jhc-kindai-img-logo01近畿大学附属高等学校・中学校は、昭和14年以来の歴史を持つ学校で、社会の変化にあわせ生徒たちの育成に最も必要な教育を求めて日々取り組まれています。
近年はICT教育の先進校としても有名で、生徒全員が iPad を所有し、活用しています。

今回、セイコーの電子辞書アプリ「セイコー辞書アプリ」をご採用いただきましたので、ICT教育推進室室長 乾武司 先生と生徒の皆さんに導入の経緯や効果などについてお話を伺いました。

  • iPadを使ったICT教育を2013年から行っているが、生徒がインターネットにある情報をそのまま使用してしまうケースがあった。
  • 教育の現場としては、今後のインターネット社会で必須となる、情報の真偽を自分で判断する力を培う方法の検討が急務だった。
  • 一つ一つの辞書が独立したアプリを使っていて、辞書毎に検索を行う必要があった。
  • 「セイコー辞書アプリ」の導入で、出典が明らかな情報にいつでもどこでもアクセス可能になった。
  • 通学途中などでもオフラインで使える手軽さと、自然なユーザーインターフェースでストレスなく使える環境を整えられた。
  • 「一括検索機能」で複数の辞書の横断的な一括検索ができるようになった。

導入の背景 近畿大学附属高等学校のICTの取組について

- 近畿大学附属高等学校のICTの取り組みについて、特徴を教えてください。

3学年合わせて3千人程度の生徒全員が一人一台iPadを所有し、自由に使えるようにしています。アプリのダウンロードも制限をかけず自由にできるようにしており、多くの生徒はSNSも利用しています。生徒には、勉強や成績向上のためだけでなく、自分の生活を豊かにする、楽しくする、効率よくする、そのためにいろいろと活用してほしいと伝えています。

2013年の高校1年生約1,000人からiPadの導入を始め、学校生活の中で活用し始めました。当初はアプリ、e-Learningの教材など、何もない状況からのスタートでした。

導入当初の一番大きな目標は、学校の中での情報のやり取りを全てデジタル化することでした。教員間はデジタルの共有掲示板やデータベースがあり、連絡はメールを活用していましたので、生徒、保護者に対してもデジタル情報での伝達、共有ができるようにしたかったのです。生徒に一人一台iPadを所有してもらうことで情報共有のプラットフォームを構築しました。このシステムでプリントデータの配信なども可能になりました。このプラットフォームがベースになり、ICTの教育現場への導入が進んできました。

大きな決断でしたが、当時の校長、大学の理事長のリーダーシップにより導入を決定しました。導入当初は戸惑う先生方も多かったと思います。

導入の経緯 『セイコー辞書アプリ』の選定理由について

- ICTで使う教材などは、どのように決めているのでしょうか?

教材を配信するプラットフォームは用意しましたが、各教科で教材を特定し、このアプリを使うというような動きはしていません。そのため、各先生の判断で教材やアプリは決めています。同じ科目でも、先生により違う教え方をしていることもあります。
本校では、ICTが教育の現場に入って6年程度ですので、何がベストの方法か、どのようにすれば効果的かなど、まだまだ模索中です。今は、各先生が創意工夫し、チャレンジし、試行錯誤しながら授業の進め方の検討を進めています。今後、その中で成功したものをロールモデルとして一般化していくという取り組みになるかと思います。
ICTを活用した授業のやり方により、生徒の成績も大きく変わってきますので、各教科の先生の間では、以前よりICT活用方法の情報共有、議論などが進んできているように感じます。このような取り組みは、生徒にも良い影響を及ぼすものと考えています。

-『セイコー辞書アプリ』の選定理由について教えてください。

近畿大学附属高等学校 ICT教育推進室室長 乾武司 先生 語句楽辞典アプリ 事例
乾 武司 先生(ICT教育推進室 室長)

もともと、英語の辞書は英和と和英のアプリを使っていました。しかし、国語辞典などは使っていませんでした。生徒たちはネットの辞書などを使って調べていましたが、信憑性が確かでないネットの情報をベースにレポートなどを作成している生徒もいました。
学校としては、生徒たちにはしっかりした正しい情報、出典や執筆責任が明らかである情報源に触れてほしいと思い、辞書アプリの導入に踏み切りました。そのようなときに、いろいろな辞書がバランスよく統合された「セイコー辞書アプリ」に出会いました。

以前の辞書アプリは一つ一つの辞書が独立しており、検索もそれぞれの辞書で行う必要がありました。
しかし、セイコー辞書アプリには「一括検索機能」があり、一つのアプリの中で多くの辞書を横断的に一括で検索できるというのは魅力的でした。また、いろいろな辞書アプリを比較検討したときに、ユーザーインターフェースが一番自然だと感じました。その使い勝手の良さも決め手になりました。

インターネットがこれだけ普及した現在、情報の利用に関しての真偽の判断は個々人の責任であると考えています。真偽判定をするためには、標準・指針となる知識・情報は信頼できる出版社から出ている辞書だと考えます。辞書の知識・情報は、インターネットとは対極にあるように見えるかもしれませんが、実は、両方で同じことを調べ、比較することで、正しい情報を理解してくれるものと思います。このような使い方が今後、重要になると思います。

導入の効果 必要になったときにそれが手元にあるということ

- 生徒の皆さんには、どのように使っていただいていますか?

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近畿大学附属高等学校 生徒の皆さん

授業中に限らず、辞書の使い方は生徒の自主性に任せています。大事なことは、必要になったときにそれが手元にあるということです。

入学してから時間が経てば経つほど、辞書を使う機会は増えます。特に、高学年になると論文を書く機会などがあるのですが、その際、辞書を引く機会は非常に多くなります。言葉の選択、正しい用語の使い方などを辞書で調べることは必須でしょう。

生徒は入学してから3年間、iPadと付き合うことになりますが、その際に、いつでも、どこでも、気になったときには出典がはっきりした知識に触れられる、調べられる、という環境を提供できるのは非常に大切なことです。

セイコー辞書アプリは、オフラインで利用可能なので通学途上でも使えますし、環境を選ばずに調べ物ができます。また、紙の辞書のように重さを感じることなく、iPadの中に莫大な知識を持ち歩けるというのは良いですね。辞書アプリは、いつか生徒を助ける武器になると思っています。

今後の期待 総合百科事典的なコンテンツを期待

- 『セイコー辞書アプリ』へのご要望があれば教えて下さい。

総合百科事典的なコンテンツが入ってくれると良いですね。インターネットに接続しなくても、いつでもどこでもある程度の調べものができる、そのような環境が作れたら良いです。インターネットと対(つい)になることで、インターネット上の真偽の明らかでないコンテンツと、辞書アプリの出典の明らかな知識・情報とを比較して、正しい知識を得るための力になると思っています。

- 利用している生徒の皆さんの声

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一括検索画面 (セイコー辞書アプリ)

Aさん:
iPadは授業で使うアプリの他、SNS、趣味のアプリなどを入れています。
「セイコー辞書アプリ」は英語、国語などで使うことが多いです。使い始めて2か月くらいですが、特に操作方法を教えてもらわなくても迷ったりすることは無いですね。メッチャ便利です。

Bさん:
よく使うのは一括検索です。一度の検索で、同じ語句を、いろいろな辞書で調べられるので楽です。調べる辞書の順番を変えたり、選んだりできるのも良いですね。
ビックリしたのは英文の音声読み上げ機能です。同一の例文でブリティッシュ英語とアメリカ英語、それぞれの発音で読み上げたりできるところに驚きました。

Cさん:
「セイコー辞書アプリ」は検索結果が一画面に大きくでるので説明文が読みやすいですね。また、検索結果の中で調べたい単語などがあるときに、すぐ検索結果が表示されるジャンプ機能も便利です。このような便利な機能をみつけたりすると、友達にSNSで知らせたりしています。

Dさん:
電子辞書より画面が大きいし、表示がはっきりしていて見やすいですね。検索のスピードが速く、使いやすいです。

Eさん:
重たい辞書を持ち歩かなくて良いのが一番です。
「セイコー辞書アプリ」は調べるときの検索の時間がとても早いです。紙の辞書は文字が細かく見にくいのですが、ひとつの単語が画面全体に出てくるので見やすいですね。
紙の辞書の良いところはマーカーを引いたり、付箋を付けたりできることだと思っていましたが、「セイコー辞書アプリ」では覚えたいところ、大事なところにマーカーを付けられるマーカー機能があり、また、過去に調べた単語などをストックしておける単語帳機能があって便利です。

ICT教育導入の成果と今後の取り組みについて

- ICT教育の導入により授業に変化は出ましたか?

生徒にとって自由にICT環境を利用できることが重要な変化です。すべての生徒に、一律の学習方法が適するとは限らないので、多くの選択肢を提供し、自由に生徒が選択できる可能性があることこそ重要と考えます。デジタルで勉強したい生徒、アナログで勉強したい生徒、それぞれがどんどん取り組めるような選択肢を学校で用意したいと考えています。
ICT導入による一番大きなメリットは、生徒のダイバーシティーを許容できるということです。進むスピードが速い生徒は、どんどん進んでいける可能性を拡げていける一方、進むスピードが遅い生徒は、再現性のある振り返り学習を自分のペースででき、キャッチアップすることができます。従来はできなかった、一人一人に適した学び方を提供できる可能性が広がっています。
生徒の学び方も変わってきていると思います。
例えば、授業中に『これは非常に大切なことだ』と感じると、授業をビデオに取っている生徒がいます。その生徒は、その動画を生徒間で共有するんです。これは今までの学校ではあり得ないことだと思います。今まで、できないと思っていたことの殻が、ICTの活用によってどんどん外れていくような感じがしています。可能性はどんどん広がっていきますね。

- 先進的なICTへの取り組みをされている貴校ですが、今後の取り組みを教えてください。

近畿大学附属高等学校ではICT環境を自由に使わせるということを大事にしています。自由に使わせ、チャレンジさせることが大切だと思います。 iPadを相棒として一緒に学校生活を営んでいく中で、iPadにも親しみを感じてくれているのではないでしょうか。
今後、グローバル社会ではオリジナリティを大事にし、クリエイティビティ、セルフプロデュースしていく能力などが求められます。そのような中では、自主的に、自由に取り組むという姿勢が非常に大事です。
してはいけないことを強調するのではなく、してほしいこと、こうなってほしいということを生徒に伝えるようにしています。
生徒一人ひとりのクリエイティビティや自主性を育てるためには、現状ではiPadというデバイスがベストだと考えています。

- 学校の枠を超えたICT教育の勉強会「SET KINDAI」

また、近畿大学附属高等学校の枠を超えた話ですが、ICT教育に取り組むにあたって、同じような悩みを持った先生達と気軽に情報交換できないかと思い、2016年から他校の先生達にもお集まりいただいて雑談をする勉強会「SET KINDAI」を開催しています。
(参考:http://www.news2u.net/releases/157613
これからICTを導入しようとしている先生、導入したが苦労されている先生、いろいろな先生が集まって、ICTへの取り組みについて気軽に相談できる、話ができるのが「SET KINDAI」です。前回も多くの先生方にお集まりいただきました。
ICT教育はまだまだ過渡期ですので、今は試行錯誤をしないといけません。技術的な知識などよりは、教育の根幹となる、どういう生徒を育てないといけないのか、どのような人材を世の中に送り出したいのか、そのためには、どのような授業がそのような人材を育てるのかというような議論・雑談が、「SET KINDAI」でできたら良いと思っています。

いろいろな先生が関わりあうことで、教育現場も、教育内容・方法も、さまざまなことが変わっていくのではないか、と期待しています。

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近畿大学附属高等学校・中学校 ICT教育推進室長の乾武司先生、生徒の皆様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

お客様プロフィール

近畿大学附属高等学校・中学校 http://www.jsh.kindai.ac.jp/
1939年設立
導入年月: 2017年4月

※ 取材日時 2016年6月