第2回:導入時の困ったな……~ タイムサーバー導入時あるある ~
本コラムでは、弊社の技術サポート担当者より、NTPによる時刻同期について様々な視点でご紹介しています。
前回はアンテナ設置などについて、色々とあるあるネタを書かせていただきました。
今回はタイムサーバーを導入する際のトラブルやお客様からよくいただくお問い合わせについてお話ししたいと思います。
導入時に同期できない?! ~「アンテナ繋げばOK」ばかりではありません~
一言で「導入」と言っても、色々なレベルでの導入作業があります。弊社で受けている導入作業は、主に現地でのラッキングと設定投入及び接続確認です。
それらはお客様と事前に設定内容や設置場所の調整まで完了しており、現地ではご依頼に合わせて作業をすれば完了するはずだったのですが……。
実際に弊社の技術サポート担当が体験した事例をご紹介します。
<事例その1:FMタイプが同期できない>
FMタイプは比較的時刻同期が取りやすいためか販売数も多く、設置時にお問い合わせをいただくことが一番多い時刻ソースですね。
お客様より「設置後にNHK-FM放送がクリアに聞ける事は確認したけど、まだ時刻同期できない。作業工程に間違いは無く、作業ミスは考えにくい」などとご相談をいただくことがあります。
このような場合は、お客様がちょっとした落とし穴にハマっていることが多いです。まさかその日の午後にNHK-FM放送で長時間の特番放送が組まれていたため、時刻同期するための正時(00分)時報が鳴っていなかったなんて……。実は2~3時間の特番が組まれ、時報が鳴らないことはよくあります。
確かにいつもの放送なら正時(00分)時報が鳴るのですが、お客様も作業当日は忙しく、実際の番組表は確認されなかったようです。
このコラムをお読みでFMタイプをご利用のお客様は、是非、以下のことを頭の片隅にでも入れておいてくださいね。
★ワンポイント★
- NHK-FM放送では番組の切り替えが正時(00分)のときに概ね時報が鳴りますが、2時間番組などの場合は毎正時に時報が鳴りません。
- 午後は比較的番組の放送時間が長く、その日の番組構成によっては2~3時間以上時報が鳴ならないことがあります。
- 導入当日のNHK-FM番組表は必ず確認しましょう!
<事例その2:GNSSタイプが同期できない>
GNSSタイプで導入時に同期できない事例は、特にアンテナを屋内に設置するケースで多く見られます。
「大きな窓の近くに置いても受信できない」、「衛星が全く見えない」などの問い合わせをいただきますが、そもそも屋内のアンテナ設置は不利な条件であることが多いのです。GNSSタイプは全天に広がる測位衛星から情報を受信します。時刻同期に必要な位置測定には最低4衛星の捕捉を必要としますが、屋内で利用するとその数は制限されます。つまり屋内のアンテナ設置では窓の外側方向の衛星しか捕捉できませんので、屋上設置と比較すると、捕捉できる衛星数は半分以下となります。
それでも屋内にアンテナを置いて利用したい場合は、「窓際近く」、「北側以外」へ設置して利用できるか確認していただきます。理由は、日本の衛星であるQZSSを含め、衛星は南側の空に多く存在するからです。下の右図はとある日時のGNSS衛星の位置を表しています。GNSSアンテナを屋内で利用している場合は、円の中央の衛星は天井で捕捉しづらく、外側の衛星は水平線近くに存在しているため建物の裏側になる可能性があります。
また、最近注意しているのが新築ビルでの屋内設置です。普通のガラスと見た目で違いが分からない、「熱線反射ガラス」、「電波遮断ガラス」などを利用していることがあります。その場合、屋内アンテナでの衛星取得はほとんど不可能です。ただ、事前に確認をお願いしてもこのような情報を得ることは難しく、現場で実際に試してみないと判らない事が多いです。
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珍しい例では当日現地を訪問したところ、タイムサーバーを設置する予定のラックの電源タップが200V対応で設置機器とはプラグ形状が異なるために接続が出来ず、結局現地作業の日程を再調整せざるをえなかったこともあります。
導入作業はお客様側も作業項目が多く、トラブルが発生すると大変です。技術サポート担当としては、トラブルが発生しても早期改善出来るよう心がけていますが、現場でのトラブルは無いに越したことはないですね。
♦稼働後、時刻ソースの同期がはずれた? ~同期頻度と障害時の動作~
導入作業前に多くのお問い合わせをいただくのが、タイムサーバーの時刻同期頻度と時刻ソースにアクセスできない場合などの動作についてです。
同期頻度は時刻ソース毎にまとめると以下の様になり、GNSSは毎秒、FMは数時間に1回程度で時刻ソースと同期しています。
時刻ソース | 時刻ソースへの同期頻度 |
GNSS | 毎秒 |
テレホンJJY
光テレホンJJY |
1・2・3・4・6・12・24時間毎を設定で選択可能(初期値は24時間毎に同期)
※発信毎に通信費用が掛かります。 |
長波 | 毎時間 |
FM | 時報が鳴るタイミングで概ね数時間に1回程度 |
時刻ソースと同期していない期間は内蔵している高精度水晶で精度を保って自走しており、大きなズレなく次回の同期を迎える事が可能です。これは時刻同期障害時も同様の動作を行うため、設定している同期維持時間までは非同期とならずに自走によるNTP配信が可能になります。
“同期維持時間はどの程度が最適か?”と言うのもよく聞かれる質問です。こちらは構成とお客様の同期ポリシーにもよりますが、タイムサーバーが1台の場合は少し長めを、冗長構成で複数台ご利用の場合は他のタイムサーバーへの参照を早期に行うため、同期維持時間は短めをお勧めしています。
お客様の利用環境は様々ですが、できるだけお客様の利用形態に合った最適な回答ができるよう努力しています。
機器の選定、仕様把握、動作確認などタイムサーバーの導入時も悩み事が多くあるようです。
では最後にそれらのお悩みを解消するための新サービスをご紹介します♪
<新しい時刻ソースのお話>
システム導入が簡単な新サービスが登場しました!
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さて、今回のコラムは如何でしたでしょうか?
今後も定期的に掲載していきますので、楽しみにお待ちください。
気軽にお読みいただき、少しでもお役に立てば幸いです。
―「次回の掲載予定」―――――――――――――――――――
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セイコーソリューションズ株式会社 タイムマネージドサービス担当
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著者プロフィール
北島 康行
セイコーソリューションズ株式会社
STN営業技術部でタイムサーバー全般を担当
■経歴
2014年 入社
2015年11月~ タイムサーバー全般を担当
数々のタイムサーバー導入事例を経験し、現在に至る