石狩データセンターの新設にあわせてSmartCSを導入
「石狩データセンターの運用に当たっては、SmartCSはなくてはならない道具となっています」と、さくらインターネット株式会社 運用部 技術チーム リーダー 村上健二氏は話します。
「私たちさくらインターネットは、1999年の大阪・本町データセンター開設以来、現在は大阪に1カ所、東京に3カ所と、主に都市部を中心にデータセンターを建設してサービスを提供してきました。ただ、都市型のデータセンターでは冷却や電力供給の問題など、さまざまな限界が見えていたこともあり、北海道石狩市に、弊社として初めての郊外型大規模データセンターを建設することになりました。」 「このときに課題となったのが、北海道という従来のロケーションとは離れた場所に設置するサーバやネットワーク機器類に関して、オペレーションやメンテナンスを行うための手段をどのように確保するか、という点でした。
これまでは、ネットワーク機器は東京・大阪に集中していたため、障害など不測の事態が発生し、通常のオペレーションでは解決できないような問題が発生した場合でも、データセンターに駆けつけたりするなどの対処を行うことにより、素早く解決することが可能でした。ところが、石狩データセンターの場合、遠隔地となるため、簡単に現地駆けつけを行うことができません。もちろん、石狩にもスタッフはおりますし、東京・大阪の技術サポートチームまでエスカレーションが必要な障害が起こった場合でも、東京・大阪からネットワーク経由でアクセスすることにより、大部分は無事に解決できるであろうという想定は立てることができました。しかし、予想できない障害が発生した際に、復旧させるための最終的な手段が現地に駆けつけるしかない、というのは、お客様の大切なサーバやデータをお預かりするサービスを提供している立場として許されません。 そのため、私たちは機器のシリアルコンソールへ、運用ネットワークを経由しないで直接アクセスする手段を確保するための検討を行いました。その結果として、コンソールサーバを導入することになりました。」
コンソールアクセスはトラブル対処には不可欠
「コンソールは、ネットワーク経由でのアクセスができなくなった場合の最後の手段として非常に有用です。」と、さくらインターネット株式会社 運用部 技術チーム 柴田浩明氏は話します。
「ネットワーク機器のトラブルで、LANからマネジメントポートへのアクセスを全く受け付けなくなってしまった場合でも、現地でPCから直接シリアルコンソールに接続すれば、問題なくコマンド投入ができる、といったことを多く経験しています。このため、機器のトラブルの際には、まずはシリアルコンソールにアクセスできることが、解決への第一歩となります。
また、あってはならないことですが、バックボーンネットワークの障害や、多重障害の発生を想定すると、そもそも障害の切り分け作業や、障害が起こっている機器までのアクセスすら安定して行えないような状況に陥ることが考えられます。
そのような状況に備えて、私たちはサービスを提供しているネットワークとは独立した、アウト-オブ-バンドでネットワーク機器にアクセスするためのネットワークを構築して、SmartCSを配置しています。SmartCSは、サービスを構成しているネットワーク機器のシリアルコンソールに接続しており、遠隔地から直接シリアルコンソールにアクセスできます。このようにして、万一サービス用のネットワークが利用できない状況であっても、ネットワーク機器へのアクセス手段を確保して、障害対処が行える準備を整えています。」
豊富な実績が導入を後押し
「私たちは、これまでコンソールサーバを利用していなかったため、広く製品を探しておりました。その中でInterop TokyoのShowNetでSmartCSが利用されているのを見かけ、調べてみたところ、通信事業者・ISP・データセンター事業者にて、多くの導入実績のある製品であることがわかりました。コンソールサーバは安定して動作することが第一に求められますが、製品の安定性についても十分な実績があることがわかりました。
また、購入前に評価機を借りて検証してみたところ、私たちが利用したいと考えていた機能について、期待通りの動作であったため、SmartCSを導入することとなりました。」
構築段階でも有効に活用、運用の品質が向上
「SmartCSは、障害への予防策としてだけではなく、ネットワークの構築から運用まで、広い範囲で利用することを想定して導入しました。たとえば、石狩データセンターのネットワーク構築作業においても活用することができました。
これまで、データセンターの新設などで、大規模ネットワークを新たに構築するには、設定の投入と接続の試験を多量に行う必要があり、技術者が現地に滞在して構築を行う必要がありました。石狩データセンターの構築では、まずコンソールサーバを設置し、新設機器へのコンソールアクセスを確保するというやり方を取りました。このような方法をとることにより、技術者が遠隔からでも対応できる体制を整えたため、現地に滞在する期間を短くすることができました。
また、普段の運用にもSmartCSは役立っています。機器の設定変更を行う場合、ミスによる障害を未然に防ぐため、投入する設定を必ず複数人で読み合わせを行い、確認しながら実施するようにしています。このとき、SmartCSのポートミラー機能を利用して、設定を投入するターミナルのやりとりを、異なるターミナルに転送して確認しています。設定者と確認者が必ずしも同じ画面をのぞき込んで確認する必要がなくなりますので、確認者ひとりで、複数人の設定者に対応することができるようになり、効率的な運用を実現することができるようになっています。」
国内開発の安心感
「実際に使ってみて、『かゆいところに手を届かせている』製品だと感じました。この点は、さすが国産製品という信頼感があります。また、ソフトウェア保守が無償であるにもかかわらず、新機能の追加にも積極的であることも評価できます。SmartCSを利用していて、いまのところ、ここをこうしてほしい、というような要望は持っていませんが、将来的に追加したい機能が出てきたときでも、SIINSさんならSmartCSで実現してくれるだろうという期待を持っています。また、技術的な質問をしたときの回答も早く、営業と開発が一体となって作っている製品だと感じており、安心して利用することができます。
今後は、石狩データセンターで新たに会得した運用ノウハウを、東京・大阪の既存のデータセンターに展開して、運用レベルのさらなる向上 を目指します。そのキーデバイスとして、これからも私たちはSmartCSを活用し、お客様へ高品質・低価格なサービスをご提供していきます。」