してもらいました。 お客様のシステムの業務上切替えができないと困る期日があったのですが、そのリミットにしっかり応えてくれました。 最初はどうなることかと思いましたが、稼動して1年半、一度も止まることなくシステムが動いています。

— H-IXさんは、その様子をご覧になっていかがでしたか。

アジェンダさんからの入館申請が随分と多かったので、問題が起きていることは知っていました。 セイコーソリューションズが何日も交代で24時間データセンターに入りっ放しでしたね。 問題も大きかったのかもしれませんが、そこまでやるというのは聞いたことがないですよね。 我々が紹介した手前、きちんとやってくれないと・・・ とも思いましたが、期待通りの対応だったと思います。

今後の期待

— 今後の期待などありましたらお願いします。

そうですね。 現在マネージドサービスに採用しているSX-3640を、後継機のSX-3740に切替える予定です。 SX-3740にもフェイルスルー機能がついていますし、性能も良いようなのでサービスの幅がでると思います。 また、IPv6/IPv4用のトランスレータの導入も検討中です。 まだまだ日本ではIPv6化は進んでおりませんが、お客様へのより良いサービスの提供を考えると必要になるのではないかと考えております。 業界全体の状況や他社動向も含め、セイコーソリューションズの情報提供にも期待しています。

これからも、H-IXは、お客さまのご期待に応える運用サービスや付加サービスを展開していきたいと考えております。 セイコーソリューションズには、今後もよい製品と優れたサポートを継続提供していただき、弊社の取り組みを支援していただければと思います。

— 最後にアジェンダさんからも一言お願いします。

弊社は札幌を拠点に、ソフトウェア開発、システム構築をメインとしてビジネスを展開していますが、H-IXは主要データセンターとして重要システムを設置して利用しています。 また、弊社のお客様のほとんどは首都圏の旅行会社様ですが、あるお客様の基幹システムは、ここH-IXに設置しているサーバからネットワークを通じて、東名阪の拠点にSaaSで提供しています。 今後は、首都圏の旅行会社様に対して、H-IXをご利用いただけるよう積極的に紹介していきたいと思います。

また、弊社は、Netwiserのアライアンスパートナーでもありますし、Netwiserの販売当初からのユーザでもあります。
セイコーソリューションズとは、引き続き、北海道のマーケットだけでなく、弊社のソフトウェアをご利用いただいている企業に対しても、積極的にNetwiserを紹介し、販売につなげたいと思っています。 また、同時に、Netwiserの利用ユーザとして、セイコーソリューションズと一緒にさらなる製品の発展に協力していければと思います。

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本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

お客様プロフィール

H-IXデータセンター(ほくでん情報テクノロジー株式会社)
URL http://www.h-ix.jp/

※ 取材日時 2012年11月