佐賀県医療センター好生館は、450床、34の診療科を有する県内で最も大規模な中核病院の一つです。1834年に佐賀藩主が創設した医学館を起源とするこの施設は、1896年に佐賀県立病院好生館となり、2013年の拡張移転時に名称が現在のものとなりました。現在、医師が199名、看護師が581名、その他の医療スタッフが203名勤務しているこの病院では救急医療の確保や地域医療との連携に力を入れており、患者中心の信頼される医療を目指しています。

  • 回診時に館内の時計が不正確であることに気づき、正確な時刻情報が得られないことから万一の事故発生時や労務管理において問題が発生する可能性を懸念するようになった。
  • 配線工事が不要なNTPクロックの導入を医療安全管理部が提案。館内各所に正確な時刻を表示する視認性の高い時計が設置され、日々のオペレーションや労務管理を改善することができた。

1.【導入背景】館内で正確な時刻を把握できないことに大きな危機感を覚え、解決に向けて調査を開始しました

- NTPで同期する時計を導入した背景をお聞かせください。

当館では毎週水曜日に理事長と館長、医療安全管理部、感染制御部のスタッフで館内ラウンド(回診)を行います。その際、電波時計に電波が届かないことで館内各所の時計が正確な時刻を示していないことが発覚しました。もし事故が発生した際には正確な時刻情報がとても大切になるため、館内の時刻が統一されていないことに対して懸念を強めました。そのような時に同様の課題を解決した岩手医科大学病院のNTPクロック導入事例を見つけました。当館では今年から医師の働き方改革も開始することになっており、医療安全に加え労務の面からも正確な時刻情報は大切であると2022年11月に医療安全管理部から館内の時刻を統一する提案書を提出しました。

2.【経緯】追加の配線工事を行わずに電子カルテシステムと同期できる時計があることを知りました

— セイコーのNTPクロックを検討されたきっかけについてお聞かせください。

館内の調査結果から、病棟や外来、職員エリアに設置されている約150台の電波時計もしくはクオーツ時計は時刻が不正確であることが分かりました。そこで時刻を統一するためにリピーターを導入して既存の電波時計を継続利用する案や手術室内の既存の電気時計から基準時刻を受信する基地局を館内各所に配置する案も検討しましたが、多数のリピーターや基地局の設置、大規模な配線工事等が必要であることが分かりました。一方、NTPクロックは既に電子カルテ用に導入されているタイムサーバーとWi-Fiで時刻同期が行えるため、最もコストパフォーマンスが優れているとして導入を提案しました。

3.【決め手】徹底的な現場調査から業務の遂行には視認性高く正確な時計が必要であることを改めて説明し、導入を実現しました

— 無線LANタイプのNTPクロックの導入を決定した経緯をお聞かせください。

種々の方法の中でNTPクロックが最も有力な方法であることは上層部にも理解されましたが、本当に導入が必要なものであるか改めて現場のヒアリングをするよう指示があり、2023年の4月から7月にかけて前述のラウンド時に医療安全管理部メンバーが各部署の壁掛け時計の時刻の正確性を調査しました。その結果、スタッフが日頃より時計の時刻合わせを意識しているにも関わらず、壁掛け時計を見たときに2回に1回は時刻が不正確であることが分かりました。また館内では電子カルテ端末の右下に小さく表示される時刻を標準時刻としていましたが、視認性のよい壁掛け時計の時刻を参照することも多く、それが実施できない場合においては業務に支障があることが分かりました。以上を改めて説明し了承を得ることでNTPクロックを導入することが決定しました。

— 無線LANタイプのNTPクロックが優れていた点をお聞かせください。

NTPクロックは電子カルテや出退勤の打刻機と同じタイムサーバーから時刻を受信するため、PCの画面をのぞき込むことなく壁掛け時計で標準時刻を参照することができるようになりました。また2013年の病院移転時より建物内全域にWi-Fiを整備しており、それを活用することで工事を一切せずにどこにでも時計の設置ができる点が非常に大きなポイントでした。また手軽に設置できる点もありがたく、例えば実運用が始まってから生理検査室に配置していた2台のうち1台を腹部処置室に移動しています。フロアのレイアウト変更や、より効果的な活用のために設置場所を変更したり、増設したりしやすい点は当初想定していなかったメリットです。

内視鏡検査室内に設置されたNTPクロック

4.【効果】100台以上の時計を館内各所に配置し、業務が改善されたという声が現場からあがっています

— どのような場所に設置されていますか。

アナログの無線LANモデルNCA-3002を112台導入しました。場所については事前にヒアリングをして、スタッフステーションや検査室、処置室、透析室、手術室の廊下、外来受付などの診療エリアに優先順位をつけて設置しました。例えば内視鏡検査では処置の時刻や内容を電子カルテにリアルタイムで入力をすることができないため、記録用紙に記入をしておき検査後に電子カルテに転記するのですが、これまでバラバラだった各内視鏡室の時刻が秒単位まで正確になったことで記録も正確になりました。スタッフに配布されているPHSもスタッフステーションで正確な時刻に合わせることができるようになりました。
また、侵襲のある処置や検査の際は、スタッフ全員が手を止めて、患者氏名・病名・術式・手術部位などを確認するタイムアウトを実施します。室内の全員が同じ時計を見て正確な時刻を確認し記録できることは、医療の質を高めることに大きく貢献しています。

5.【今後の期待】館内での経験をもとに地域全体の医療安全の向上にも継続的に取り組んでいきます

— 今後の期待をお聞かせください。

現在はアナログモデルのみの導入ですが、いずれ分娩室には秒まで分かるデジタルモデルを設置したいと考えています。また、今回の導入が非常に好評だったことから既に追加で設置してほしいという声も上がっていますが、建設中の増設棟にもアナログモデルの追加設置を検討しています。当院は2004年から日本医療評価機構が行う病院機能評価を受審しており、次回は今年7月に予定されています。1年半前から準備を行い現場の課題解決に取り組みますが、評価項目は年々アップデートされるため、一定の評価を継続的に得るには日々改善をしていく必要があります。今回のNTPクロック導入により常に正しい時刻を確認できる環境が整備されたことは、次回の受審においても高く評価されると思います。本邦では2001年に病院に医療安全管理部を設置することが義務付けられましたが、当館では副館長が携わり、インシデントを積極的に報告するよう働きかけることで全職員において良好な医療安全文化が醸成されています。近隣病院と医療安全に関する相互評価も行っていますが、今回の館内時刻の統一のような施策に積極的に取り組むことで地域医療全体の向上に努めていきたいと考えています。

佐賀県医療センター好生館

(写真左)
佐賀県医療センター好生館
副館長(医療安全管理部 部長) 内藤光三氏
(写真右)
佐賀県医療センター好生館
医療安全管理部 専従事務 徳島香奈氏

 

                                 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

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※ 取材日 2024年3月