1.【導入背景】老朽化が進んでいた1962年建設の市庁舎を建て替えることになり、市民の意見を反映した新庁舎を整備するプロジェクトが開始されました
- 新庁舎の建設プロジェクトについて教えてください。
静岡県島田市では、防災拠点としての機能を向上させ、分散していた行政機能を集約し市民サービスの向上を図る目的により、新庁舎整備事業が実施されました。新庁舎整備事業は、まず市役所周辺整備検討委員会や周辺整備基本構想検討委員会で、庁内検討や市民ワークショップが実施されました。その結果を踏まえ、新庁舎整備基本計画策定業務公募型プロポーザルが実施され、複数の設計事務所によるプロポーザル審査会を経て基本計画策定業務を発注しました。時計や照明などを始めとする電気設備については、工事着工の前年度に具体的な仕様の検討が行われています。令和3年7月に工事が開始され、令和5年8月に完成した新庁舎は、同年10月10日に開庁しました。2.【経緯】電波時計の導入を当初想定していましたが、整備予定のWi-Fiを活用できる時計の存在を知りNTPクロックの導入検討を開始しました
— セイコーのNTPクロックを検討されたきっかけについてお聞かせください。
築60年以上が経過した旧庁舎には電気時計が設置されていました。基準時計とチャイム用の時計の2種類が存在していましたが、停電時に再設定するのが非常に困難で、子時計が壊れた際には電波時計に交換しましたが、電池交換が大変だったそうです。新庁舎では電波が届かない場所が多く存在すると予測されたため、当初計画では、まず屋上で電波を受信し、リピーターによって屋内に設置された各時計に送信する案を想定していました。しかし、他課において庁舎内全域にWi-Fiを配備する計画があったため、これを利用することを検討しました。調査の結果、Wi-Fiで時刻補正を行う時計が病院や大学等で採用されており、十分な信頼性があることが分かったため、詳細な検討を開始しました。
3.【決め手】Wi-Fiを活用することにより時計設置のトータルコストを削減したほか、設置場所を希望に応じて柔軟に変更することもできました
— NTPクロックの導入を決定した経緯をお聞かせください。
当初は屋上で受信した電波を増幅させて建物内の電波時計に送信させる計画でしたが、NTPクロックは、既存Wi-Fiを活用することで配線費用が不要となり、大幅なコストカットが実現できることが判明したため導入を決定しました。時計1台あたりの価格は電波時計よりも高価ですが、配線費用が不要となったため、リピーターを庁舎内各所に設置する当初計画から約30%のコストを削減することができました。
— 無線LANタイプのNTPクロックが優れていた点をお聞かせください。
実際に導入が決定してから感じたメリットは、設置が容易であり、付け替えや追加で設置する際の追加工事が不要であるという点でした。時計を設置したい場所は、建物が完成する最終段階にならないと具体的にイメージすることが非常に難しいうえ、時計のためだけに追加工事を行うのは現実的ではありません。その点、庁舎内全域にWi-Fiを整備することが決定していたことから、NTPクロックは、建物の内装工事がほぼ終了してから必要な台数や設置場所を決めることができました。これにより時計を室内のどの壁面にかけるか、内装色と調和しているかなどを確認しながら臨機応変に対応することができました。実際に計画より背が高い什器が設置された広報課の事務室や来客者と対応者の双方が時計を確認できるようにしたいと要望が出た市長応接室では、視認性の改善のために当初決定した設置場所を変更しています。容易に設置場所の変更ができたのはNTPクロックの大きなメリットではないかと考えています。
4.【効果】80台以上の時計を庁舎内各所に設置し、どこにいてもいつでも正確な時刻が確認できるようになりました
— どのような場所に設置されていますか。
アナログの無線LANモデルNCA-3002を88台、デジタルの有線モデルSLN-1004Wを1台、それらに時刻情報を配信するNaviClockを1台導入しました。アナログの時計は職員の執務エリアのほか、会議室や相談室に設置しています。当初、市長室、副市長室、市長応接室、教育長室にはデザイン性を考慮してNTPクロックを設置しない予定でしたが、最終的には視認性がよいことを理由に採用しました。デジタル有線モデルは議場のみに設置しています。最も時刻の正確性を求められるのは議会であり、全員が確実に時刻を確認できるようデジタル時計を設置しました。また、庁舎内での移動中や休憩中に正確な時間を把握するためには、庁内各所の時計が同期している必要があります。これまでに何度か議会が開かれていますが、庁舎内のどのエリアにおいても時計に関して問題が報告されたことはありません。
5.【今後の期待】デザインやサイズなどより選択肢が増えることを期待しています
— 今後の期待をお聞かせください。
市長室を含めいくつかの部屋ではデザインを理由にNTPクロックの採用を見送り、別の時計を設置する予定でした。シンプルな時計は視認性がよいため執務エリアには最適ですが、応接対応を行う部屋では重厚感のあるデザインが望ましく、部屋の雰囲気に応じて様々な種類の時計を選択できるとよかったです。また、設置場所によっては高い位置に取り付ける場合もあるため、相対的に小さく感じることがあり、もう一回り大きいサイズのモデルがあると便利だと思います。打ち合わせなどにおけるペーパーレス化の推進を図る目的で、庁舎内のどこでもインターネットが利用できる環境が整備されましたが、時計設備でこれを利用できたことは非常に画期的でした。これからは環境に配慮し、機能的にデザインされた新庁舎で、市民の皆様に御満足いただけるサービスを提供していきたいと考えております。

本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
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