京都教育大学附属高等学校京都教育大学附属高等学校は教員養成大学の付属校として、先進的な教育研究成果にもとづきながら、確かな学力と豊かな人間性を育む教育活動を実践しています。
同校の英語科教諭の佐古 孝義先生に、セイコーの電子辞書アプリ「セイコー辞書アプリ」をご採用いただき、授業でご使用いただいておりますので、導入後の効果、活用方法や、同校での「探求学習」における辞書アプリの役割などについてお話を伺いました。

  • 授業で複数の辞書の検索結果や例文を比較し、生徒に説明したい。
  • 「探求学習」でも辞書を活用したい。
  • 一括検索機能や例文検索で様々な表現を比較することで、より興味を持って授業を聞いてくれるようになった。
  • 探求学習の中で重要な「発信」するための教科横断的な知識習得に大いに役立った。

『セイコー辞書アプリ』の印象

- 『セイコー辞書アプリ』を使ってみての印象を教えてください。

京都教育大学附属高等学校 佐古先生(英語科)
京都教育大学附属高等学校
英語科 佐古 孝義先生

もともとは、各辞書の単体のアプリを使っていたのですが、これだけの辞書がパッケージになっているのは素晴らしいですね。
特に、セイコー辞書アプリに搭載される複数の辞書を横断的に検索できる一括検索機能は素晴らしいと思います。一括検索の機能で、検索結果を表示する際に、辞書の優先順位を変えられたり、どの辞書を使用するか設定したりできる機能は使い勝手が良いと感じています。

また、今回機能強化されたSplit View対応は良いですね。他のアプリを立ち上げながら辞書を調べたい、という時には便利です。

授業での活用方法について

- 先生は授業の中で、どのように辞書を活用されていますか?

辞書アプリの画面を利用した授業の様子
辞書アプリの画面を利用した授業の様子

私は英語科の教員ですが、セイコー辞書アプリの画面をプロジェクターで映したり、私の授業用のノートに検索結果の例文部分を貼り付けたりして、場合によっては生徒に見せたり、プリントアウトして配布したりするなど、日常的に授業で使っています。
やはり、生徒に説明する際に一番使用しているのは例文ですし、私自身が検索するのも例文が多いですね。例文を一括検索で表示させて、いろいろな例文を見せながら説明していくことがよくあります。
例文検索は紙の辞書では非常に難しいことだと思いますので、辞書アプリのとても重要な機能と思います。

また、授業で、例えば長文読解問題を解いていく際、その中に難しい単語が出てきたとき、複数の辞書の検索結果や記載してある例文を比較し説明をすることも多いです。

辞書アプリが最も力を発揮するのは英作文の授業だと思っています。私の授業は、生徒の答案を撮影し、それをプロジェクターで投影しながら、その上に直接添削を施していくスタイルなのですが、その時に、一つ一つの語の用法や、動詞と名詞のコロケーションを確認したりする際に辞書は必須ですね。
各辞書の個性は、何に力を入れて説明しているかに現れるのだと思いますが、辞書ごとに記述内容が違うことに、生徒も興味を持って聞いてくれますね。同じ表現について複数の辞書に当たると、文法解析にこだわった辞書もあれば、語法中心の記述がある辞書などもあり、それぞれの辞書の良いところを重点的に説明するようにしています。このあたりは、私は辞書が好きだからですね(笑)

他にも、英英辞典で難しい単語を引くと、平易な表現で説明されているので、英作文の際、こなれた日本語を易しい英語で言い換えるためのヒントとして非常に役に立っています。ここでも複数の英英辞典を引き比べて、定義のされ方の違いにこだわって読んだりしていますね。こういう使い方も、一括検索ができるセイコー辞書アプリならではの醍醐味です。

- 生徒も辞書をいろいろな視点で利用することで、興味が湧きますね。

そうですね。例えば、授業で英作文を教えるとき、『豊かな想像力』とは英語ではどのように表現するのか? と悩むケースがあったとします。『想像力』を“imagination”と訳すと、この名詞にはどのような形容詞が付くのか、それを生徒に問いかけます。
セイコー辞書アプリの一括検索で調べるといろいろな表現が出てきますので、それをプロジェクターで映し、生徒は、生徒が英作文で使いやすいのは“rich”という形容詞ではないか、などと議論していきます。

- 先生は授業でプリントなどを使われるのですか?

辞書の記述を載せた授業用ノート
辞書の記述を載せた授業用ノート

そうですね。私自身授業ノートを作っており、そのノートに辞書の記述を載せたりもしています。
帰国子女の生徒などが、「こんな表現は使わないのでは?」というような指摘をすることもあるのですが、その場合に、辞書の記述を見せることがあります。もちろん、辞書の内容の方が正確性の高いコンテンツですので、説得力があります。

- 現在、教員実習生の方が来られているそうですが、指導でも利用されているのでしょうか?

そうですね。実習生にも辞書を活用するように指導しています。特に、生徒に提示する例文は辞書の例文を使うように教えています。
簡単な例文の場合、自分で作ってしまう方が簡単だと思ってしまうこともあるのですが、万が一、間違った例文を生徒に提示してしまうと取り返しのつかないことになる可能性もあります。そのようなリスクを避けるためには、辞書に書いてある例文を生徒に提示するのが確実です。やはり、正しい文章と自信を持って言えるのは辞書の例文ですから。

「探求学習」での辞書アプリの活用 ~教科横断的学習で発信する力を育てる~

- 今後、指導要領が変わる中で「探求学習」が大きなテーマになると思うのですが、そのような中で辞書の活用方法も変わるのでしょうか?

当校ではグローバルスタディーズという課題研究を行っているのですが、その中で、昨年、和歌を英訳し、さらに英訳された和歌を日本語にするという取り組みを行いました。
和歌を翻訳するためには、そこに表現されていることの背景や、誰に向けて、どのような意図で書かれた歌かということを理解した上で訳すことが求められます。この作業に大活躍した教材はやはり辞書です。
生徒が、自分で選んだ和歌をどのような意図があるのかを理解するときには、古語辞典はもちろん、国語の辞書も使いますし、また、英語の辞書も利用します。

普通、辞書は調べるためや知識を得るために使うものだと考えられていますが、このような課題研究の中で「発信するために辞書を使う」という辞書の可能性に気がつくことができました。
辞書は、あるテキストを読み取るためのツールではありますが、そうした受け身の使い方にとどまるものではありません。自分の読み取った内容を他者に伝えるためには、相手の文化、背景、文脈の知識、理解は不可欠になりますし、また理解してもらいやすい言葉を選ぶことも求められます。このような「発信」の観点でも、辞書は大変役立ちます。

その和歌の表現が日本の文脈でどのような意味を持っているかを理解した上で、例えば、和歌の表現の意図が丸ごと置き換えられる英語表現があるのか、ということを調べるのは大変難しい作業と思います。そういった知識を、いろいろな辞書を活用したり、教科横断的な知識を駆使したりして理解を深めていくところに、課題研究の面白さがあると思っています。

- なるほど、探求学習でも辞書は大きな役割を果たすことができるのですね。

紙の辞書と比較した辞書アプリの特に優位な点は、一括検索で横断的にいろいろな辞書を調べたり、一括検索することで、いろいろな辞書の記述を比較できることですが、辞書の色々な記述を読んだり、それを今まで習った知識と結び付けたりすることで、思考がどんどん広がるし、アイデアが広がっていくというところに大きな可能性が秘められていると思います。

今後の期待

-  『セイコー辞書アプリ』へのご要望があれば教えてください。

各辞書の旧版もラインナップしてほしいです。例えば、ある英和辞典では2版に記載されているが4版でなくなっている記載がたくさんあったりします。新版と旧版を比較し、新しく採用された例文の意味や背景などを考えるのも勉強になります。

例文検索のとき、検索した単語に色がついてくれると嬉しいですね。あとは検索結果で表示された例文候補を選択する際、キーボードで操作できると良いですね。

佐古先生、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

お客様プロフィール

京都教育大学附属高等学校 http://koukou.kyokyo-u.ac.jp/
1965年設立

※ 取材日時 2019年5月