1日140万PV、1カ月のユニークユーザー100万人
ー ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)について教えてください。

ほぼ日刊イトイ新聞は1998年6月6日にスタートした、弊社代表の糸井重里が主宰するウェブサイトです。「ほぼ日」には有名人が登場するインタビュー、対談、コラムのほかに読者参加型のコンテンツ、編集部が構成・取材した記事などが掲載されています。
また、商品の企画・制作も行っており、2000年からはサイト上で物販(ほぼ日ストア)もスタートしました。商品の中では「ほぼ日手帳」が一番知られていると思います。2004年からはロフトでも取り扱いを始めていますので、手帳は使っていても、サイトを知らないというお客様もいらっしゃるようです。ほぼ日ストアでは、手帳だけでなく、本やタオル、ハラマキ、衣類、文具なども取り扱っています。
商品も「コンテンツ」という考えのもと、読みものも商品も自分たちが面白い、楽しい、ほしいと思うものを掲載しています。
サイトの1日の総ページビューは約140万PVです。RSSなどの利用で気になる情報が更新されたときだけアクセスするユーザーが増えたので、PV自体は大きな変化はありませんが、ユニークユーザーは少しずつ増えており、月間で約100万人に達します。そのうち、ほぼ日ストアのアクティブユーザーは約40万~50万人となっています。
ー 皆さんが所属する宇宙部とは、どういった部門なのですか。
以前の名称は事業支援部システム担当でしたが、2011年より正式に「宇宙部」という名称になりました。宇宙部と呼ばれるようになった経緯は、編集者やデザイナーなど文系がメインのほぼ日の職場で、システムのテクニカルターム(専門用語)で会話をしていると、周囲にはチンプンカンプン。それで、「宇宙語をしゃべってるみたい」ということで宇宙部と呼ばれるようになりました。また、PCのディスプレイは、いつもコマンドラインを入力する真っ黒なターミナル画面なので「宇宙みたい」とも言われています(笑)。
実際の業務はサーバやネットワーク全般の管理と開発ですが、Ustreamでの配信では撮影から送り出しまでを担当したり、コンテンツに関係したJavaScriptを書いたりもします。2011年1月には、種子島からのロケット打ち上げをUstreamで中継するというコンテンツ制作を行いました。
信頼性が高いロードバランサーにリプレイスしたい
— 現在、ロードバランサーをどのようにお使いですか。

ほぼ日サイトへのアクセスの負荷分散に使用しています。 サイトには読み物もありますが、ほぼ日ストアもあります。特に「ほぼ日手帳」の発売日である毎年9月1日はアクセスが集中し、ほぼ日ストアのピークになります。2012年には、発売開始後1時間で4000件以上のオーダーを無事に処理できました。数時間で売り切れてしまう商品もありますから、ここでサイトにつながらなかったり、レスポンスが遅いと、売り切れと勘違いしてしまう人もおり、商機を逃すことにつながりかねません。
— SX-3750を導入する前は、どのようなシステム構成でしたか。
2001年頃より、他社製のロードバランサーを1台導入していました。ただ、他のサイトで使用していた中古機でしたね。ネットワーク構成としても、冗長化、二重化は行っていませんでした。また、アプリケーションサーバ自体でSSLに対応していましたので、画像1つにもデータ量や処理が多く、どうしてもネットワーク全体に負荷がかかりやすい状況でした。
また、ロードバランサー自体が老朽化していましたので、2011年夏頃より、サイトにアクセスしづらくなるといった不具合やトラブルが何回か生じました。ほぼ日ストアのピークにトラブルは発生しませんでしたが、これは偶然でしかありません。
そこで、信頼性が高いロードバランサーにリプレイスしなければならないと考えていました。
SSLのプライオリティが高まり、Netwiser SX-3750を選択
— ロードバランサーの選択において、どの様な要件で選ばれましたか。

下記の要件でロードバランサーを探しました。
① 2台で冗長化して300万円以下であること
ロードバランサーのリプレイスにあたり、冗長化を計画しましたので、2台導入を前提とした予算立てを行いました。
② DSR(ダイレクトサーバリターン)機能をもっていること
100MB以上のトラフィックを出すには、ロードバランサーの仕事をリクエストパケットの割り振りだけにできるDSRが必要と考えました。
③ ロードバランサーのサイズは1Uであること
現在、データセンターはハーフラックで契約しています。ラック内の空き状況を考えると、2台で2Uに収まってくれることが必須でした。せっかくロードバランサーで予算を抑えても、フルラック契約が必要になり、電力使用量も増えてしまっては本末転倒です。
④ サポート体制がよいこと
以前のロードバランサーは外国製だったため、サポートに依頼しても、レスポンスよく対応してもらえませんでした。外国製・国内製問わずにサポート体制の充実している製品を考えました。
⑤ SSLアクセラレーション機能と2048ビットの公開鍵長対応があること
こちらは当初、対応しているといいな程度に考えていましたが、検証を進めて行くうちに、システム構成上、ロードバランサーにSSLを任せることでサーバの処理能力を有効活用できるメリットに気づき、SSLアクセラレーション機能のプライオリティが高まりました。そのため、2048ビットの公開鍵長対応も要件に加わりました。
以上の要件で10社程度のロードバランサーを比較検討し、5社に絞り、試用機をお借りして検証を行いました。
— どの様な検証を行ったのでしょうか。
PC5〜6台を仮想アプリケーションサーバに見立ててのシミュレーションテストや、設定手順の確認、あるいはわざとケーブルを抜いてフェイルオーバーするかなどを検証しました。また、マニュアルも皆できちんと読みました。 検証を進める中でSSLのプライオリティが高まり、セイコーソリューションズのSX-3750にスポットが当たりました。
SX-3750は、私たちが想定した要件すべてを満たした上、SSLアクセラレーション機能をつけても安価、という理由から導入を決定しました。
ネットワーク構成そのものを変更し二重化へ
— 導入にあたってのステップを教えてください。

2012年1月には購入を済ませ、そこからさらにテストなどを繰り返していきました。
同時に、ネットワーク構成そのものの変更も進めました。アプリケーションサーバ、キャッシュサーバ、データベースサーバ、ファイルサーバなどすべてを冗長化することにして、一部サーバの追加やリプレイスを行いました。また、ほぼ日ストアのリニューアルに併せて、ストア用のサーバを追加しました。
また、前述のように、以前はアプリケーションサーバでSSLに対応していましたので画像もアプリケーションサーバにありましたが、ロードバランサーにより、アプリケーションの部分だけをアプリケーションサーバに振り分け、画像はキャッシュサーバに取りに行くよう変更しました。こうしたネットワーク構成もロードバランサーがSSLに対応していたので可能になりました。
そして6月下旬に、ネットワーク構成の変更を実施し、SX-3750を導入しました。
この時期にした理由は、ほぼ日手帳の販売開始日である9月1日前にきちんとテストを済ませておきたいと考えたからです。新しい仕組みとプログラムを動かすわけですから、テストに2カ月以上は欲しいと思っていました。

前年の1.5倍ものオーダーをこなす
— SX-3750導入の効果について教えてください。
ほぼ日手帳2013が発売された2012年9月1日、発売開始1時間で4000件以上、2011年9月1日(ほぼ日手帳2012)の1.5倍のオーダーを受け付けました。無事にここが乗り切れたことがうれしいですね。
今までも毎年、発売開始と同時にアクセスして購入してくださる方が大勢いらっしゃいました。そのため、ページが開きにくくなったり、画面が切り変わらなかったりという現象が起っていました。もちろんサーバ自体は動いているのですが、アクセス集中でパンクに近い状態になっていたのだと思います。ところが、今年はそんなことなく、スムーズに購入できたようです。
Twitterを見ていたら、「昨年は混み合っていたのに今年はあっさり買えて、拍子抜けしました」といったツイートが多かったですね。ロードバランサーをリプレイスして、本当によかったと感じた1日でした。
— 今後の取り組み予定などありましたら、お教えください。
冗長化もできて、まずは止まるのではないか、不具合が起きるのではないかという心配から開放されましたので、今後はスマートフォンやタブレット端末用のアプリの開発や、古いサーバのリプレイスなど、足場を固めることをしっかりとやっていきたいです。

レスポンスよいサポートに期待
— 今後の期待などありましたらお願いします。
いろいろな構成ごとの設定事例がもう少しあると参考になるので助かります。
私たちは3人でシステム関係のすべてを行っています。特別にコンサルタントを入れたりはしていませんので、丁寧にかつレスポンスよくサポートしていただけたことに感謝しています。
今後もセイコーソリューションズとは、いろいろと相談をしながらやっていきたいと思いますので、これからもサポートを宜しくお願いします。
ほぼ日刊イトイ新聞様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。