第15回 JGN広帯域回線を利用した長距離映像伝送実験参加レポート
長距離映像伝送実験への参加をレポート
前回のコラムでは、「第二回大規模技術検証レポート」についてのレポートをお届けしました。
第15回は、2018年に続き※1、2019年2月に行われた、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が主催するネットワークテストベッドのJGN広帯域回線を用いた、“さっぽろ雪まつり” 8K映像配信実験※2の環境を利用した長距離映像伝送実験参加レポートをお届けします。
この実証実験では、NICT様、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)様、神奈川工科大学様を始めとする”さっぽろ雪まつり”8K映像配信実験の関係各位にご支援いただき、“さっぽろ雪まつり”の雪まつり会場を「擬似ベニュー(映像送信側)」、実験サイトの1つであるIPA産業サーバーセキュリティセンター(東京)を「擬似放送局(映像受信側)」とし、この間をNICTネットワークテストベッドJGNで接続された長距離伝送環境(往復約2,000km)を利用して、以下の実験を行いました。
背景
今回の実験テーマは、札幌と東京の各サイトに、グローバルナビゲーションサテライトシステム(以降GNSS)を時刻ソースとしたセイコーソリューションズのPTP Grandmaster Clock TS-2950(以降PTP GM)を1式ずつ配備し、各々のPTP GMにPTP同期したPTP対応装置間で、正常に映像伝送できることを確認することでした。
このテーマは、2018年のLive Media IP Showcase※3でも取り上げましたが(Live Media IP Showcaseでは幕張メッセ内で実験)、映像伝送に利用される中継回線(今回の実験では100GbE回線を使用)の品質により、PTP GMから送信するPTPを高い精度でスタジアム側に伝搬することを担保できない可能性があるためです。
概要
共通
- 札幌、東京のサイトにそれぞれGNSSアンテナを設置し、GNSSをPTP GMの時刻ソースとする
- PTP対応ネットワーク装置を利用
- 札幌、東京間はJGN 100GbE回線を利用
- Video over IP映像送受信装置(PTP Slave Clock対応)としてLawo社製V__remote4(以降SC)を利用。送信装置を札幌、受信装置を東京に設置
- 送信側、受信側のSCが、PTP同期したことを確認し、映像送受信動作を確認する
札幌側
- PTP GMからPTP Boundary Clock対応ネットワーク装置(以降PTP BC)のMellanox社製SN2410にPTP(SMPTE ST 2059-2)を入力。PTP BC配下の映像送信装置(送信側SC)に、PTP BCがPTPパケットを再配信し、SCがPTP同期することを確認
東京側
- PTP GMからPTP Transparent Clock対応ネットワーク装置(以降PTP TC)のJuniper社製QFX5110にPTP(SMPTE ST 2059-2)を入力。PTP TC配下の映像受信装置(受信側SC)に、PTP TCがPTPパケットを透過し、SCがPTP同期することを確認
環境
(PTP実験構成概要 ※実験関連部分のみ抽出)
結果
- 札幌、東京間で正常にVideo over IP伝送されることを確認
- 遠距離サイトにそれぞれ配備したPTP GMを同期ソースに、サイト間のリモートプロダクションの実現が可能であることを実証
今回の実証実験では、機材借用含めて多くの方のご支援をいただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
次回は、『映像伝送EXPOへの道』をお送りします
さて、次回のコラムは7月に開催された映像伝送EXPO 2019でのPTP動態デモについて、『映像伝送EXPOへの道』としてお送りします。
また、本コラムではPTPにかかわらず映像分野におけるIPでの同期技術や、セイコーソリューションズの取り組みについてご紹介予定ですので、ご期待ください。
※1:2018年の取り組みはこちら:第5回 JGN広帯域回線を利用したPTP長距離伝送実験参加レポート
※2:映像配信網セキュリティをテーマに “さっぽろ雪まつり” 8K映像配信実験を実施:
公開実験デモのお知らせ:https://testbed.nict.go.jp/pdf/index/20190207.pdf
NICTプレスリリース:https://testbed.nict.go.jp/event/yukimatsuri2019-press.html
IPA広報誌:https://www.ipa.go.jp/files/000072133.pdf
神奈川工科大学プレスリリース:https://www.u-presscenter.jp/2019/03/post-41133.html
※3:Live Media IP Showcaseの取り組みはこちら: 第9回 『Live Media IP Showcase』レポート
著者プロフィール
長谷川 幹人
セイコーソリューションズ株式会社
製品企画部門で、マーケティング・プロジェクトマネージメントを担当
■経歴
2002年 入社
2002年~ 2011年6月までプリセールスSEを主に担当
2011年~ 製品企画部門へ異動
近年は、Ethernet OAM/TWAMPなどを利用したネットワーク状態監視製品やNTP/PTPなどの時刻同期関連製品などの製品企画に従事。現在に至る。
関連製品
関連事例紹介
放送業界事例(MMTでの時刻情報付与)
4K、8K時代のメディアトランスポート方式として国際標準化されたのが、IPをベースにした伝送技術「MMT」です。MMTでの同期において不可欠な高精度な時刻ソリューションをセイコーソリューションズのタイムサーバーが提供いたします。
放送業界事例(スタジオのIP化と局間伝送)
セイコーの「Time Server Pro. TS-2950」は 、IPネットワークによる高精度な時刻同期「PTP(SMPTE ST 2059)」によるナノ秒精度の絶対時刻の配信で、ライブプロダクションシステムのIP化や局間伝送の信号同期をサポートいたします。