現在、放送業界では、4K・8Kといった次世代放送への移行に伴い、ライブプロダクションシステムについてもIP化の波が押し寄せています。IP化で重要となるのが「時刻同期」です。
本コラムでは、映像分野におけるIPでの同期技術の最前線や、実際の機器との相互接続実験をはじめとするセイコーソリューションズの取り組みを、幅広くわかりやすく解説いたします。(最新号はこちら

第7回 映像伝送EXPOへの道

『映像伝送EXPO』でのPTP動態デモをレポート

前回のコラムでは、シスコシステムズ社のスイッチとの相互接続テストのレポートをお届けいたしました。

第7回は、2018年4月に東京ビックサイトで開催された『映像伝送EXPO(VCOM)』の、セイコーソリューションズブースでご覧いただいたPTPデモ環境と構築の様子を紹介します。

今回のPTP動態デモのポイント

【デモ環境】

IPライブプロダクションをイメージしたL3ネットワーク(マルチベンダー環境)を構築。

  • 回線システム
    セイコーソリューションズのグランドマスタークロック「Time Server Pro. TS-2950-20」(GM)、メラノックステクノロジーズ社製ネットワークスイッチ(BC)で構築
  • 制作システム
    アリスタネットワークス社製ネットワークスイッチ(BC)でVXLANマルチパス構成を構築
  • ライブシステム
    シスコシステムズ社製ネットワークスイッチ(BC)でヒットレスフェイルオーバー構成を構築

【デモのポイント】

  1. PTP(SMPTE ST 2059)にロックした環境で正常に映像出力できること
  2. TS-2950-20(GM)を2台の冗長構成とし、BMCAによりGM切替わり時も安定した映像出力が実現できること
  3. Sync GeneratorのBlack Burst信号(局クロック擬似)と、PTP同期の混在環境で映像同期がとれること
  4. 映像信号とPTP信号が同一ネットワーク上で共存できること
  5. 本構成でネットワークスイッチのマルチパス機能、ヒットレスフェイルオーバー機能が正常に動作すること

デモ構成

PTP動態デモ 構成図

本デモでは、Time Server Pro. TS-2950-20(GM)を2台の冗長構成とし、PTP&映像ネットワークをPTP BC(Boundary Clock)対応のマルチベンダースイッチで構築しました。
PTP Slave機はソニー社製とLAWO社製のIPコンバーターを用意しました。ソニー社製のIPコンバーターはヒットレスフェイルオーバーでシスコシステムズ社製ネットワークスイッチと接続し、ライブシステムとしてセイコーソリューションズブースから見える展示会場風景をライブ配信しました。
LAWO社のIPコンバーターは制作システムをイメージし、PTPに同期したBlack Burst信号(BB信号)をリファレンスとしてグラスバレー社製T2 iDDR再生機から映像を出力し、それぞれの映像信号が、BB信号とどの程度の位相差で出力されているのかをアストロデザイン社製WM-3208で測定しました。

今回使用した機器

  • ネットワーク機器(BC対応ネットワークスイッチ)
    ・アリスタネットワークス 7280S-48
    ・シスコシステムズ 92160YC-X
    ・メラノックステクノロジーズ SN2410
  • PTP-Slave
    ・LAWO V__Remote4
    ・ソニー NXLK-IP40F
  • 計測器
    ・アストロデザイン WM-3208
  • 映像機器
    ・グラスバレー T2 iDDR
    ・ソニー BRC-X1000
  • ラック
    ・ニッキャビ SRV60シリーズ
  • その他
    ・パンドウイットコーポレーション 光ファイバー、Cat6ケーブル

ご協力ありがとうございました!

ネットワーク構築レポート

今回の構築の様子をご紹介します。

・12:00:ブース到着!

今回は機器が多いので余裕をもって会場へ向かいました!

・12:15:最初はラッキングとコンソールサーバーとの接続から

GMとネットワークスイッチのシリアルコンソールをSmartCS(コンソールサーバー)に集約します。これにより初期IPが振られていないキッティング作業時などもSmartCSからコンソールポート経由で機器設定が可能になります。
また、障害時に出力されるコンソールログもSmartCS内に保存されるので、切り分け時にも威力を発揮します。

※今回の動態デモはノートラブルでした(^^)v

・13:30:ケーブリング

今回は機器点数が多いので、ここで思ったより時間がかかりました……。

ネットワーク構築の様子

・15:00:設定&動作確認

機器をご提供いただいたパートナーさんと事前にPoC(Proof of Concept(概念実証))を実施していたので、当日は動作確認を実施。
事前準備に抜かりはなかったのですが、映像が出るまでは、やはりドキドキしました。

※デモ構成のコンフィグ(抜粋版)はこちらから

・16:00:完成!!

ラック内の機器

 ・17:00:前夜祭&決起集会へ……。

デモの結果

  • マルチベンダーで構築したPTPネットワークにて、展示会3日間を安定的に運用できました。
  • BB信号で同期している機器とPTPで同期している機器が同位相で動作しました。
  • 映像信号とPTPを同じネットワークに通す構成で正常に映像が表示され、同期状態も維持できました

ブースの様子

決起集会の効果か(?)、会期中はたくさんの方にデモや、セイコーソリューションズの取り組みをご覧いただけました。たくさんの方とお話しした中でいただいたご要望は、パートナー企業との協同デモやPoCの実施、またセイコーのPTP製品への反映を通じて応えていきたいと思っています!
今後とも、弊社の時刻同期の取り組みにご期待ください。

次回はNAB Show 2018のイベントレポートをお送りします

さて、次回のコラムは……
『NAB Show 2018』IP Showcaseレポートをお送りします。
本コラムではPTPにかかわらず映像分野におけるIPでの同期技術や、セイコーソリューションズの取り組みについてご紹介予定ですので、ご期待ください。

それではまた!

著者プロフィール

宮脇 信久

宮脇 信久セイコーソリューションズ株式会社
セールスサポート部門で、ロードバランサー、PTP時刻同期製品のSEを担当

■経歴
2001年  入社
2001年~ レガシー手順のマルチプロトコルコンバーターのSEを担当
2010年~ ロードバランサーなどの汎用ネットワーク製品のSEを担当
2016年~ PTP時刻同期製品全般のSEを担当

近年は、Inter BEEなどの展示会での動態デモ環境構築、マルチベンダースイッチと弊社グランドマスタークロックの精度測定など幅広くPoC(Proof of Concept)に対応。現在に至る。

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