大津赤十字病院の由来は1904年滋賀県庁近くに60床の日本赤十字社滋賀支部病院の発足に始まります。1943年に「大津赤十字病院」への改称され、現在では37の診療科、病床数684床の総合的医療機能を保有し、高度救命救急センターに指定されるほか、基幹災害拠点病院としての役割を担い、地域医療に重大な貢献を果たしています。今回は電子カルテの運用等に必須である時刻同期環境の整備についてお話を伺いました。

  • 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(以下ガイドライン)により望ましい形で医療情報の取得や保存をするため情報システム更新プロジェクトの一環として今まで以上に高精度で安定した時刻同期環境を整備したい。
  • 国産の時刻同期サーバーを利用したサービスで短期間に時刻同期環境の更新が実現
  • 毎月の監視レポートでこれまでにない安心を実感
  • 究極の時刻管理に向けたゴールもより具体的に

1.【導入背景】総合医療情報システム更新プロジェクトの一環として時刻同期環境も見直しの対象に

大津赤十字病院
事務部 医療情報課長 兼 情報システム係長 兼 診療支援係長 橋本 智広 氏

- 院内の時刻同期環境の見直しを行った背景をお聞かせください。

大津赤十字病院では電子カルテを含めた院内全域のITシステム・機器がリプレース時期を迎え、2020年に情報システム更新プロジェクトを発足し2021年に稼働させました。システムをただ入れ替えるのではなく新しいチャレンジを通してDX推進を継続的に実行したいとの思いもあり、医療情報をより望ましい形で取り扱うため正確な時刻を把握する環境も見直しの対象となりました。

2.【経緯】地域医療を担う病院としてデータの真正性確保は必須であり、導入の容易性と品質を両立する本サービスが最適でした

— セイコークローズドモバイルNTPを検討されたきっかけをお聞かせください。

これまで利用していた時刻同期サーバーが更新の時期を迎え、新しい機器の導入検討を開始しました。当院は高度救命救急センターや総合周産期母子医療センターとしての指定を受けているほか、地域最大の病院として多様かつ高度な医療を提供するため、24時間365日整合性のある時刻同期環境を院内に構築する必要があります。万一時刻がずれた場合には進行中の業務に支障がないように時間をかけて修正する必要があるうえ、過去のデータについては改ざん行為になり得るため対応が難しい状況になります。

— セイコークローズドモバイルNTPを検討された経緯をお聞かせください。

医療情報の電子保存の要件として、真正性、見読性及び保存性の確保がガイドラインに挙げられていますが、真正性確保には高精度な時刻情報によって院内の時刻系を統一しなくてはなりません。セイコークローズドモバイルNTPは高精度な時刻同期環境の導入が非常に簡単で、コストを抑えつつも運用を任せられるところに魅力を感じました。導入に関しては、あらかじめ設置環境に合わせた設定済のタイムサーバーをお送りいただけるので、納品後は使いたい場所に設置し電源やLANケーブル類をつなぐだけで利用できる点は非常にありがたかったです。

3.【決め手】国産メーカーで品質もサポートにも安心感があり 院内の時刻系を速やかに統一することができました

— セイコークローズドモバイルNTPが優れていた点をお聞かせください。

最初の機器設置が簡単なだけではなく、閉域モバイル網を介して時刻情報を受信する点でもケーブルの敷設やアンテナ設置が不要だったため設置性の点では非常に優れていると思います。インターネットを介さないのでセキュリティリスクも低く、事前にLTEアダプターの受信感度も確認できました。国産サーバーだったので品質面でも安心感があり、特に運用の日本のメーカーならではの手厚いサポートにはマネージドサービスを導入する大きなメリットがありました。タイムサーバーやLTEアダプターは定期的に監視されており、万一の障害発生時にも早期に発見・報告してもらうことができます。また時刻ずれなど何らかの異常が見られた場合にはリモートから解析し、機器の故障時には交換手配をしてもらえることも大きな安心につながっています。当院では電子カルテ以外にも外来や検診、調剤支援など、約60種類の部門系システムを運用しており、時刻系はすでに統一していましたが、今回の導入後も速やかに病院全体の時刻同期を実現することができました。

4.【導入効果】毎月のレポートで正確な時刻情報を配信できている という大きな安心感を得られるようになりました

— 導入後、どのようなメリットがあったかお聞かせください。

導入後9カ月が経過しましたが安定した稼働が続いています。毎月のレポートで問題なく動作していることが確認でき、電子カルテなどのシステムログを時系列に保管しているため過去の記録データの真正性の担保となっている点からも導入してよかったと思っています。レポートの発行については、実は今回の導入の要件ではなかったのですが、実際に毎月正常に稼働していることを確認することが大きな安心感につながっていることを改めて実感しました。院内の時刻系の統一については比較的先進的な取り組みをしてきたとの自負はありましたが、本当にすべてのシステムに正確な時刻情報が配信されているかの確認が必要であるという気づきを得ることができました。
今回の情報システム更新プロジェクトではすべてのシステムが安定的に稼働することはもちろん、柔軟性や運用の効率化を意識して進めていますが、本サービスは時刻同期環境を整備するうえでまさに当院が必要としているものであったと実感しています。

5.【今後の期待】院内のすべてのシステムでの時刻系が常に統一さ れていることを立証するためにさらなる仕組みづ くりを検討していきたい

セイコークローズドモバイルNTPによって短期間で効率的に院内に統一した時刻を配信できる環境を整備できました。院内のシステムにおいて正しい時刻が参照できるだけでなく、毎月異常なく稼働している安心感というこれまでにないメリットを得ることができるようになりました。
一方で、今回の導入をきっかけにすべてのシステムで時刻同期が常時正常に行われていたかというエビデンスをこれまで残していなかったという新たな課題も見えました。設定上は時刻配信が問題なく行われていても実際に正しい時刻に基づいたデータが生成、保存されているか確認する仕組みが必要です。情報システムの運用方針を決める立場はもちろん、上級医療情報技師/診療情報管理士としての視点を持ち、今後は究極の時間管理の実現に向けてさらなる記録の真正性向上に努めたいと考えています。

 

本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

※ 社名および記載されている内容は、取材当時のものです。現在の情報とは異なる可能性がありますのでご了承ください。
※ 記載されている社名、製品名等は各社の商標または登録商標です。

お客様プロフィール

大津赤十字病院
URL:https://www.otsu.jrc.or.jp/

※ 取材日 2022年6月